ゲームの上手い人は頭が良いか?

ゲームをする女性

ゲームが得意な人は、頭が良いのでしょうか?
そんな疑問を持つ方は、多いかと思います。

この記事では、科学的な研究を紹介し、「ゲームの上手さ」と「頭の良さ」の関係を探ります。
また「ゲームが上手い人の特徴」についても、紹介します。

さらに「ゲームをすると頭が良くなるのか?」という疑問についても、説明します。

ゲームの上手さとIQが関連する

プレステのコントローラー

2017年11月に「特定のゲームが、IQの高さと相関する」という新しい研究が出てきました。[参考文献※1]
この研究報告は、多くの海外メディアが取り上げています。

似た内容の研究は、2015年にもありました。
どちらの研究でも(特定の)ゲームは、IQテストのように機能するとあります。

ゲームのジャンルはMOBA

この研究は、2017年11月に報告されました。
IQとゲームスキルに関連があったのは、MOBAというジャンルの「Legend of Legends」と「Dota 2」というゲームです。

以下が研究内容です。

イギリス、ヨーク大学のアレックス教授らは、MOBAのゲームスコアとIQに、相関があることを発見しました。
「Legend of Legends」のプレイヤーは、IQテストでも上位15%に集中しています。

そして2つ目の研究です。
「Legend of Legends」と「Dota 2」のプレイヤーは、20代前半から中頃で、最もスコアが高くなると分かりました。(数千人規模のデータ分析)
これは「チェスとIQの相関関係」と、一致しています。
そしてFPS(1人称視点で銃などを使うゲーム)では、(年齢において)IQとの関連性が見当たりませんでした。

つまり、MOBAのゲームプレイヤーは、IQが高い傾向にあると判明しています。
そして、ゲームの上手さとIQの高さに、関連性がありました。

余談ですが、FPSのプレイヤーは、年齢が高いほどゲームのスコアが低下しています。

補足

2つ目の研究は、年齢とスコアの相関関係です。
数千人のIQを測定しているのではありません。

MOBAとは?

MOBAというゲームのジャンルは、聞き慣れないかと思います。
MOBAはマルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナの略です。

RTS(リアル・タイム・ストラテジー)のサブカテゴリに位置していますので、まずはRTSを知る必要があります。

リアルタイムストラテジー - Wikipedia

昔、国内ではリアル・タイム・シミュレーションとも呼ばれていました。

MOBAには、どんなゲームがあるかは、以下wikipediaをご参考ください。

マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ - Wikipedia

国内のゲーム動画を見ると、早いかもしれません。
以下の動画は、セガの「Wonderland Record Of Wars」というMOBAジャンルのゲームです。

複雑なルール

IQテストとの関連が見つかったのは、MOBAというゲームのジャンルです。
この研究で使われた「Dota 2」は、非常にルールが複雑です。

その難解さは有名で、「ルールを理解するまでに挫折する」とも言われています。
その代わり、eスポーツでの賞金額は1,000万円を超えます。

MOBAは、囲碁、チェスといった「マインドスポーツのビデオゲーム版」とも言えます。
eスポールでも、よく使われるゲームジャンルです。

当然の結果か?

MOBAのゲームが、IQと関連するのは、当然といえば当然です。
MOBAは、マインドスポーツのように、頭脳を使うからです。

このゲームを攻略するには、IQと結びつく「流動性知能」が使われます。
IQの優れた人は、そもそもMOBAのゲームを攻略するのに適しています。
よって、それほど不思議なことではありません。

「ゲームで頭が良くなる」ではない

アレックス教授らは、「ゲームをすると頭が良くなる」という研究ではないことを強調しています。
議論が多い問題だけに、あえて釘を打ったのだと思います。

「ゲームをプレイすると、頭が良くなるか」については、まだ科学的な根拠が揃っていません。

研究の意味

この研究の要点は、「ゲームがIQテストの役割を持てるか」というものです。
IQテストには、問題があるからです。

例えば、「モチベーションは、IQテストの結果を左右する」という現象です。
IQテストに報酬があれば、IQテストの結果は、全体的に向上します。

「やる気満々」に挑む人と、そうでない人がいれば、IQが正確に測れないからです。
そして、体調にも左右されます。

ゲームでIQを測定することで、「ビッグデータを取る」という目的も、考えられます。
オンラインのゲームは、データを収集しやすいからです。

頭が良いとは何か?

知的な女性

ゲームが上手い人は、頭が良いのでしょうか?
この疑問には、「頭が良いとは何か?」について、整理する必要があります。

IQについて

IQは、およそ1世紀にわたって科学的な調査がされてきました。
しかし、まだまだ議論が必要です。

2012年には、「IQテストで頭の良さを測定するのは、誤解を与える」という研究報告がありました。[参考文献※2]

さらにこの研究では、ゲームについても書かれています。
「定期的にゲームをプレイする人は、推論と短期記憶に優れている」という傾向が見つかっています。

この研究では、「IQテストは、非常に誤解を招く」という結論になっています。
頭の良さは、単一のテストで測定できるほど、単純なものではありません。

さらに、ゲームをプレイする人が、推論と短期記憶に優れているのは、注目すべき点です。
推論と短期記憶[※]は、頭の良さに関わります。

  • 紙に電話番号を聞きながら書くとき、脳に保持する「すぐに消される記憶」のこと。

また、IQと富(成功)の相関については、はっきりとしません。
ある研究では、IQと富は相関し、別の研究では否定されています。

頭の良い人とは

テレビで活躍する芸能人に、「頭が良い」という印象を持つことがあります。
ビートたけしさん、明石家さんまさん、松本人志さんなどです。
司会者として活躍する、有吉弘行さんや、ブラックマヨネーズさんもです。

彼らは、非常に短い時間で、面白い言葉を使います。
私は「頭の回転が速い」と思います。

また「どこかで聞いたフレーズ」を使いません。
常人には思いつかないような、オリジナルの言葉をひらめきます。

これらは、創造性が高いと言えます。
しかし、創造性とIQは、関連がありません。

私たちは、IQと関係のないことでも、頭が良いと感じています。

ショートカットをしている可能性

「ゲームが上手い」という理由には、様々な要素があります。
とりあえずの答えとして「頭が良い」を理由にしているのかもしれません。

このように、別の要因があるのに、もっと簡単な理由を思い浮かべるのは、よくあることです。
思考のショートカットです。
ショートカットは、思考を辞めるためにも、必要な機能です。
「永遠に考え続ける」のを防ぎます。

バイアスの可能性がある

「ゲームが上手い人は、頭が良い」と、思う人がいます。
逆に、まったく関係がないと思う人もいます。
これは科学者の中でも、意見が分かれます。

それでは、スポーツはどうでしょうか?

実は運動と学力は、非常に強く相関します。

多くの研究で、「運動は頭にとって良い」ことが判明しています。

運動をすることで、体と脳の信号が頻繁に増えます。
このときに成長の源泉となる、成長因子が放出されます。
それは、記憶、思考力、学習能力を高めます。

アスリートは、頭も良いのです。
(もちろん運動が苦手な人でも、頭が良い人はたくさんいます)

「運動・スポーツと頭の良さ」は、見解が統一されています。
(あまりにも研究報告が多いので、参考文献は割愛しています)

一方で、ゲームと頭の良さは、見解が統一されていません。

認知バイアスの可能性

私は普段生活をしていて「スポーツが得意な人は頭が良い」ということに、気がつきませんでした。
一方で「ゲームが上手い人は、頭が良いかもしれない」と、思ったことはあります。
そこには、偏見が存在しました。

これらは認知バイアスです。

認知バイアスは、錯覚に似ています。
そのようなイメージが、頭の中にあっただけです。

「頭が良い」には、IQで測定できないほど、多くの要素があります。
本来は、簡単に結論が出ない話です。

「思考のショートカット」や「認知バイアス」によって、「頭が良い」をひとくくりにしているのでしょう。

認知バイアスについては、以下の記事に詳しく書いています。

【バイアス】あなたが知るべき13の認知バイアス(人生に役立つものだけ)

【バイアス】あなたが知るべき13の認知バイアス(人生に役立つものだけ)

ゲームで頭は良くなるのか?

一人で仕事をする女性

「運動をすると頭が良くなる」については、見解が一致しています。

一方で「ゲームをすると頭が良くなる」については、まだまだ議論が必要です。
確信が得られるような研究は、まだ出ていません。

得られる能力はゲームの種類による

MOBAのゲームが、IQと相関するのには、理由があります。
ワーキングメモリを使うことや、戦略的な計画を立てる思考力などが関与します。

ワーキングメモリは、頭の中に保持する「一時的な作業領域」です。
仕事ができる人や、頭が良い人にも関与します。

ワーキングメモリとは【頭の良い人は、どう使っている?】

ワーキングメモリとは【頭の良い人は、どう使っている?】

ワーキングメモリは、使うことで鍛えられます。

ワーキングメモリとゲーム

ワーキングメモリは、「戦略や計画が必要なゲーム」に使われます。
具体的なゲーム名で言えば、「マインクラフト」などが、ワーキングメモリをよく使います。

マインクラフトの画面

建築物にも、ワーキングメモリを使います

マインクラフトでは、論理的な回路を作るとき、ワーキングメモリを活用します。

シューティングゲームや、単純なアクションゲームは、あまりワーキングメモリを使いません。

FPSやアクションゲームは認知能力が向上する

FPSやアクションゲームは、認知能力を向上させる可能性があります。
ただし「認知能力が高いから、アクションゲームを好きになった」という可能性も、否定はできません。

ゲームと認知能力の関係性については、有名な研究があります。
以下の記事にて、詳しく解説しています。

ゲームが脳に与える影響を詳しく解説

ゲームが脳に与える影響を詳しく解説

例えば空間認知能力は、数学を解くのにも使われます。
また、アクションゲームのプレイヤーは、マルチタスク能力も高いことが判明しています。
さらに、集中力や注意力に、優位な相関があります。

以下の能力は、ゲームによって得られる可能性があります。(もちろんゲームだけではありません)

  • 集中力
  • 注意力
  • マルチタスク能力
  • 計画性
  • ワーキングメモリ
  • 短期記憶

これらの能力は、「頭が良い」と感じる要素の一部です。

この他にも、「ゲームのプレイヤーは、計画的な思考を持つ」という統計もあります。

ゲームが上手い人の特徴

ゲームのコントローラー

前項では「ゲームに関連する能力」について、説明しました。
基本的な考えとして、ゲームで育った能力は、ゲームの上手さに結びつきます。

よって、ゲームが上手い人の特徴は、以下のようになります。

  • 集中力、注意力に優れる
  • マルチタスク能力に優れる
  • 計画性に優れる
  • ワーキングメモリと短期記憶に優れる
  • 空間認知能力に優れる
  • プレッシャーへの対応力に優れる
  • 推論(予測能力)に優れる

マルチタスクとは「同時作業」です。
「耳で聞きながら、手足を動かす」、「食事をしながら、テレビを見る」なども、マルチタスクです。
2つの作業を同時にこなすので、脳の両側を使います。

マルチタスクについては、以下の記事に詳しく書いています。

マルチタスクとは【人間の同時作業】脳への影響とやめるべき行為とは?

マルチタスクとは【人間の同時作業】脳への影響とやめるべき行為とは?

最近の研究で、空間認知能力は、後天的だと分かっています。
ゲームのプレイによって、空間認知能力は鍛えられます。

これらの能力は、ゲームによっても身につきます。
(ただし科学的には議論があります)

「○○だからゲームが上手い」というのは、「ゲーマーだから○○だ」という可能性もあるのです。

反射神経について

前項で「ゲームが上手い人は、反射神経に優れる」というのを外しています。
これは、予測能力に近いものです。

ゲームの上手い人は、ゲームの状況を予測して、コントローラーで対処します。
未来を予測しないと、コントロールが間に合いません。

これは、手足の筋肉を動かすのと同じです。
未来を予測できるからこそ、手足が自由に動きます。
赤ちゃんには、この能力が不足しいるので、自由に手足が動きません。

予測能力は、経験・訓練によって「記憶」に貯蔵されます。(学習です)
簡単に言えば「慣れ」ですから、ゲームのプレイ時間に影響します。

つまり後天的に身につく能力です。

結論

チェスの写真

ゲームの上手い人は、頭が良いのでしょうか?
結論をまとめると、以下のようになります。

  • MOBAのジャンルでは、IQが高い傾向にある
  • ゲームの種類によって「頭が良い」に、関連することがある
  • 「頭が良い」を一概に定義できない
  • 「ゲームの上手い人は頭が良い」は、錯覚かもしれない(認知バイアス)

そして、私たちが思う「頭が良い」とは、IQに限らないということです。
近年では、社会性適応能力を考慮した「EQ・HQ」といった指標もあります。
どんなにIQが高くても、社会に順応する能力も必要です。

「頭が良い」を一概に定義することはできません。

テスト期間前にゲームを我慢できるのも、頭が良い人の特徴です。
ただし、あくまで「頭が良い」を構成する一部の能力です。

「頭が良い」とは、非常にあいまいな表現です。

ゲームが上手いからといって、頭も良いとは限りません。
どちらかと言えば、スポーツの方が強く相関します。

MOBAのようなゲームはともかく、一般的なゲームにおいては、頭の良さを結びつけることは、まだできないでしょう。
今後の研究を待ちます。

参考文献

この記事は以下の文献を参考にして、独自の解釈でまとめています。

  1. Exploring the relationship between video game expertise and fluid intelligence
  2. Fractionating Human Intelligence
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