左利きと天才の関係 | 左利きの真実と最新研究

左利きについて分かっていることは何ですか?

左利きの人は、天才でしょうか?

最新の研究から、利き手と才能、左利きの脳について解説します。
よく有名人は、左利きが多いと言われます。
さらに左利きは、女性の方が多いとも言われています。

それは本当でしょうか?

「芸術的な才能の真実」や「左利きになる方法」など、みんなが気になる「左利きに関する情報」を解説していきます。

最新の研究報告

左利きの人は数学に強い

左利きが天才かどうかについては、多くの研究が行われてきました。
しかし有力な研究データがなく、議論の最中です。

研究報告があるごとに、「左利きは天才だっと」とか「左利きは低収入(もしくは高収入)」という記事が出てきます。
これらの研究データは、精度が低く、結論を出すには早すぎます。

しかし最近になって、以前よりも精度が高いと思われる研究報告が出てきました。
まずは、どういった内容かを解説します。

左利きは数学で有利になる

左利きの人は、数学に有利という研究報告があります。[参考文献※1]
これは左利きに関する最新の研究報告です。

研究内容を詳しく見る

研究の結果

研究の結果は、意外です。
左利きの人は、数学の成績が優秀だと判明しました。
(この傾向は、男子高校生に多く見られました)

ただし「難度の高い数学」のみです。
単純な計算では、利き手の違いがありませんでした。

そして「強い右利き」は、難度の高い数学で「成績が悪くなる」と判明しました。
これはあくまで、そういった傾向にあっただけです。

注意点

この結果を見て「左利きは数学の能力が高く、頭が良い」と、解釈してはいけません。

以前の研究では「左利きは数学の能力が低い」という報告もありました。
今回の研究は、それが覆されただけです。

「左利きだから○○だ」というほど、脳は単純ではありません。
強い右利きだからといって、将来を気にする必要もないでしょう。

もちろん適度に左手を使えば「強い右利き」ではなくなります。
(ピアノなど両手を使う趣味を含みます)

左利きと性格

性格の違いは見つからない

人の性格は、利き手で変わるのでしょうか?

  • 左利きは、直感的にものごとを考える
  • 左利きは、感情的(衝動的)
  • 左利きは、変わった人が多い

そういった話を聞くことが多いです。
しかし「利き手で性格が変わる」という科学的な根拠はありません。

これらの話は、右脳派・左脳派という間違いから来ています。
左半身が右脳とリンクしているため、「左利きは右脳派になる」という強引なこじつけです。
(次項で後述します)

右脳派・左脳派という性格診断は、何度も科学的に否定されています。
左利きだから「自分は衝動的かもしれない」と、悩む必要はありません。

左利きと脳

脳が違うという証拠は見つからない

そもそも左利きと右利きで、脳の違いはどうなっているのでしょうか?

左利きが天才というならば、脳の違いから知る必要があります。

利き手は言語に関係がある?

右利きのうち、90%以上の人は、言語野[1]が左脳にあります。
そして左利きの50%〜70%の人は、言語野が右脳にあります。[2]

  1. 言語活動を司る脳の部位
  2. 文献により、比率は異なります

逆に考えると、どうでしょうか?

左利きの30%〜50%の人は、右利きと同じ脳の構造だと言えます。
そして右利きの5%〜10%の人も、左利きと同じような脳の構造です。

やはり「左利きだから○○だ」というほど、単純な話ではありません。
前項の「左利きは数学で優位」という研究報告は、悩むことではないでしょう。

優位半球は名前だけ

言語野がある側の脳は「優位半球」と言います。

これも優劣があるわけではありません。
これを拡大解釈して広まったのが右脳派・左脳派です。

言語の処理は、両側の脳で行われています。
まだ解明はされていませんが、優位半球の逆側では、言葉のリズムやユーモアなどを処理しています。

利き手を変えても優位半球は変わらない

右利きの人が、左利きに訓練しても優位半球が変わることはありません。
もちろん左利きの人が、右利きに矯正しても同じです。

左利きと空間認知能力

左利きの人は、半側空間無視が起きにくいと判明しています。[参考文献※2]
半側空間無視が起きると、左側の空間が認識できなくなります。
これは左利きと、空間認知能力に関係がありそうですが、まだ判明していません。

良く言われるのが「左利きは、空間認知能力が高い」という話です。
空間認知能力については、以下の傾向があります。

  • 空間認知能力の優れた人は、男性に多い
  • オーケストラ楽団員は、空間認知能力が高い
  • アクションゲームをする人は、空間認知能力が高い
  • 数学の課題にも空間認知能力を使う

数学の課題にも、空間認知能力が使われます。
前項の「左利きは数学で優位」と、関連性があるように思えます。

一方で空間認知能力は、環境によるというのが、近年の見解です。
男性だから空間認知能力が高いのではなく、男性が育つ環境によるものです。

また、空間認知能力は、短期的なトレーニングで身につくと判明しています。

脳梁が大きい

左利きの人は、脳梁が大きい傾向にあります。
サイエンスにも掲載されています。(英語)

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脳梁は、左右の脳の情報を受け渡しする部位です。

なぜ左利きだと、脳梁が大きいのでしょうか?

世の中の道具は、右利き用に設計されています。
左利きでも、右手を使うことになります。

「左手の神経と右脳」と「右手の神経と左脳」は繋がっています。

交叉支配のイメージイラスト

交叉支配と呼びます

手だけではなく、左右の脳も連携するので、脳梁が大きくなります。
脳梁が大きいと、空間認知能力は高くなります。

前項の「左利きは空間認知能力が高い」を裏付けているように思えます。

しかし、脳は複雑です。
様々な要因で、能力才能は異なります。
現時点では「利き手だけで判断するべきではない」と言えます。

空間認知能力と才能

空間認知能力が高いと、ミュージシャン、建築家、画家などの職業で優位となります。
これらの職業が、左利きに多いという研究データもあります。

しかし、それを否定する(利き手に差がない)研究データも存在します。
どちらも小規模な研究データです。

結局は結論が出ません。
利き手を気にするよりも、目指している職業のトレーニングをした方が確実です。

左利きと脳梁

もし左利きと才能に関係性があるのなら、脳梁の大きさは説得力を持っています。
しかし、証拠となる研究報告はありません。
あくまで考えられるだけです。

利き手と言語野については、あまり才能と関係があるようには思えません。
言語野がどちらの脳にあっても、才能と結びつける理由は見つかりません。

左利きと芸術的な才能

小規模で古い研究では左利きと芸術性に相関がある

少し古い(1995年の)研究論文ですが、左利きの男性は「斬新なアイデアを思いつきやすい」という報告があります。[参考文献※5]
「斬新なアイデア」とは、通常では結びつかない思考能力です。

私たちは、アイデアを出そうとすると、目的から近い「モノ」を、記憶から検索します。
ここで目的から遠い「モノ」を思いつけば、斬新なアイデアになります。
つまり、誰もが思いつくことのできないアイデアです。

左利きの男性が、創造性に優れているとも言える研究論文です。
こういった研究から「左利きは天才」という説が出たのでしょう。

これらのことから、左利きの人は、芸術的な思考に優れている可能性があります。
ただし現状では、断言できるほどの材料は、揃っていません。

才能については、以下の記事にて詳しく説明しています。

才能がない人はどうすれば?【才能を育てる方法&あなたの才能診断】

才能がない人はどうすれば?【才能を育てる方法&あなたの才能診断】

左利きのメリット

左利きの確実なメリットはスポーツの分野

左利きにはメリットがあります。
前述のように「左利きは数学で優位」という研究報告もありますが、判断するには早すぎます。

ひとつ確実なメリットがあります。

左利きだと、スポーツで有利になるということです。
ただし「相手と対戦する競技」に限ります。

野球、ボクシング、卓球などでは、明らかに左利きのトッププレイヤーが多くなります。[参考文献※3]

世界人口の90%は右利き、10%は左利きです。
上記のトッププレイヤーは、10%の比率を大きく上回っています。[1]

  1. 野球のトップ打者は5割が左利きです!

これは「左利き選手」と、対戦する機会が少ないからです。
対戦相手が少なければ、その分だけ、左利き選手を攻略するのが困難になります。

左利きの選手が少ない競技もあります。

それはゴルフです。
ゴルフは、直接相手と対戦する競技ではありません。

プロゴルフでの左利き選手は、10%を大きく下回る4%になります。
左利き用のゴルフクラブが少ないのも要因です。
道具の共有化が難しいスポーツは、左利きの選手が少なくなります。

左利きのゴルファー

これらのスポーツ人口のデータは、人間社会の人口データとリンクするという理論があります。
スポーツ人口のデータは、人間社会の「協調と競争の割合」を示しています。

もし「力がすべて」という世界であれば、右利きと左利きの人の割合は、50%ずつだったのかもしれません。
この理論は、人間社会が「9割の協調」と「1割の競争」であることを意味します。

左利きが有利な職業

前述のように、スポーツにおいては、左利きの優位性が確実にあります。
したがって、(職業となると疑問ですが)相手と対戦するスポーツでは、左利きの人が有利となります。

左利きが有利なスポーツ

野球や卓球においては、特に左利きが有利です。
実は「左利きが有利なスポーツ」には、法則があります。

それは、対応する時間です。[参考文献※4]
野球や卓球などのスポーツは、テニスやバトミントンに比べて、ボールに対応する時間が短くなります。

この対応時間が短いスポーツほど、左利きが有利になります。

左利きは矯正しない方が良い

日本や中国の場合、古くから左利きは、矯正を求められてきました。

これは、漢字の「書き順」が、「左利きだと不都合だから」という説があります。
英語などのラテン語は、左手で書いても、それほど不都合はありません。
余談ですが、アラビア語は、左手の方が書きやすいです。

多くの国では、左利き、もしくは左という言葉に、否定的な意味があります。
その背景は、宗教であったり、少数派という不利な立場から来ています。

それは古い考えで、見過ごせないことです。
そのためか、(東アジアの一部を除く)海外では、矯正という話は聞きません。

そして今の日本でも、矯正しないのが一般的です。

矯正のデメリット

利き手の矯正には、トレーニングが必要です。
矯正をしない子どもと比べると、トレーニングをする分だけ、ハンデができてしまいます。

利き手を変えるのは、大人でも大変なことで、ストレスも掛かります。
前項のように、スポーツではメリットにもなるため、矯正の必要性もありません。

右手用の道具を借りるときに、不都合が出るかもしれませんが、それは矯正に比べると些細なことです。

左利きと発達障害(ADHD)

利き手による「脳への悪い影響」は、あるのでしょうか?
実際は、気にする必要がありません。

2008年のスウェーデンの研究では、左利きとADHDの関連性が見つかりました。
2010年、フィンランドの研究では、「(左利きではなく)両利きにADHD、ASDなどのリスクがある」という報告がありました。[参考文献※6]
さらに「言語や学問に影響が出るかもしれない」と、研究者は言います。

この研究対象は、先天的な両利きです。
左利きの矯正による影響ではありません。

2008年に左利きとADHDの関連性が見つかり、2010年に「左利きではなく、先天的な両利き」と、訂正するような流れになっています。

この研究は、子どもが利き手を矯正するのと、何ら関係がありません。
しかし、誤解されやすい話題です。
「左利きは発達障害(ADHD)のリスクがある」と、拡大解釈された可能性があります。

子どもの頃、すでに利き手を矯正した人は、気にする必要はありません。

左利きと有名人

テレビクルー

オバマ大統領は、左利きです。
アメリカの大統領は、オバマ大統領まで3人連続で左利きでした。

柔軟な思考と直観力が、左利きに関連していると思うかもしれません。
しかし、科学的には根拠がなく、関係しそうな理論もありません。

アメリカ大統領に関しては、過去6人のうち4人が左利きです。(もしくは両利き)
これは統計で有意に見えます。
しかし欧州連合の大統領(首相)になると、左利きが多いわけではありません。

このように偏りがある部分のみが、注目されてしまいます。
この話題に限らず、信じてもらうために、特定の部分を抽出することはよくあります。
本人に誘導する意図がなくてもです。

本当に左利きの有名人か?

画家の「ピカソは左利き」というネットの情報があります。
実際ピカソは右利きです。

相対性理論のアインシュタイン、画家のムンクも右利きです。
彼らは右利きにも関わらず、左利きと言われることが多い偉人です。
(海外から情報が来て、国内で根付いてしまったようです)

さらに証拠が不十分なのに、左利きと決められている有名人がいます。

  • ゴッホ
  • バッハ
  • ベートーヴェン
  • ルイ16世

彼らは実際に左利きだったかもしれませんが、確たる証拠は見つかっていません。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、怪我だった可能性もあります。
そして左利きで有名なモーツァルトも、証拠となる文献はありません。

どちらにしても、左利きだから有名人になれることはありません。
利き手を気にするよりも、目標に対して、行動した方が良いでしょう。

左利きになる方法

左利きで絵を描く子ども

今から左利きになるには、ひたすらトレーニングしかありません。
あまり左手を使ってこなかった人は、子どもが箸の使い方を覚えるように、大変かもしれません。

私はトレーニングで、両利きに矯正した経験者です。
左利きになる方法は、以下の記事が参考になるかもしれません。

両利きになる方法! メリット・デメリットも紹介

両利きになる方法! メリット・デメリットも紹介

苦労する割には、見合った価値はないかもしれません。

左手を使うのであれば、ピアノを習うという方法もあります。
その前にタッチタイピングでも、良いかもしれません。

左利きと男女の割合

世界において、左利きが女性に多いと誤解されています。
実際は、女性の方が少ないです。

これは宗教と、文化によるものです。
「右半身や右手」を、男性のイメージに結びつけているからです。

実際の統計では、左利きは「女性より男性の方が多い」のです。
しかし、その差は大きくなく、2割程度の違いです。

利き手とコミュニケーション能力

会話する外国人女性

左利きの人は、脳梁が大きい傾向にあります。
そして脳梁の大きさは、コミュニケーション能力と関係する可能性があります。

ただし、有力な研究報告は見当たりません。
特に「左利きとコミュニケーション能力」の相関については、研究自体が見つかりませんでした。

確かに脳梁欠損症の研究を見ると、脳梁の大きさが、コミュニケーション能力と関係しているように思えます。
そのため、左利きの人は「コミュニケーション能力に優れる」と、考えることもできます。
あくまで仮説レベルの話です。

いずれにしても、現時点で利き手とコミュニケーション能力を結びつけるものは、根拠が薄いと言えます。

まとめ

つい最近になって「左利きが数学に優位」という研究報告がありました。
信頼できる研究報告だったので、ちょっと驚きました。
それまで利き手と才能の話は、関連性が薄かったからです。

とくに「左利きは天才になる可能性が高い」というのは、疑似科学に近いものでした。

そうは言っても、ひとつの研究報告に過ぎません。
天才というには、無理があります。

脳の構造は、左利きと右利きで変わらなかったりもします。
言語野がどちらにあっても、それが才能に大きく関わるとは思えません。

ただし脳梁の大きさは、コミュニケーションにおいて、有利になる可能性も考えられます。
例えば脳梁が大きいと、ユーモアが理解しやすいかもしれません。
どちらにしても証拠はなく、あくまで考えられるだけです。

現時点では、右利きの人に「左手も使った方が良い」とまでは言えません。

ある科学者は、ピアノが脳に良いと主張しています。
ピアノなどの楽器は、両手を使います。

あくまで相関関係ですが、東大生にピアノ経験者が多いという話もあります。

東大生にピアノ経験者が圧倒的に多い理由
東大生の多くがピアノを習っていると、よくいわれる。実際にそれを示す調査結果も多い。今回、拙著『習い事狂騒曲 正解のない時代の「習活(しゅうかつ)」の心得』を著すにあたり、「東大家庭教師友の会」の協力…

もちろん可能性があると言うだけで、別の理由も多く関係します。

音楽と脳については、海外でも研究報告が多数あります。
多くの研究データは、音楽が脳にプラスの効果をもたらしています。
ただし結論を出すには早すぎます。

また、こういった考え方もできます。

数学が得意だから、空間認知能力が高いのかもしれません。

数学のスキルが欲しいのであれば、ひとつ言えることがあります。

左利きになるよりも、ピアノを習うよりも、数学の課題に挑戦する方が早いということです。

参考文献

この記事は以下の文献を参考にして、独自の解釈でまとめています。

  1. Are left-handed people more gifted than others? Our study suggests it may hold true for maths
  2. Does left-handedness confer resistance to spatial bias?
  3. A model balancing cooperation and competition can explain our right-handed world and the dominance of left-handed athletes
  4. Left-handedness and time pressure in elite interactive ball games
  5. Differences in Divergent Thinking as a Function of Handedness and Sex
  6. Mixed-handed children more likely to have mental health, language and scholastic problems, say researchers
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