才能がない人は、どうすれば良いのでしょうか?
多くの人が才能について、自分なりの見解を持っています。
「努力こそが才能」と言う人もいます。
プロの人たちは、自分に才能があったとは思いません。
なにかしら思考の偏り(バイアス)があるのかもしれません。
私も仕事(WEBデザイン)の才能があるとは言いません。(やはり認めたくないのです)
しかし認知特性診断をしてみると、デザインに関する才能が見つかりました。
科学的にみて、才能とは何でしょうか?
診断方法や「才能を育てる方法」について説明します。
才能の診断方法
![認知特性で分けられた人たち](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/04/ninchi_tokusei_th.png)
自分には、どんな才能があるのか?
才能を見つける診断方法があります。
医学博士の本田真美先生が発案された「認知特性診断」です。
この診断は「今の」あなたの才能を見つけることができます。
上記の記事に詳しく書いていますが、認知特性の概要を説明します。
6タイプの才能
認知特性は、視覚、言語、聴覚の3タイプに分けられます。
さらに2つずつのタイプがあり、計6タイプの才能に分けられます。
- 視覚優位者 写真タイプ
- このタイプは見たものを「写真を撮るように」画像で記憶できます。
さらに目で見た情報を、瞬時に処理できます。 - 向いている職業:デザイナー、写真家、画家など
- 視覚優位者 三次元映像タイプ
- 三次元映像タイプは、写真タイプに時間軸が加わります。映像として記憶したり、処理ができます。
初めての場所に旅行したとき、順序よく時間を追うように覚えられます。 - 向いている職業:テレビカメラマン、映像クリエイター、建築家、パイロットなど
- 言語優位者 言語映像タイプ
- このタイプは、文章を映像化して記憶できます。
また、イメージと言語を結びつけることができます。 - 向いている職業:コピーライター、絵本作家、雑誌編集者、作詞家など
- 言語優位者 言語抽象タイプ
- 言語抽象タイプは、言葉に対し、図を順序よく結びつけることができます。
紙に書いてある文字を、目から記憶しやすい特性を持っています。 - 向いている職業:内科医、作家、教師など
- 聴覚優位者 聴覚言語タイプ
- このタイプは、言葉を聞くことで記憶するのが得意です。
話を聞くだけで内容を理解し、イメージよりも言語で思考の処理ができます。
音が理解できるので、韻を踏むことも得意です。 - 向いている職業:弁護士、落語家、教師、アナウンサーなど
- 聴覚優位者 聴覚&音タイプ
- 聴覚&音タイプは、聴覚言語タイプより、言語を持たない音階などをイメージしながら、脳で処理できます。
絶対音感がある人も、このタイプに属します。
入力された音を、自らの声で出力する「モノマネ」が得意な人もいます。 - 向いている職業:音楽家など
認知特性診断は、記憶やコミュニケーションにも影響します。
自分の認知特性を知ると、人生において何かと便利です。
認知特性は生まれつきの才能か?
この認知特性は、生まれつきの才能でしょうか?
遺伝子の影響はあるようですが、それが全てではありません。
人間の脳は、環境やトレーニングで変化します。(後述します)
遺伝と才能について
![ギターを弾く女性](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/09/talent.jpg)
音楽の才能は遺伝に関わります
遺伝によって、才能は決まるのでしょうか?
誰もが気になると思います。
答えはイエスとも、ノーとも言えます。
科学的な見解から、遺伝と才能について説明します。
音楽の才能は遺伝による
2008年、スウェーデン・ヘルシンキ大学のイルマ博士らは「音楽の才能が遺伝に関与する」という、重要な研究を報告しました。[参考文献※1]
この研究では、プロ、もしくはアマチュアバンドなど、積極的に活動しているアーティスト224人の家族について、遺伝子の分析がされました。
結果は驚くべきものでした。
音楽訓練を受けていない人でも、音楽の適性テストで優秀だと確認されました。
イルマ博士は、音楽特性において、遺伝は50%もの割合を占めると言います。
この研究では、音楽の才能が「言語に影響する遺伝子」と関わることも判明しました。
遺伝子が影響する言語力と計算力
実は「読み書き」や「計算力」などは、遺伝子の影響を受けると言われていました。
イルマ博士らの研究を見ると、やはり正しいようです。
とはいえ遺伝だからといって、あきらめる必要はありません。
読み書きや計算は、日常でよく使います。
少し多めに勉強すれば、克服できます。
さらに確信を得る研究報告
スウェーデン・カロリンスカ研究所の研究者らは、さらに影響のある研究結果を報告しました。[参考文献※2]
この研究では、一卵性双生児1,211組と、二卵性双生児1,358組の遺伝子が分析されました。
結果は「音楽の適正スコアと練習量は相関しない」と判明しました。
つまり練習量よりも、音楽の才能は遺伝が占めるということです。
他にも様々な研究報告があります。
大方の見解は「音楽の才能は、遺伝を否定できない」となっています。
練習は重要
これらの調査結果をふまえて、研究者たちはこう言います。
「練習が不要とは言いません。楽器の操作、手の運動能力(器用さ)は、遺伝ではなくトレーニング量です」
音楽が好きという感情が影響する?
上記の研究報告は、別の見方ができると分かりました。
音楽才能の遺伝を持つ被験者は、より多くの練習を積んでいる傾向があったのです。
これは、遺伝子が音楽の才能だけでなく「音楽が好きという感情」に、影響している可能性があります。
「好きでなければ続かない」というのは、誰にでも経験があることでしょう。
続けることは、努力です。
その努力は、根本的に「好き」という感情に支えられています。
音楽が好きであれば、練習をあきらめるべきではありません。
音楽以外の才能はどうか?
![絵を描く能力](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/09/talent4.jpg)
絵を描く能力はトレーニング次第
それでは、音楽以外の才能も遺伝でしょうか?
実は、音楽以外の才能となると「練習、訓練(トレーニング)」の割合が大きくなります。
つまり、遺伝の要素が少なくなります。
絵を描く能力
例えば絵を描く能力は、知覚に影響します。
認知特性で言えば、まさしく視覚タイプが得意とする才能です。
手の筋肉が思い通りに動かないと、絵は上手く描けません。
ロンドン大学のレベッカ教授らは、芸術家の脳をスキャンした興味深い論文を発表しました。[参考文献※3]
芸術家は、そうでない人に比べ、小脳の活動が異なったのです。
小脳は、イメージ通りに手を動かすのに使われます。
(分かりやすく言うと、小脳の活動によって、手先が器用になっていきます)
これは遺伝のように、先天的なものではありません。
つまり練習によって、得られる才能です。
科学者らは「練習で得られない才能は、ほとんどない」と言います。
この「ほとんど」という部分の例外は、おそらく音楽の分野でしょう。
才能と努力の関係
![マラソンをする女性](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/09/talent2.jpg)
トレーニングは脳を変えます
才能は努力によって開花する。
そう信じたいものですが、間違ってなさそうです。
最初に紹介した認知特性診断は「今の」才能が分かる診断です。
「今の」を付け加えたのは、環境や訓練で脳が変化するからです。
脳は変化する
環境やトレーニングによって、脳は変化します。
例えば将棋のプロは、相手の手を読むのに、運動に関する脳部位を使います。
[直感を鍛える方法にて、詳しく解説。]
環境やトレーニングによって、新しい才能が得られることを示しています。
脳には、以下のような性質があるからです。
- 頻繁に使う脳の機能は、強化される。
- 逆に使われない脳の機能は、弱まる。
例えば、目が見えない人の脳をスキャンした研究があります。
視覚で使う脳の部位が、視覚を失った人では、どのように変化するのでしょうか?
視覚で使っていた部位は、視覚以外の機能で使われ始めるのです。[参考文献※4]
「そこの脳をあまり使わないのなら、別の機能で使わせて」というイメージです。
これらは「脳の可塑性(かそせい)」と言います。
脳が変化する仕組み
脳の可塑性については、詳しく説明すると大変な量になります。
ここでは、才能に絞って簡単に説明します。
信州大学のホームページに、分かりやすい例えがあります。
コンピューターの回路は、一度設計されると変わりません。
しかし脳の回路は、遺伝子によって設計されても、後で変化させることができます。
環境やトレーニングが、脳を変化させるのです。
才能を育てる方法
![タブレットで勉強する子ども](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/06/children-tablet1.jpg)
好きでなければ才能は得られない
環境や訓練で、脳は変化します。
そして才能を得ることができます。
しかし、見過ごしているものがあります。
それは「続けられるか」です。
やはり好きでなければ、物事は続きません。
才能を得る方法として、コツや考え方を説明していきます。
才能が開花するまでの期間
どれぐらい時間を掛ければ、脳は変化するのでしょうか?
才能が開花するまでの時間には、目安のようなものがあります。
手(筋肉)が慣れるのは一週間程度
マウスを上下逆さにして、仕事をします。
最初は苦労しますが、わずか一週間程度で操作に慣れます。
「上下左右が逆さに映るメガネ」を掛けても、だいたい一週間で日常生活を送れます。
どうやら脳(小脳)が学習するのに、一週間程度は掛かるようです。
脳が変化するは3〜4ヶ月程度
次に脳の活動が、変化するまでの期間です。
前述のプロ棋士の研究報告では、3〜4ヶ月程度のトレーニングで、別の脳部位を使い始めました。
他にもジャグリングの研究もあります。
やはり3〜4ヶ月程度のトレーニングで、別の脳部位を使い始めるようです。
プロになるまでの期間
その分野のエキスパートになるには、いったいどれほどの経験を積めば良いのでしょうか?
古い研究では、フロリダ州立大学のエリクソン博士が報告した「1万時間ルール」があります。
1万時間(5〜10年)掛ければ、誰でもエキスパートに慣れるという法則です。
現在では「1万時間ルール」は、ほとんど支持されていません。
1万時間は平均値であって、3千時間や2万時間でエキスパートになる人も含まれます。
こればかりは、個人差があります。
それでは何が影響するのでしょうか?
ミシガン州立大学のデービット教授は、ワーキングメモリ(作業記憶)がひとつの要因と言います。[参考文献※5]
ワーキングメモリは、頭の中に保持する「短期的な記憶(目的達成の材料)」です。
ワーキングメモリの個人差が、才能を開花させるまでの時間に影響するのです。
さらにデービット教授は、こう言います。
「長い練習と経験が必要だからこそ、専門家が成り立っている」
私はそれを聞いて、納得するしかありませんでした。
好きでなければ才能は手に入らない?
![砂で作る芸術作品](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/09/talent3.jpg)
本当に好きで、続けられますか?
才能を得るには、多くの練習や経験が必要です。
そこで重要なことは、続けられるかです。
続かなければ、才能は手に入らないのですから、好きであることは重要です。
「何が好きか」は、遺伝子が関わっている可能性もあります。
(赤ちゃんの頃の経験が関わる可能性もあります)
それでは「好き」とは何でしょうか?
続けても苦にならない
私はサイトを作ることが好きです。
休日を丸一日潰しても、達成感が優先されるようです。
「続けても苦にならないこと」は、才能を育てる上で、重要な要素です。
「続けられる」ことが大切
私は音楽もゲームも好きです。
でも、楽器を弾いたり、ゲームを作ったりする作業は、苦痛です。
ただ何となく続けられたり、達成感があったりすることが必要です。
音楽やゲームを「作ること」には憧れますが、その工程は続かないのです。
「インスタグラムが好きですか?」という質問には、2つ以上の要素があります。
インスタグラムで「いいね」されると、欲求が満たされ、気分が良くなります。[1]
- 承認されると、脳の報酬系回路が反応します。
それは「写真を撮るのが好き」とは、別の要素です。
「写真を撮る行為が好き」でなければ、才能は得られないでしょう。
好きであることは、才能を育てるのに、最も重要な要素です。
マンネリは「好き」ではない
ずっと同じ事を繰り返すと、マンネリ化します。
マンネリ化は「飽きる」のを防止するシステムです。
その前に「飽きる」というのは「食事もとらずに同じ事を続けること」を防止するシステムです。
不思議なことに、マンネリ化すると、苦痛ではなく慣れていきます。
このマンネリ化は「好きで続けている」のではありません。
今やってることは、続いてはいるけれど、本当に好きなことでしょうか?
そこに注意すれば、自分の「好き」を見つけられるはずです。
動機を整理しよう
もう少し「続けられること」について、詳しく説明します。
才能にとって、重要な要素です。
ものごとを続けるには、動機が必要です。
この動機には、2種類あります。(正式な名称はありません)
- 内的動機
- 「ただ何となく好き」という感情で動いているもの。続けても苦にならない。
- 目的動機
- 「大きな収入を得たい」や「名声を得たい」など、目的から発生する動機。
「目的動機」で行動すると、やはり続かないのです。
才能を得るには、内的動機こそが必要です。
成功するのは、内的動機のひと
イェール大学のエイミー博士らは、14年間に渡る研究で、内的動機が出生に影響すると報告しました。[参考文献※6]
「大きな収入を得たい」とか「出生したい」などの動機で行動する人ほど、出世できないことが判明しました。
「ただ何となく好き」ということは、(結果として)才能を育てる要因だったのです。
目的動機が続かないのは、私にも経験があります。
(もっと早く知っていればと……)
結論
![才能を育てる方法](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/09/talent_info2.jpg)
この画像は転載できます。(下のクレジットだけ残してください)
才能を得るには「ただ何となく好き」という感情が、大きな要素を占めます。
「苦にならない」「達成感を得るもの」を見つけることが、才能を育てる近道です。
生まれつきの遺伝は、あまり気にすることはありません。
脳は変化するからです。
ただし音楽の才能は、遺伝を否定するのが難しいと言えます。
好きなことで収入を得られるか?
内的動機の「何となく好きなこと」は、出世の要素となり、結果的に収入も高くなる可能性があります。
ただし、内的動機だけで完結する仕事は、ほとんどないかもしれません。
私はWEBサイトを作ったり、育てるのが本当に好きです。
しかし現実の仕事は、そうと限りません。
見積もりをして、プレゼンをして、スケジュールを調整し、メンバーのサポートをします。
仕事上の立場も、変化します。
YouTubeに「好きなことで生きていく」というキャッチコピーがあります。
ユーチューバーは、企画をして、演者となり、撮影をして、編集をして、宣伝もこなします。
すべての工程を「ただ何となく好き」になるのは、難しいかもしれません。
(私の場合は、動画の編集だけが好きです)
マンネリを利用しよう
好きでない工程を避けるのは、現実的に難しいものです。
そんなときは、マンネリのシステムを利用しましょう。
マンネリのシステムによって、脳は慣れることができます。
(嫌なことも「慣れてしまう」ことに注意してください)
これらを踏まえて「好きなこと」を見つけるのが良いでしょう。
才能がないのなら、才能を見つけることができます。
参考文献
この記事は以下の文献を参考にして、独自の解釈でまとめています。
- Musical Ability: Hereditary or Environmental?
- 【PDF】Practice Does Not Make Perfect: No Causal Effect of Music Practice on Music Ability
- Drawing on the right side of the brain: A voxel-based morphometry analysis of observational drawing
- Preserved functional specialization for spatial processing in the middle occipital gyrus of the early blind.
- Deliberate practice: Is that all it takes to become an expert?
- Multiple types of motives don’t multiply the motivation of West Point cadets