eスポーツの世界と、日本が巻き返す手段

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eSportsのイメージ

eスポーツ(e-Sports)の誕生は、スポーツの歴史を塗り替えました。
この1世紀(100年)の間、eスポーツは「最も大きなスポーツの発明」と呼ばれています。

以下の動画は、世界最大の格闘ゲーム大会「EVO 2017」の決勝戦です。

日本人の「ときど」選手が優勝しました。
8:40あたりから、ときど選手(男性キャラ)の逆転劇が始まり、会場は異常なほど盛り上がります。
13:50あたりからは、ときど選手が魅せる必殺技を繰り出し、最高に熱い展開になります。
ときど選手は、この大会でおよそ400万円の賞金を獲得しました。

ゲームの文化は、もともと日本が得意とする分野でした。
しかし、eスポーツにおいては、遅れを取っています。
この記事では「どうして日本がeスポーツで遅れたのか」「なぜ中国が進んでいるのか」について説明します。

また「日本がeスポーツで逆転する方法」や、「メーカーはどんな設計をすれば良いか」について書いています。
他のスポーツと比べて、eスポーツの弱点は何でしょうか?
ここでは技術介入度の設計と、人間の心理についても説明します。

目次

eスポーツとは

eスポーツは、「エレクトロニック・スポーツ」の略です。

http://jespa.org/about

日本の場合、スポーツは体を動かすイメージがあります。
eスポーツは、囲碁、将棋やチェスなどのマインドスポーツに近い競技です。
(実際にマインドスポーツは、運動の脳領域を使うことが分かっています)

賞金について

2017年1月には、1,200万円の賞金を獲得するeスポーツ大会がありました。
Dota2というPCゲームの世界大会です。
(Dota2は、最も複雑なゲームと言われています)

世界トッププレイヤーの賞金獲得額は、およそ3億〜4億です。
以下のサイトには、賞金ランキングが掲載されています。

Highest Overall Earnings - eSports Player Rankings :: e-Sports Earnings
This list represents the top players in esports who won the most prize money based on information published on the internet. Sources include news articles, foru...

2017年11月の時点で、日本人のトップランカーは「梅原大吾」選手(352位)です。
ときど選手は428位でした。
こういった賞金額は、ゲームの種類によって大きく異なります。
「Highest Paying Game」の欄で確認できます。
上位はDota2か、リーグ・オブ・レジェンドで占められています。

中国でeスポーツの関心が高い理由

中国は、eスポーツに最も大きな関心を持っています。
インターネットのeスポーツ視聴者は、世界の半分以上が中国のユーザーです。

eSports観戦のストリーミングユーザー世界分布

日本は出遅れました。
今でも欧米のメディアが、「ゲームと言えば日本」と、真っ先に出るにも関わらずです。

なぜ、中国はeスポーツ先進国なのでしょうか?

中国でもゲームは悪者にされてきた

中国当局は2000年から2015年にかけて、ビデオゲーム機の販売と製造を禁止していました。
主な理由は、子どもへの悪影響です。
ビデオゲームを「デジタル・ヘロイン」とまで言いました。

そのような規制にも関わらず、eスポーツの市場が大きいのは、不思議に思えるかもしれません。

PCゲームは中国の若者文化だった

海外の若者

中国では、1990年代後半から、インターネットカフェでPCゲームをするという若者文化ができました。
受験戦争や「親からの束縛を抜け出したい」といった反抗期の行動です。
実はこの若者文化が、中国のeスポーツ市場に貢献するプレイヤーを育てました。

一方で日本は、ゲームセンターが主流でした。(ゲームセンター以外にもあったと思いますが)
日本のeスポーツに貢献するプレイヤーも、ここから生まれています。
これは日本のeスポーツ選手が、格闘ゲームに偏っている理由でしょう。
中国には、PCゲームの文化があったのです。

気になるのは、ゲームセンターのプレイ料金が、10代には高いことです。
ゲームが上手くないと、1分未満で100円を次々に消費します。
一方でインターネットカフェのゲームは、定額料金で済みます。
このあたりにも「出遅れた要因があるのでは?」と思います。

ちなみに反抗期は、世界中に見られる傾向です。
米国では、未成年の飲酒が社会問題です。

中国はデジタルで有利な環境にある

大気汚染の写真

中国がeスポーツを牽引しているのは、やはり環境要因です。

環境は、市場の競争力を育てます。
ドイツの交通環境は、明らかにドイツ車のブランドを育てています。
(アウトバーン、歩行者の信号が短いなど)
同じように中国は、デジタルで有利な環境にあります。

中国の都市部では、既存スポーツの大きなスペースは確保できませんが、eスポーツであれば省スペースで済みます。

また、日常生活に制約があります。
大気汚染の問題です。
eスポーツであれば、外出する必要もありません。

これらの要因が「世界で最も有利なデジタル環境」と呼ばれる理由です。

中国のeスポーツ市場には弱点もある

ソーシャルメディアのイメージ

前項のように、中国のeスポーツ業界は、世界でも飛び抜けています。

しかし弱みがあります。

それは、主要なソーシャルメディアが使えないことです。
ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなど、世界中で使われているSNSが使えません。
そしてYoutubeまで規制されています。

せっかくのスター選手が、世界中のファンを獲得する機会を失っています。

SNSを使う前に

eスポーツは、中国のマーケットが巨大です。
しかし前述の通り、SNSの問題があります。
逆に日本のゲーマーは、SNSを活用するとチャンスが広がります。

SNSは、始める前に吟味する必要があります。
eスポーツのゲーマーとして、どのSNSが自己のブランドに合っているでしょうか?
細かいように思えますが、海外では、セルフブランディングにしっかりとした計画を立てるのが普通です。

WEBサイトが必要

プロゲーマーは、SNSのアカウントの他に、WEBサイトも必要です。
これは、認知度ができてからで構いません。

必要なのは、WEBサイトというより、ドメイン(example.comなど)です。
自分のドメインだけ取得して、中身はブログサービスを使っても問題ありません。

自己ブランディングには、ドメインが必須です。
有名になるほど、ドメインに価値が高まるからです。

男女格差の問題

男女格差のイメージ

eスポーツには、男女格差の問題があります。
誰もが「分かる」と感じる研究報告も紹介します。

まずはゲームの腕と男女差について説明します。

男女でゲームの腕は違うのか?

「男性は女性よりもゲームが上手い」と、多くの人が思っています。

スポーツにおける男女差は、テストステロン(男性ホルモン)による筋肉の差です。
ゲームの上手さに、男女差は影響しません。

さらに一部の人は、「男性の空間認知能力が女性よりも高いから」と主張します。

しかし空間認知能力は、生まれつきではなく、環境によるものです。
例えばインドのカルビ族は、女性の方が空間認知能力に優れています。

空間認知能力は、ゲームによる訓練次第です。

空間認知能力とコミュニケーション能力

男性は子どもの頃の遊びによって、空間認知能力が育てられます。
つまり性差ではなく、環境による影響です。

一方で女性は「コミュニケーション能力が高い」と言われますが、これも環境次第です。
子どもの頃の遊びも、影響しているでしょう。

これらは練習次第で能力を磨けます。
脳は、環境で変化するからです。[※]

  • 可塑性といいます。

全く練習をしなければ、男性は空間認知能力で有利かもしれません。
その代わり、チームバトルで女性が有利になるでしょう。
いずれにしても、トレーニング次第で性差はなくなります。

男女で分ける必要がない

乗馬の写真

男女混合のオリンピック競技は、乗馬(馬術)です。
乗馬では、筋肉が強く影響しません。
そして馬術でも、空間認知能力は必要でしょう。

(前項のように)ゲームの能力に男女差は、関係がありません。
eスポーツでは、男女でリーグを分ける必要がなくなります。

男女格差の問題を知る

男性プレイヤーには、ある問題が起きてしまいます。
多くの人に心当たりがある内容です。
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の教授らが、アクションゲームをプレーする男性の心理を科学的に検証しました。[参考文献※3]

研究報告によると、ゲームランクの高い男性は、ランクの低い女性に対して、ミスに寛大でした。
さらに肯定的な発言も多くなりました。(優しく接したとも言えます)

一方で、自分よりランクが高い(上手い)女性だと、接し方が変わります。

ゲームランクの低い男性は、ランクの高い女性がミスをしたときに、批判的な発言をする傾向にありました。
ねたみ、嫉妬の感情は、女性が味方だったときに大きくなったのです。
偏見が確認できたのです。

ただし男女全体を見渡せば、否定的な発言自体が少なかったようです。
これはゲーム内で、社交的な人が思ったより多いことを示します。

偏見を取り除く

ゲームの上手さによる性差はありません。
まずは偏見を取り除く必要があります。

また、セクハラ行為は、世界中で見られる傾向です。
これらの問題に取り組めば、日本のeスポーツ界が注目されるでしょう。
世界に出るならば、男女格差の問題は、欧米の基準に合わせるべきです。

中国のLLG

LLGという中国の「eスポーツチーム」があります。
女性で結成されたチームです。

彼女らは、インターネットカフェにも入れないという差別を受けてきました。
ゲームをする女性に対しての偏見です。
以下、BBCのインタビュー動画に、詳しい内容があります。(英語)

http://www.bbc.com/future/story/20170911-the-pro-gaming-glass-ceiling-in-china

(この記事には賛否があります)
現在、彼女らはeスポーツのスター選手です。

日本が出遅れた理由

東京の夜

どうして日本は、eスポーツに出遅れたのでしょうか?
前項のように、中国には環境要因が大きいという背景があります。

FPSが流行らなかった理由

FPS(ファーストパーソン・シューター)というジャンルがあります。
プレイヤーの視点で移動する「3Dタイプのゲーム」です。
ほとんどのFPSには、銃が使われます。

日本ではあまり流行りませんでした。
そのため日本のゲームメーカーは、FPSのゲーム開発に抵抗がありました。

銃で相手プレイヤーを撃つという行為に、日本では抵抗も感じられます。

ゲームセンターの文化

90年代後半、日本のゲームセンター文化には熱気がありました。
一方で中国は、インターネットカフェによるPCゲームの文化が育ちました。

この時期に育ったスタープレイヤーの違いもあるでしょう。

ゲームに否定的なテレビメディア

テレビ・新聞メディアは、昔からゲームを否定してきました。
テレビ視聴の時間を奪うからです。
さらにゲーム脳というデタラメな科学を広めました。

これらの傾向は、日本だけではありません。
とはいえ、日本はテレビの視聴時間が非常に長い国です。[参考文献※2]

日本のテレビメディアは、eスポーツのチャンピオンを、スターとして扱っていません。
他の競技とは、格差があります。
ゲームやeスポーツの市場規模から見ても、露骨な温度差を感じます。

もはやテレビメディアに期待することは、難しいのかもしれません。

大会の賞金問題

日本では法整備が遅れていたため、高額賞金の大会が開催できなかった経緯があります。
後述するオーストラリアの事例を見ると、高額な賞金の出る大会が必要です。

日本でeスポーツの遅れを取り戻す動き

現在、日本におけるeスポーツの見通しは、明るくなってきました。

まず統一団体の設立です。
統一団体の設立により、五輪や世界大会への出場ができるようになります。

ゲームで五輪へ!? eスポーツが統一団体設立へ
国内でプロライセンス発行で高額賞金大会も

また、高額な賞金の大会が開催可能になり、プロのライセンスも発行できるようになります。

FPSのゲームチェンジャー

FPSというジャンルに、新しい流れができました。
任天堂のスプラトゥーンです。

スプラトゥーン - Wikipedia

このゲームは、明らかに今までのFPSと思想が違います。
これらのゲームが、上手く日本のeスポーツを牽引してくれることに、期待がかかります。

幸いなことに、スプラトゥーンはチーム戦です。
チームで行うスポーツは、試合に流れが発生するため、大会が盛り上がる傾向にあります。

しかし任天堂は、ローカルの大会に消極的なスタンスをとっています。

日本がeスポーツで逆転するためには?

日本はeスポーツで出遅れてしまいましたが、それを取り戻す方法があります。
他国を参考にしたり、ゲームにおける偏見を取り除くことです。

オーストラリアを参考にする

オーストラリアは、eスポーツの市場が小さかった国です。
しかし急激に発展しています。

それはプロライセンスの発行、高額な賞金が出る大会によるものです。
これらは、日本も(やや遅れましたが)追従しています。

オーストラリアのeスポーツは、スター選手に支えられています。
ほとんどのプレイヤーは、自宅からゲームをしていますが、一部のプレイヤーは専用の施設を使っています。

そして企業からは、マーケティングのバックアップを受けています。

やはり日本でも「高額な賞金の出る大会」が条件です。
そして、メーカーのサポートを必要としています。
国内の企業には、eスポーツの成長を見込んでの事業展開が求められています。

ゲームへの影響を知る

近年では「ゲームが脳に良い影響を与える」という研究報告が増えています。
(FPSで海馬が萎縮するという研究は、議論の必要があります)

脳に良い影響を与えるには、運動が一番です。
しかしそれを言っては、囲碁や将棋などのマインドスポーツも成り立ちません。

ゲームへの偏見をなくす

囲碁や将棋と違い、ゲームには悪い印象があります。
スプラトゥーンやゼルダ、ストリートファイターは、そこまで悪いのでしょうか?

少なくともマインクラフトは、頭を使います。
創造性や計画性の向上に優れています。

私はプレイするゲーム次第だと考えます。
ゲームに対する偏見は、eスポーツに影を落としています。

ゲームセンターからネットへ

ゲームのライブ配信(ストリーミング配信)は、現在でも増えています。
先駆者は有利ですが、配信を始めるのに、遅いことはありません。

海外と比べると、日本のゲームセンター文化は根強いです。
以下の動画で「コントローラー」に注目してください。

相手側の外国人選手は、パッドを使っています。
一方で「ときど」選手は、アーケードタイプのコントローラーを使用しています。

コントローラーには好みもあるでしょうが、日本のゲームセンター文化を物語っています。

eスポーツを楽しむ施設が必要

中国のネットカフェは、eスポーツ用のスペースがあります。
外観、内装ともに、おしゃれなカフェのような建物もあります。

こういった共通のスペースは、日本ではまだ少数です。
eスポーツ用のスペースは、坪あたりの利益率に左右されます。
これらのヒントは、中国の店舗にあります。

またオーストラリアでは、eスポーツ専用の施設が増えています。

ゲームメーカーはどうするべきか?

野球観戦の写真

なぜスポーツ観戦は白熱しますか?

日本には、ゲームバランスや、操作性に定評のあるゲーム会社があります。
特に格闘ゲームのジャンルは、日本のメーカーが得意です。

eスポーツのゲーム設計は、まだ開発の余地があります。
どうすれば大会が盛り上がり、競技人口が増えるのでしょうか?
それは、ゲームの設計に左右されます。

eスポーツが他のスポーツと違う点

サッカーのシュート

eスポーツには、他のスポーツと決定的に違う点があります。
それは、入力がデジタルという点です。

ボタンを押せば「押した」という入力信号だけが流れます。
強く押しても、弱く押しても、繊細に押しても、同じ入力信号です。
これが他のスポーツと違う点で、非常に多くの影響があります。

なぜシュートを外すのか

バスケやサッカーでは、シュートを外すことがあります。
ゴルフでは、ロングパットを入れると、会場が沸きます。
しかし、どんなプロでも「外す」ことはあります。

なぜ外すのでしょうか?

それは筋肉が動く前の脳活動です。
脳の入力信号は常にブレるため、出力側の筋肉は安定しません。
こうしてパットやシュートを、ミスします。
もちろん練習をしたり、集中することで、このブレを抑えることができます。

コンピューターは、入力に対して、出力が一定です。
一方で人間は、入力に対して、脳の信号がブレるため、出力が変動します。
この変動の差が、ミスを生みます。

脳信号のブレは、ランダムな要素と言えます。

人間同士のスポーツ対戦が面白い理由

プロスポーツの選手は、トレーニングによって、筋肉を正確に動かしています。
しかし、どんなに訓練しても、脳の入力はブレます。

逆にブレが上手くハマると、スーパープレイが起きます。
機械と機械がテニスをしても、ミスもスーパープレイもない対戦になります。

筋肉を動かすことで、不確実性が生まれるわけです。
これは、スポーツ観戦が盛り上げる理由です。

ゲームメーカーの悩み

前項のように、人間の脳は、入力信号が常にブレています。
スポーツでは、このブレによって、ミスやスーパープレイが生まれます。

このブレは、ランダムの要素です。
「運の要素」とも言えます。

一方でゲームは、入力信号が一定です。
筋肉を使うスポーツと同等にしたければ、ゲームにもブレを反映させるしかありません。
しかし、脳波計を付けるわけにもいきません。

技術介入度を調整する

サイコロの写真

脳の入力信号がブレるのは、ランダムの要素です。
ランダムの要素は、大会を盛り上げます。

そこでゲームメーカーは、プログラミングによって、ランダムを生み出すことができます。
いわゆる「技術介入度が低い」という状態です。

しかし技術介入度が低いと、プロゲーマー側から反発が出ます。
観戦者としても、プログラミングでランダムに出力が変わると知れば、がっかりするでしょう。

プログラムでランダムを介入することは、筋肉を使うスポーツと、脳のレベルでは(あまり)変わりません。
なのに人間として、なぜか「実力の外にある」という気がするのです。

ウメハラ選手の影響

梅原大吾選手は、格闘ゲームにおいて最も有名なプロのプレイヤーです。

以下の動画は、ウメハラ選手が劇的な逆転をした瞬間です。

この動画の再生回数は640万再生ですが、同じシーンの動画再生回数を合わせると、5,000万再生を超えます。

今でもこのシーンは「eスポーツ最大の劇的な瞬間」と(世界中で)言われています。
このシーンは、eスポーツのプレイヤーだけでなく、ゲームメーカーの設計にまで影響を与えました。

ウメハラ選手の噂はありえるか?

ウメハラ選手のWikipediaには、印象的なエピソードが掲載されています。

その精度は「小足見てから昇龍余裕でした」という噂がひとり歩きするほどだった
出典元:梅原大吾 – Wikipedia

この超人的な技術は、不可能とされています。(実際に本人が発言したのではなく、噂とのことです)

これは全くありえない話でしょうか?

人間の視知覚は、未来を予測して、作られています。ほんの一瞬だけ、未来が目に映るのです。
不思議な話ですが、記憶から「未来を作る」という機能が、動物にはあります。
現実の時間と、知覚までの時間に差があるからです。

この不快な差を埋めるために、記憶から未来を借りて、視覚情報を作っているのです。
実際には「まだ起きていない映像」が目に映るのですから、彼には見えていたのかもしれません。

敷居を下げたいメーカーの意図

ゲームメーカーは、eスポーツの人口を増やしたいと考えています。

ゲームの入力信号は、デジタルで一定です。
「筋肉を使うスポーツ」とは、少し違います。
体は年齢とともに衰えます。
eスポーツでは、先駆者や長年プレイするゲーマーが有利です。

そこでゲームメーカーは、運の要素を取り込み、間口を広げようと考えます。
実際にこの調整は、上手くいっていません。
プレイヤーと観戦者を納得させることが、できていないのです。

ラグ(入力遅延)の問題

ラグとは、プレイヤーの入力が、画面に出力されるまでの時間です。
もしラグが1秒あると、入力からキャラクターが動くまでに時間が掛かりすぎて、ゲームになりません。

ストリートファイターシリーズでは、ゲームメーカーが意図的にラグを増やしているようです。
レッドブルさんのサイトに「ラグと問題点」について、詳しく書かれています。

ゲームメーカーは(観戦者のために)ラグを増やして、攻めが有利になる調整をしているようです。

現実世界では、筋肉を動かすと、0秒で視知覚に反映されます。
これが0.5秒でも「知覚の反映が遅い」と、ストレスになります。
よって、ラグのないゲームは、気持ちよくプレイができます。

人間の体はラグを受け入れない

現実世界でも、体を動かして、脳に知覚が反映されるまでには、ラグがあります。
脳の知覚は、0秒ではありません。
感覚器から脳に電気信号が送られるのに、時間が掛かるからです。

正確に測定をすると「筋肉が動いた」という知覚が先に来ます。
その後、筋肉が動きます。手足が動く前から「動いた」と、リアルタイムのように感じるのです。
このように、脳が電気信号の遅れを調整しているのです。

視覚も同様で、未来を予測して目に映ります。
このことからも、ラグが不快と感じる理由が分かります。

アナログ入力は必要か?

前項のように、プログラムで運の要素を加えると、人間はなぜか冷めてしまいます。
やっていることは、筋肉を使うスポーツと変わらないのですが、プログラムでランダムを起こすのに抵抗があるのです。
そのように、脳がインプットされているからです。

ゲームの入力をアナログ化すれば、どうでしょうか?
前述のように、筋肉を毎回正確に動かすことができれば、ミスもスーパープレイも起こりません。
脳の信号がブレるからこそ、スーパープレイやミスが起き、試合の流れが変わるのです。
そこにランダムの要素が生まれて、試合が盛り上がります。

ゲームに「アナログの入力要素」を加えれば、技術介入度の調整ができるでしょう。
プログラムで運を起こすのと変わらないのですが、プレイヤーも観戦者も、納得しやすいはずです。
とはいえ現実的には、難しいと思います。

こう考えると、ゲームには進化の余地があります。

強すぎる選手の影響

ゲームメーカーは、運の要素を混ぜてまで、eスポーツの間口を広げようとしました。
確かにeスポーツは、先駆者が有利です。

さて、スポーツにおいて、強すぎる選手がいるのは問題でしょうか?

例えば相撲です。
相撲では、統計的に「横綱は、ほぼ負けない」となります。
だからこそ、番狂わせが盛り上がります。

また、マインドスポーツといわれる将棋も、実力に格差が出ます。
こう考えると、強すぎる選手がいるから、間口が狭いとも言えなくなります。

一方で野球は、勝率が安定しません。
運とは言いませんが、試合の流れもあります。
この「流れ」は、大会が盛り上がる要素のひとつです。

さらにサッカーは、どうでしょうか?
サッカーも、実力差が明確なスポーツです。
「弱いチームが、強いチームに勝つ」という現象が、起こりにくいスポーツです。

実力格差の人為的な調整は、eスポーツにも必要でしょうか?
それは他のスポーツと比べると、一概には言えないでしょう。

麻雀の競技は運に左右される

麻雀(マージャン)のプレイヤーは、よく「麻雀こそ世界で最も面白い競技」という表現をします。

この麻雀には、不思議なロジックがあります。
麻雀は、強い人は強いですが、運にも左右されます。
ビギナーズラックも起こります。

麻雀においての「運」は、本来人間が操作できるはずもない要素です。
しかし、なぜか実力のように錯覚します。
まるで運をコントロールしているように感じるのです。

運の操作は、実際にはありえません。
しかし人間である以上、何かしらの法則を見つけ、脳を納得させようとします。
クラスター錯覚という認知バイアスです。

天候ですら、雨乞いで操作しようと考えるのが人間です。
雨乞いでなくても、雨女・雨男という幻想を作り出します。

人間は「運を操作する」ことが、できると思い込んでしまいます。
しかし実際には不可能です。
そのためか、プログラムで運を作ることは、人間として納得できないのです。
ゲームメーカーは、大きなジレンマを抱えています。

スポーツに流れはあるか?

スポーツでは、後半に逆転劇が起こることもあります。
試合の流れを変える瞬間は、スポーツ観戦の醍醐味です。

人間の脳は、ランダムの中にカタマリを見つけて、それを流れと信じ込みます。
実際は、ランダムな結果にもカタマリは存在します。

それでは、スポーツに流れはあるのでしょうか?

1980年代の研究では、「流れはない」とされました。
しかし2012年に、覆るような研究が出ました。

「約半数の人は、流れに左右される」という研究結果です。[参考文献※4]
半数ですから「流れるに乗る人」と「流れに左右されない人」に分かれます。

チームだと流れが起きやすい

1対1のスポーツより、チーム対チームの方が、流れは起きやすくなります。
絶好調の選手がいると、チームメイト全体の成績が上昇します。[参考文献※5]

チーム戦の方が、流れが起きやすく、試合が盛り上がる可能性も高くなります。
eスポーツでも「チーム戦」という要素は、大会を盛り上げてくれるでしょう。

FPSのスーパープレイ

以下の動画は、東京ゲームショウ2017で開かれたeスポーツの大会映像です。

52分あたりから、スーパープレイが飛び出し、会場が沸きます。
まるで「流れが変わった」ように見えます。

人工知能はeスポーツで勝てるか

囲碁の写真

人工知能(AI)は、囲碁や将棋のマインドスポーツにおいて、人間に勝てるようになりました。
機械はミスをしないので、他のスポーツでも、いずれは人間に勝てるようになります。

囲碁や将棋において、人工知能は圧倒的に有利です。
プロの棋士は、相手の手を読むのに、運動に関わる脳領域を使います。
普段は使わない脳領域を使ってまで、相手に勝とうとするのです。

一方で人工知能は、計算によって、最も勝利に近い一手を打つことができます。
そこに人間の限界を感じます。

ゲームはAIが有利

ゲームにおいて、AIは人間よりも有利です。
人間と違って、24時間休まずにトレーニング(学習)できるからです。

そしてミスをしたパターンを学び、最適な選択ができるようになります。

ゲーム設計によってAIが難しくなる

GoogleのAIチームは、スタークラフトというゲームで、人間に勝つプロジェクトを進めています。
スタークラフトシリーズは、eスポーツの競技にも採用されるゲームです。
将棋やチェスと比べると、スタークラフトのルールは複雑です。

人工知能はプロゲーマーを超えるのか──DeepMindが「スタークラフト2」用ボットの開発に本腰|WIRED.jp
RTSゲーム「スタークラフト2」をプレーする人工知能(AI)ボットの開発に挑むことを発表していたDeepMind。2017年8月、彼らはゲーム開発元の協力のもと、AI開発者用のツールセットを発表した。果たして、AIがプロゲーマーを越える日は

このゲームでは、AIが不得意とする「相手の手の内を予想する」という要素があります。
といっても、人間が「手の内を予想」するのが得意かと言えば、そうではありません。

ゲームの設計にこういった「不確定な要素」を加えると、eスポーツは盛り上がるのかもしれません。
すべては「人間の実力」と思わせることが重要です。

ゲームを題材にしたマンガのオススメ

最後にeスポーツではないですが、面白いマンガがあります。
87CLOCKERS(87クロッカーズ)です。

87CLOCKERS 1 (ヤングジャンプコミックス)
  • 二ノ宮 知子
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この漫画は、オーバークロックというマニアックなテーマを扱っています。
オーバークロックは、パソコンのスピードを競います。

作者は「のだめカンタービレ」の二ノ宮 知子さんです。
二ノ宮さんの漫画は、やはり面白いです。
しかしマニアックな題材だけに、内容が面白くても、ドラマ化やアニメ化もされていません。

87クロッカーズは、eスポーツを狙って題材にしている分けではありません。
それがかえって、ストーリーを面白くしています。
ゲームの競技で争うのは、2巻以降です。
引き延ばしなどがなく、ちょうど良いスピードで完結します。(全9巻)

eスポーツで探すと出てこないマンガなので、盲点かもしれません。

まとめ

日本はeスポーツで遅れてしまいました。
しかし中国でeスポーツの視聴者が多い理由や、オーストラリアの事例を知ることで、巻き返すことが可能だと分かります。
また、中国は「SNSで発信しにくい環境」にあることが、大きな弱点だと考えられます。

確かに中国は、デジタルの環境に恵まれています。
産業の発展は、やはり環境が大きな要因です。
eスポーツの施設、コーチ(人材)、大会、その他の環境整備に掛かっています。

中国当局は、eスポーツの世界大会の開催地を、自国の産業とリンクさせる戦略もとっています。
ゲームに否定的な政策をとっていたにも関わらず、今では国が積極的に介入しています。

eスポーツを盛り上げるためには、ゲームへの偏見を取り除くことが先決です。
特にテレビメディアには、期待が持てません。

また、ゲームの男女問題は、他の文化より遅れています。
この問題に取り組むことで、欧米の主要なメディアから関心を集めることができます。

競技用のゲームを開発するメーカーは、まだまだ試すことができます。
ポイントは、運の要素を人間が納得できるように、組み込むことです。

今でも海外メディアは、「ゲームと言えば日本」と、真っ先に出てきます。
日本がeスポーツに遅れをとったからといって、ゲームのファンは、未来を悲観する必要はないと思います。

参考文献

この記事は以下の文献を参考にして、独自の解釈でまとめています。

  1. The rise of the pro-player as Australia hosts its richest computer gaming event
  2. 総務省|平成25年版 情報通信白書|放送産業のグローバル展開
  3. Insights into Sexism: Male Status and Performance Moderates Female-Directed Hostile and Amicable Behaviour.
  4. The hot hand exists in volleyball and is used for allocation decisions.
  5. Hitting Is Contagious in Baseball: Evidence from Long Hitting Streaks

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