魚は人間になつきます。
近年の研究で「魚は飼い主の顔まで覚える」ことが判明しています。
魚たちは人間をどのように認知して、飼い主を判断しているのでしょうか?
様々な研究報告から、魚の賢さや、コミュニケーションまで解説します。
そして魚をなつかせる方法もあります。
さらにサカナに関する間違った知識についても紹介しています。
驚くような魚の社会性も知ることができます。
魚は人の顔まで覚える
テレビのバラエティー番組で、ブダイと仲良くなった男性が紹介されていました。
男性が潜ると野生のブダイがやってくるのです。
当時の私は、縄張りにやって来るだけと思っていたのですが、今となっては間違っていたと分かりました。
魚が人の顔を覚えるという研究結果が発表されたのです。
ブダイは人に懐いていたのです。
サカナが顔を覚えるという研究
魚が人間の顔を覚えるという研究結果が、2015年12月に報告されました。
研究で使われた魚はテッポウウオです。
2016年6月、この研究はネイチャー[1]にも掲載されました。[※1]
- ネイチャーは掲載条件が厳しいため、この研究は信頼できる報告だと分かります。
サカナは霊長類と比べて、視覚が劣っています。
それにも関わらず、顔のパーツで何者かを判断できています。
髪型は関係がありません。
私たち人間のように、顔認識の脳領域があるのでしょう。[1]
- 人間がクルマの顔を見分けるのも、同じ脳領域が使われています。
顔を上下逆にすると、認識できなくなります。
これは人間(哺乳類)の顔認識と似ています。
野生の魚も顔を覚える
カワスズメ科の淡水魚が、人間の顔を覚えるという研究報告が出てきました。[※2]
野生の魚であっても、人間の顔を覚えているようです。
顔のパーツで覚えていることも判明しました。
体の特長や服装などは、関係していないということです。
知らない人を警戒する
前項の研究内容から、魚は知らない人の顔を見ると、警戒することが判明しています。
イギリスのサザンプトン大学のコリンズ博士は「魚は(人間社会のように)複雑な生活を送ることができる」と言います。
人になつきやすい魚の種類は?
人になつく魚の種類はあるのでしょうか?
例えば金魚などは、エサを与える前に水面に近づいて来ます。
これは「なつく」と言うより、反射的な行動です。
私たちもボタンを掛けるときに、手の動かし方を思い出したりはしませんよね。
おそらく金魚が水面に近づくのも無意識でしょう。
前述の研究報告からも、淡水魚と海水魚で違いは見られません。
野生のサカナでも、人間の顔を判別できています。
金魚や熱帯魚だから懐くということはありません。
そして個体の大きさも関係がありません。
メダカも顔を認識します。
脳の大きさで賢さが決まるのであれば、クジラや象は人間より賢いはずです。[1]
- 体格の割に脳が大きいのが人間です
残念ながら、どの魚が人になつきやすいという研究報告はありません。
ペットショップで訪ねても、「そう信じたい」という思考に邪魔されて、根拠のある答えを見つけることは不可能です。
どの魚が「なつく」かを知る手段はないので、(気にはなりますが)気にする必要はありません。
飼い主と違う人が来ると、魚が不安になるということで十分ではないでしょうか?
言い換えれば、飼い主が来ると安心するとも言えます。
もしかしたら、魚類なら共通かもしれません。
いずれにしても、イルカやクジラのような哺乳類とは比べられないでしょう。
魚は人間のように賢いこともある
ホンソメワケベラという海水魚は、他の魚の寄生虫を食べてくれます。
他の魚たちは寄生虫を食べて欲しいので、ホンソメワケベラに近づきます。
その中には魚を食べる種族も混じっていますが、彼らがホンソメワケベラを食べることはありません。
そして当のホンソメワケベラも、実は寄生虫が好物ではないのです。
それほど好きではないけれど、みんなとの関係性を維持したいのでしょう。
また、ホンソメワケベラはパートナーのエサも分け与えます。[※3]
一人で全部食べないのです。
まるで気を遣っているように見えます。
魚は人間社会のように、複雑な生活を営んでいると分かります。
魚をなつかせる方法
オックスフォード大学の動物学者、ニューポート氏は「魚が人間の飼い主を認めている」と言います。
さらに魚を育てることは、犬をしつけるのに似ていると言います。
人間が他の動物と仲良くなるには、やはりエサをあげることが必要なのです。
犬だってエサをもらえたり、散歩をしてもらえる人を優先します。
ということは自動的にエサをあげる機械よりも、人間の手であげた方が、なつくと言えます。
ちなみに魚は複数の人間を覚えることができます。
前項のホンソメワケベラのように、サカナにも社会性があります。
エサをあげる人間とは、サカナにとっても良い関係でありたいはずです。
あとは愛情を持って、丁寧に扱ってください。
次項で紹介しますが、魚に痛みを与えると、不安や恐怖を記憶させてしまいます。
サカナに関する雑学と間違った認識
魚にはいろいろと間違った知識が広まっています。
間違ったと言うよりも、後でくつがえされたと言う方が正しいかと思います。
そこで魚に関する雑学を集めてみましたので紹介します。
「金魚は3秒しか記憶がない」は間違い
金魚の記憶が3秒しか持たないというのは、嘘だと判明しています。
3秒説は海外でも広く知られていることで、何か間違った研究報告があるのかもしれません。
近年では明確に否定されています。
「魚に痛いという感覚はない」は間違い
魚は痛みを感じます。
昔の研究では、魚には痛みがないとされていました。
刺激に反応して暴れているだけという内容です。
しかし近年の研究報告では、魚にも痛いという感覚があると判明しています。
パデュー大学(アメリカ)のジョセフ教授らは、魚が痛みを覚えた後、恐怖に近い反応を示していたと言います。[※4]
さらにカニやエビなどにも、痛みがあるというのが近年では有力です。
今後は水族館や水産業などで、問題視される可能性も出てきています。
批判の声が上がる可能性があるのです。(批判の対象は世界各国の水族館や水産業者です)
余談ですが、人間の痛みも詳細には解明されていません。
遺伝子などによって、痛みの度合いは違います。
自分と他人が同じ痛みとは限らないのです。
まとめ
前述の通り、魚は飼い主を覚えてくれています。
そしてサカナ自体、社会性のある生き物だと分かります。
それらを知ると、自然に愛情が湧いてくると思います。
だから決して河に放流しないでください。
寂しい思いをしますし、在来種の生態系が崩れてしまいます。
自然界で一番悲しいことは、種族が滅びることです。
サカナは痛みも感じるので、飼うなら愛情を持って、丁寧に扱ってあげて欲しいです。
参考文献
この記事は以下の文献を参考に独自の解釈でまとめています。