直感と直観の違いは、何でしょうか?
「直感」は無意識です。
そして「直観」には、意識が存在します。
それでは、無意識とは何でしょうか?
私たちは、「自由な意志で行動している」と思っています。
しかし、科学的な実験により、行動が無意識の領域から来ていることが分かっています。
これが直感の正体です。
初めて聞くような話であれば、この記事の内容は衝撃的かもしれません。
直感と直観の違いや、直感を鍛える方法、直感を信じる生き方について解説します。
直感と直観の違い
直観や直感は、アイデアに欠かせない要素です。
両方とも、降って湧いたようなイメージですが、それには誤解があります。
実際は「道に落ちてるようなアイデア」なんてありません。
直感や直観は、記憶(過去の経験)から生まれます。
様々な経験から記憶を集めて、直観を使うことで、アイデアが出てきます。
それでは「直観」と「直感」の違いは、何でしょうか?
直観は「ひらめき」とも言います。
脳にとっても直観(ひらめき)と直感は、違うものとして語られます。[※1][※2]
- 直観は大脳皮質の活動(思考や推理、運動の指令など)
- 直感は大脳基底核の活動(運動の制御など)
ただし文献により、違う表現も見受けられます。
つまり、絶対的な仕分けはありません。
さらに詳しく「直感」と「直観」について、説明していきます。
一般的な解釈
Wikipediaによると、「直感は、感覚的に物事を感じ取る」とあります。
いわゆる「勘」という意味合いです。
そして「直観」は、本能とは異なるとしていますが、無意識の判断という解釈です。
その判断材料は、経験による記憶です。
さらにWikipediaでは、西洋哲学や、認知科学において、ニュアンスが違うという説明がされています。
つまり、確実に定義された物ではなく、正解のない話です。
しかし「勘」という言葉になると、直感を信じて良いのか不安になります。
(この記事では「直感を信じる生き方」についても触れていきます)
また「これが直感の正体ではないか」という科学的な研究についても後述します。
直観(ひらめき)とは
「直観」とは、論理的に説明ができる発想です。
思考や推理を使います。
以下のようなテストを解くのが「直観力」です。
正解は8ですね!
正解は後ほど。(この問題の正解は「睡眠と直観」の項目で、後ほど出てきます)
上の「数字を埋める例題」は、法則が存在します。
このように、直観(ひらめき)は、論理的で結果が予測できるものです。
そして結果も、論理的に説明ができるものです。
直感とは
直感とは、論理的な説明ができない判断です。
また、意識に上がってこないものです。
「直観」とは違い、以下のテストに自然と答えられるのが「直感」です。
どちらが「ブーバ」で、どちらが「キキ」でしょうか?
このテストは、ブーバ・キキ効果と呼ばれています。
98%ほどの大多数の人は「曲線図形がブーバで、ギザギザ図形がキキだ」と答える。しかもこの結果は被験者の母語にはほとんど関係がなく、また大人と幼児でもほとんど変わらないとされる。
出典元:ブーバ/キキ効果 – Wikipedia
どうして右が「ブーバ」っぽいのか、論理的に説明できるでしょうか?
直感が、右を「ブーバ」と判断しているのです。
このように直感は、論理的な説明ができません。
例えば、人間の赤ちゃんは、ヘビや蜘蛛の写真を見ると、直感的に嫌がります。
生まれてはじめて見る生物なのに、写真を見ただけで「嫌悪」を感じます。
「どんな生物か」「どのように動くか」を知らないはずなのに、不思議と嫌がります。
こういった現象も、まさに直感です。
文章だと分かりやすい直感と直観
文章を例にすると、直感と直観の違いが分かりやすいです。
文章は、主語や述語、修飾語などの組み合わせで成立します。
国語を習い始めた頃は「直観」を使って、文章ルールに従います。
しかし私たちは、主語や述語を意識せず、文章を書くことができます。
そして「なんとなく」不自然な文章に気づくことができます。
この「何となく気づく」のが「直感」です。
文章のどこが悪いかという「推理」や「思考」では、直観を使うことになります。
直観と直感の違い
「直観と直感の違い」をまとめると、以下のようになります。
- 直観は、論理的に説明ができる。
- 直感は、論理的に説明ができない。
- 直観は、速いスピードで頭に浮かぶ。
- 直感は、意識にも上がってこない。
- 直観は、経験や記憶から意識的に処理される。
- 直感は、経験や記憶から無意識に処理される。
さらに「直感」には、人間が本能で感じ取る領域もあります。
直観は寝ることでひらめく
すでに深夜なのに、どうしても解けない問題。
でも朝起きて取り組むと、一発で解決できた!
こんな経験はないでしょうか?
私は、以下のような経験がたくさんあります。
- 動作しなかったプログラムが、翌日の朝に解決した。
- 良いデザインが浮かばなかったのに、翌日にアイデアが降ってきた!
これらに共通するのは、睡眠です。
この現象が起こるのは、睡眠によって記憶が整理されるからです。
『単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス) 』という本に、「ひらめきの実験」が掲載されています。
こういった問題が、脳トレに出てきたら要注意です。
がんばって考えても、無駄な時間を消費します。
この実験では、以下のグループに分かれて問題を解きます。
- 昼間に8時間考えた後に解答するグループ
- 徹夜で8時間考えた後に解答するグループ
- 寝る前に問題を見せて、8時間寝てから解答するグループ
3つ目のグループに関しては、寝てるだけで、ほとんど考えていません。
しかし、一番成績が良かったのが、3つ目の寝ただけのグループです。
- 昼間に8時間グループ 正解率20%
- 徹夜で8時間グループ 正解率20%
- 8時間寝ただけのグループ 正解率60%
「寝て起きたら直観がひらめく」というのは、科学的にも裏付けされてます。
多くのサイトでは、直観を鍛える方法として「時間を掛けて考えることが重要」と記載されています。
実際は、時間を掛けて考えても、意味がないかもしれません。
寝る前に情報を仕入れて(勉強して)、しっかり睡眠をとることが重要です。
この実験の研究論文は以下です。[※]
睡眠が何かしら「記憶の整理」に使われているのは、数々の研究からも間違いありません。
不要な記憶を刈り取るのも、睡眠時です。
睡眠による脳の活動については、以下の記事もご参考ください。
直感が正しい理由
将棋の羽生名人は「直感の7割は正しい」と言います。
羽生名人にとっての直感は「瞬間のひらめきでも、後から説明できるもの」という見解です。
直感と直観は、「記憶と経験を利用している」という共通点があります。
(一部の直感は、本能からも来ています)
そして「直感」は、ほぼゼロ秒で判断されます。
科学における直感の正体
科学的な実験にて、直感の正体が分かりつつあります。
それは、将棋のプロが使う脳にあります。
アマチュア棋士とプロ棋士では、使う脳の場所が違います。
それは、生まれつきの才能ではありません。
アマチュア棋士も、練習や訓練を重ねることによって、プロ棋士が使う脳を手に入れることができるからです。
つまり直感力は、訓練によって誰でも鍛えられるのです。
理化学研究所の実験にて、判明しています。
プロ棋士だけが使う脳の神経回路があります。[1][2]
- 大脳基底核にある尾状核
- 理化学研究所だと「直観」と表現しています
将棋の初心者でも、訓練によって、この神経回路が使えるようになります。
訓練方法は、ゲームによるものです。
将棋を単純化した「5五将棋」のゲームプログラムを4ヶ月間行います。
難易度は50%、つまり五分五分の試合ができる難易度です。
「自分と同等の難易度」でゲームを継続すれば、普段は将棋で使われない「大脳基底核」を使い始めます。
大脳基底核は、「手足を自由に動かす」といった「運動に関わる機能」を持ちます。
将棋のプロは、反射的に「直感」を使って、先の手を読んでいたのです。
直感とは、手足が動くように「反射的」です。
そこには、思考がありません。
将棋の名人は、手足を動かすように、最良の手を打つことができます。
そして直感は、訓練次第で身につけられます。
直感とスピリチュアル
現代の科学において、ランダムで見えない物を当てる「超能力」は、見つかっていません。
前項のように、直感は「運動の脳部位」を使うため、反射的です。
そこに思考がないため、スピリチュアルのように思えてしまうだけです。
しかし、スピリチュアルの考え方は、科学的に間違っているとは限りません。
スピリチュアルにおいても「良い経験が優れた直感を生む」と、言われるからです。
さて、神経衰弱などのゲームで「直感でこれだ!」と選ぶ人がいます。
これは直感ではなく、「でたらめ」という言葉の方が合っています。
直感は記憶から来ている
直感の「判断材料」となるのは、やはり「記憶」です。
そして記憶を生むのは、経験です。
したがって、直感で正しい行動をするには、「良い経験」が必要です。
女性の直感は鋭い
女性は、言葉以外のコミュニケーションが得意です。
視線や表情などから、感情を読み取る能力です。
これを「非言語的コミュニケーション」と言います。
あくまで傾向があるだけです。
脳の違いではなく、環境要因でしょう。
「女性の勘が鋭い」と言われるのは「非言語的コミュニケーション」が得意というのに関係しています。
新しい研究報告があります。
それは「声」によって、不正行為を見抜くという研究です。
他に情報がなく、声だけであれば「非言語的コミュニケーション」です。
この研究では、(理由は分かっていませんが)女性の方が不正行為を見抜くことができました。
やはり、女性の勘は鋭いのかもしれません。
研究内容(英語):Your Cheatin’ Voice Will Tell on You: Detection of Past Infidelity from Voice
直感が鋭い人の特徴
直感で行動できる人は、正しい道を選べます。
しかし「経験」がないと、直感は発動しません。
直感で行動できなければ、思考(直観)を使って行動できます。
思考から行動すれば、間違いも起きますが、それが経験となります。
これらは「直感が正しい」と言われる理由です。
直感が発動できる人ほど、経験豊富な人です。
普段からトレーニングも積んでいます。
そういった意味でも、プロ棋士やアスリートは、直感力に優れています。
直感を鍛える方法
直感を鍛えるには、どうすれば良いでしょうか?
とにかく「経験、経験、経験」です。
そして経験が足りないものは、直観力でカバーします。
トレーニングによって直感を鍛えると、脳に変化があらわれます。
ジャンル別に直感を鍛える方法について解説します。
直感力を高める具体的な方法
直感力を高める方法を説明します。
ジャンルごとに、具体的な例を挙げていきます。
共通するのは、繰り返し学習して、記憶することです。
スポーツでの直感力
スポーツであれば、実戦や練習で直感力を鍛えられます。
そのためには、身体を自由に動かすための基礎トレーニングが必要です。
繰り返さないと、記憶は定着しません。
脳の特性から言えば、効率的な方法はあっても、ラクができる近道はないでしょう。
- 基礎トレーニングは、身体を応答させるため
- 実戦や練習は、直感力・判断力を得るため
このように考えると、分かりやすくなるでしょう。
マインドスポーツ(囲碁・将棋など)の場合
理化学研究所の実験のように、トレーニング(実戦・練習戦)によって、直感力を鍛えることができます。
理論で言えば、ゲームでも鍛えられます。
大脳基底核は、運動にも使う脳部位なので、まさに本当の意味でスポーツだと言えます。
ビジネスでの直感とは
記憶は「経験」と「知識の入力(本などから情報を入れる)」によって作られます。
直感力は、年齢と共に鍛えられます。
30代になって管理職者となると、それなりの経験が蓄えられています。
仕事における判断が、上手くできるようになります。
また「これはやった方が良い」とか、「この会社はちょっと怪しい」などといった「直感力」が身につきます。
その直感は、信用できるものです。
もちろん管理職者になったばかりでは、プレイヤーとしての感覚しかないので、最初は「管理職者として」苦労します。
理論がなくても、直感に頼って成功するケースはよくあります。
理論がないのですから、実行する人も少ないのでしょう。
経験がない場合は論理的な直観力を使う
前述の通り「直観(ひらめき)」は、論理的で実行する前から予測ができるものです。
「本などから知識を得る」「成功事例からルールを導き出す」ことで、直観力を鍛えることができます。
例えば以下のような「ひらめき方」があります。
- ショッピングモールでは坪売上が重視されると本で読んだ。
- 私たちの会社は企業を相手にしているから、坪売上の概念はない。
- 使われていない会議室は無駄なスペースとなっている。坪売上がない状態ではないか?
- 動画や生放送によるマーケティングが成果を上げている。
- そうだ、会議室を動画スタジオにリフォームして他の企業にレンタルしよう。
このような発想が「直観」によるものです。
様々なジャンルから情報を仕入れないと、良いひらめきは生まれません。
必ず記憶から出てくるものです。
直観力を鍛えるには本を読む
理論を作るには、知識が必要です。
知識の材料がなければ、推理ができないからです。
やはり、本を読むことは非常に有効です。
自ら経験をすると、直感を得ることができます。
これは、自分だけのものです。
そして本を書くで、他人に経験を渡すことができます。
その本を読むことで、他人の経験を「知識」に換えられます。
他人から「直感」を受け取り、「直観」で正しい行動ができるようになるのが、発展する社会の仕組みです。
経営者に多い直感型
株式会社サイバーエージェント[1]の藤田社長は、自身の著書で、「理論派の人間で、上手く会社を回している経営者はいない」と言われています。
意外にも、直感型の経営者が成功しているそうです。[2]
- アメーバブログ、Abema TVなどで有名なIT企業
- 運を支配する (幻冬舎新書) より
もちろん直感的な発想だけで、経営はできないでしょう。
重要な判断に、直感が必要なのです。
メモを取ることの本当の意味
「直観力(直感力)を鍛えるには、物事をすべてメモしなさい」という話を聞いたことがありませんか?
これは正しいと言えます。
メモをすることで、記憶に入りやすいからです。
さらにメモを見返すことで、記憶から取り出せるようになります。[1]
- 記憶の定着と言います。
直観には、記憶という材料が必要です。
直感と自由意志
現代の脳科学(神経学)では、「自由な意志が人間にはない」と言えます。[1]
- 哲学の自由意志論、決定論とは別です
私たちは、意志を持って行動していると思い込んでいます。
科学は、それを錯覚だと言います。
実際は、意識する前に、行動が決まっています。
私たちが意志だと思っているのは、知覚だったのです。
経験、記憶、信念、感情などが、無意識の中でセットになり、行動に反映されています。
そこに、自由な意志はありません。
だからこそ、たくさんの良い経験をすることが、人生にとって大切です。
自由意志がないことについては、以下の記事で詳しく解説しています。
今でも自由意志の研究報告は、新たに発表されることがあります。
それらを読んでも、「やはり自由意志はない」と言えます。
右脳と直感力は関係がない
ネットには、右脳を鍛えることで、直感力が鍛えられるという情報が多く見受けられます。
直感や直観は、脳の大脳皮質や大脳基底核によるもので、いずれも右脳に関係はありません。
右脳派=直感力というのも、科学的な根拠がない俗説です。
直感を信じる生き方とは?
直感や直観について、いずれも記憶や経験が重要だと述べてきました。
そして直感については、「ブーバ・キキ効果」のような、本能的な領域もあります。
私たちは、人生における重要な決断から、レストランのメニュー選びまで、「直感」により決めています。
これらは、無意識の領域で判断されます。
直感は人だけでなく、他の動物にも見られることです。
直感を「信じる」「信じない」もありません。
信じる猶予もなく、無意識に人が判断しているのが直感です。
もしも「脳に蓄積された経験」を見る装置があれば、誰が何を決断して、何を選ぶのかまで事前に分かります。
すでにマウスの実験では、マウスが行動するのを事前に予測できます。
ということは、人生において「良い経験」こそが大事だと分かります。
良い経験をすればするほど、未来に良い結果を得られる判断力が生まれます。
多少の悪い経験もするでしょうが、それすら良い経験に繋ぐことができる材料として、脳に残ります。
この考え方で新しいことに挑めば、人生は良い方向に変わるのではないでしょうか。
これが「直感を信じる生き方」です。
良い経験を多くすれば、あとは直感に身をゆだねるだけです。
参考文献
この記事は以下の文献を参考にして、独自の解釈で「直感」についてまとめています。文献の内容とは異なります。
- 素人でも訓練によりプロ棋士と同じ直観的思考回路を持てる | 理化学研究所
- 直観をつかさどる脳の神秘(RIKEN NEWS No.358)
- つながる脳科学 「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線 (理化学研究所脳科学総合研究センター)
- 単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス) 池谷 裕二 (著)
- 脳には妙なクセがある (扶桑社新書) 池谷 裕二 (著)
- 脳はなにげに不公平 パテカトルの万脳薬 池谷 裕二 (著)