第一印象は、私たちが想像する以上に強力です。
人間には優れた「顔認識能力」があり、一瞬で性格を判断するからです。
おそらく進化の過程で、敵や味方を判断するのに必要だったのでしょう。
しかし、強力だからこそ間違った判断が起きます。
私が外部委託を予定しているフリーランスさんと、面談したときのことです。
彼はプログラミングの知識が豊富でした。私は30分程度の会話で、非常に信頼できると判断し、契約を交わしました。
しかし、自社の営業担当者は、反応が違いました。
「彼は大丈夫なのか?」
言われてみれば、彼は外見がルーズに見えます。
しかし、素晴らしい技術力を持っています。取引は成立しました。
私が経験しように、第一印象は、信頼に関わります。
営業の方は、(過去の経験から)外見がルーズな人を警戒していました。
しかし実際は、ルーズなところもなく、頼りになる人でした。
第一印象には、法則があります。
この記事では、第一印象の心理ルールと、良い印象を与える方法を紹介します。
また、悪い印象を与える行為についても説明します。
第一印象の心理ルール
![印象を判断している女性](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/12/first-impressions5.jpg)
第一印象の心理的作用は、非常に強力です。
人間は、わずか0.1秒で、相手の顔から性格を判断します。[参考文献※1]
ここでは、様々な研究によって確認されている「第一印象の心理ルール」を説明します。
ハロー効果
ハロー効果は、有名な認知バイアスです。
「人は見た目に左右される」という、私たちにとっては、認めたくない心理効果です。
それだけに、強力です。
もし、駅までの道をたずねるなら、髭の生えた強面(こわもて)の男性を避けるでしょう。
ハロー効果が強力なのは、第一印象から得られる情報が少ないからです。
相手の中身が分からないだけに、外見から内面を作り上げ、それが正しいと信じ込んでしまいます。
第一印象は強力
第一印象は、私たちが思う以上に強力です。
(2016年の研究によると)写真であっても、その人の能力や性格を決めて付けてしまうのですから、第一印象の評価を変えるのは困難です。[参考文献※2]
この研究の参加者は、「笑顔」と「他の表情」の写真を見せられます。
一ヶ月後、実際の人物と面談をします。
面談後、一ヶ月経過しているにも関わらず、笑顔の写真だった人は「優しい」と評価されました。
さらに、ハロー効果を評価者に説明したにも関わらず、印象は操作されました。
私たちは、ハロー効果を知っていても、印象が左右されます。
事前にチェックした写真は、面談前に「前情報」として、記憶に組み込まれたのでしょう。
また、事実を伝えたとしても、「外見の第一印象が勝る」という研究も報告されています。
しかし第一印象が全てではない
第一印象が「永遠に続くか」については、疑問があります。
職場や学校生活など、頻繁に会う人は、第一印象のイメージは上書きされます。
しかし、否定的な第一印象を挽回するチャンスは、多くないかもしれません。
したがって、長期的な関係であっても、第一印象は重要です。
第一印象には個人差がある
(2017年の研究報告によると)第一印象には、個人差があります。[参考文献※3]
あなたが社交的でない場合、(あなたと同じ)社交的でない人に、好印象を与えやすくなります。
内向的な人は、社交的な人が相手だと、疲れてしまいます。
![内向的、外向的な人の第一印象](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/12/first-impressions1.jpg)
自分の性格と似た人には、好印象を受けやすくなります。
性格が合わない人にも好かれるのは、難しいことです。
類は友を呼ぶ
上記の研究は、まるで「類は友を呼ぶ」という、ことわざの通りです。
一方で私たちは、「自分にない魅力を持つ人に惹かれる」とも言います。
どちらが正しいのでしょうか?
いろいろな仮説はありますが、カップルにおいては「似たもの同士」が結ばれやすいという研究報告があります。[参考文献※4]
やはり、自分に似ている相手ほど、好印象を抱きやすいのでしょう。
真似は共感を生む
古くから、「人の真似をすると好感度が上がる」という心理テクニックがあります。
これには、科学的な根拠もあります。[参考文献※13]
例えば、相手がコーヒーを飲んだとき、自分もさりげなくコーヒーカップに手を伸ばします。
こういった動作を真似ることで、無意識に共感を得ることができます。
非言語的コミュニケーション
言語のない動物では、動作や行動がコミュニケーション手段のひとつです。
同じく人間にも、言語以外でコミュニケーションをする能力があります。
それらを「非言語的コミュニケーション」といいます。
非言語的コミュニケーションは、ほとんどの場合、男性よりも女性が優れています。
女性の方が、落ち込んでいる表情や、ちょっとした動作など、言語以外から感情を読み取るのが得意です。
信頼を得るには?
信頼を得るには、やはり会話が重要です。
前項の非言語的コミュニケーションは、「信頼の重要な要素ではない」という研究報告もあります。[参考文献※9]
情報交換の量に左右されると、研究者らは言います。
汗に注意する
ストレスによる汗のニオイが、信頼性を低くするというユニークな研究報告があります。[参考文献※19]
もし、あまりにも緊張する場面で汗をかくなら、消臭スプレーを試す価値があります。
声だけで性格を判断される
飛行機のフライト前、機長のアナウンスによって、乗客は安心を得ます。
第一印象には、声も含まれます。
そして声だけでも、性格を判断されてしまいます。[参考文献※5]
少し高めの声と、少し大きめの声は、より信頼感を生みます。
ただし、高い声の女性は、「人をこき使う」という印象を与えます。
逆に男性だと、低い声が「人を使う性格」という印象を与えます。
幸せな気分の時は見た目を重視する
しあわせな気分になっているとき、人間は見た目に惑わされます。
気分が良いときは、「相手を慎重に判断する」というモチベーションが減るからです。
ビジネスでは、過剰にもてなすと、逆効果になる恐れがあります。
中身より、見た目で判断される可能性があるからです。
目を見ることについて
![こちらを見ている女性](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/12/first-impressions8.jpg)
「相手の目を見る」という行為は、シーンによって効果が違います。
相手の目を見ると、通常は好意的なサインとなります。[※]
- セントルイス、ウェブスター大学の心理学者モニカ・ムーア博士の報告による[参考文献※6]
しかし、討論のように「意見が違う場」では、敵対のサインとなります。[※]
- ハーバード大学のジュリア博士らの報告による[参考文献※7]
これは相手が親であっても、「反抗の目」という形で、敵対のサインを作ります。
討論に限らず、「意見が違う場合」に起こります。
携帯電話を見ると最悪になる
携帯電話を見ることは、いかなる場であっても、悪い印象を与えます。
コミュニケーションの放棄を意味します。
女性のメイクについて
女性はメイクが濃いと、魅力的な印象が少なくなります。
しかし、スッピンだと、信頼性に欠けてしまいます。
これは、2011年プロスワン(科学雑誌)に掲載された調査結果です。[参考文献※12]
また、スッピンとメイクをした女性を比べると、メイクをした方が「能力がありそう」という印象を与えます。
面接などでは、ある程度のメイクが有利になるでしょう。
笑顔が好まれる
私たちが思うように、やはり笑顔は、友好的なサインです。
人間の記憶と視覚は、笑顔を好みます。[参考文献※16]
他人を助け、役に立とうとする行為が、人間にとって大切ということを意味します。
男性は幼い顔の女性を好む
著名な心理学者の研究によると、男性は「幼い顔の女性」をパートナーに選びやすい傾向があります。[参考文献※17]
さらに「幼い顔」の人は、親切にされる傾向があります。
しかし「能力が高いと思われにくい」というデメリットもあります。
また、過去の記憶に「似ている人物」がいれば、性格も似ているだろうと判断します。
好印象を与える方法
![](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/12/first-impressions3.jpg)
好印象を与える方法には、いくつかのパターンがあります。
ただし、相手やシーンによって異なります。
また、どんな外見に魅力を感じるかは、男女間でも異なります。
それらをシーンごとに説明します。
女性は男性の笑顔が一番ではない
私たちが想像するように、男性は「笑顔の女性」を第一印象で好みます。
しかし、女性側は異なります。
女性は「笑顔の男性」よりも、「自信を持つ男性」を魅力的だと認識します。
これらは、コロンビア大学ジェシカ教授らの研究報告で判明しました。[参考文献※8]
不思議なことに「どんな男性を好みますか」という質問には、「笑顔の男性」が魅力的だと答えています。
しかし実際は、笑顔よりも「勝ち誇った表情の男性」が選ばれました。
「笑顔のプロフィール写真」を載せている男性は、それがベストではないかもしれません。
ただし、この研究は、西洋文化に偏っている可能性もあります。
反応の良さが魅力になる
会話において「反応の良さ」は、非常に魅力的です。[参考文献※10]
「無反応」であってはいけません。
都度、反応を返してあげるのが「良い印象」を与えるコツです。
頻繁にうなずく人は好印象
最近の研究によって、頻繁にうなずく人は、好印象を与えることが分かっています。[参考文献※11]
前項の「反応の良さ」と同じです。
メガネは知的に見える
メガネは知的な印象を与えます。[参考文献※14]
特にフレームが厚いと、より知的に見えます。
また、この研究調査では、相手の目を見ることが、知的なイメージを与えるとのことです。
ブランドの服は地位が高く見える
ブランドの服を身につけると、地位が高く、裕福に見えます。[参考文献※15]
もちろん相手も、そのブランドを知っている必要があります。
この研究調査では、信頼性や優しさ、魅力などには、影響がないとのことです。
高いブランドの服を身につけても、信頼性が得られることはないでしょう。
温かいほど親しみを感じる
私たちは「温かい人」という表現を使います。
他の国であっても、「温かい」「冷たい」は、人の性格に結びついています。
(例:warm personality=温かい人柄)
ホットコーヒーを渡すだけで、親近感を感じるというユニークな研究報告があります。[参考文献※21]
この実験では、ホットコーヒーの温もりが、初対面の人を「優しい」「親近感がある」と評価することに繋がりました。
また、別の研究では、「手の温もりが幸福感を得る」という報告もあります。(手には神経が集中しています)
これらの研究からすると、「握手」というのは合理的です。
取ってのない「湯のみ」も、印象を変えるかもしれません。
部屋の温度も、暖かくすると良いでしょう。
仕事の場合
仕事においては、まず身なりです。
場所にあった服装をします。
ビジネスでのポイントは、イメージとかけ離れないことです。
エンジニアは、スーツである必要はありません。
しかしエンジニアであっても、パーティーの場ならスーツが必要です。
「職種」「場所」のイメージから、離れないようにします。
また、冒頭の事例にもありますが、営業職から見れば、営業に近い「身なり」や「行動」が、好印象を与えます。
聴衆に合わせる
講演などの場では、聴衆にあったイメージに近づけます。
聴衆が銀行員であれば、堅いイメージを作る必要があります。
さらに講演であれば、ノートを見すぎないようにします。
話をよく聞く
営業職の方で「話をあまりに先取りする」という人がいます。
私が詳細を話す前から、先に中身を話そうとします。
どうしても、「話を聞かない人」という印象を受けます。
自信を見せる
ビジネスの場では、自信のない言動は、イメージを下げます。
といっても、これは大きな要因ではありません。
悪い印象を与えてしまう行為
![写真で人を選ぶ女性](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/12/first-impressions7.jpg)
前述までは、「良い印象」を作るルールを紹介しました。
ここでは、相手に「悪い印象」を与える行為を紹介します。
前述のように、マイナスイメージの払拭は、困難になります。
なるべく第一印象で、悪いイメージを作らないようにしたいところです。
もしマイナスイメージ消すには、長期的な関係によって、相手の役に立つことです。
相手の記憶を上書きすることで、マイナスイメージを払拭します。
先に否定して褒める
「(あなたには)できないと思ったけど、素晴らしい成果です!」
このように否定をしながら褒めると、相手に不快感を与えます。
言った本人は、相手を褒めていると勘違いをしています。
(自分の正直さをアピールしたいのでしょう)
私の周りにも、多く聞きます。
つまり、ほとんどの人は、不快感を与えていることに気づいていません。
「できるとは思っていなかった」「最初はダメだと思っていたけど」なんて言うべきではありません。
「え? そんなふうに思っていたの? ヒドイ」と、裏切られた気分になります。
自分について話さない
相手の話を聞いてあげることは、コミュニケーションにおいて重要です。
しかし「自分について話さず」相手を知ろうとすると、悪い印象を与えます。[参考文献※18]
内向的な人は、自分の話をするのが苦手です。
あまりにも自己を隠すと、打ち解けるのが難しくなります。
最初から自分の秘密を話す
初対面で秘密を話すと、拒否反応を起こされます。[参考文献※18]
例えば親族のネガティブな情報や、自らの不倫関係などを話す行為です。
秘密を話すことは、親しい仲でのみ、関係が強化されます。
隠れた自慢
「○○のインナー(大衆ブランド)を買ってみたけど、品質が悪くて一度しか着ていない」
事実であっても、隠れた自慢は、悪い印象を与えます。
謙虚に含まれる自慢も同じです。
「今日は髪の毛がボサボサで、街を歩きたくない」という言葉をSNSでつぶやき、新作のブランド品を身につけた自撮りを見せるような行為もです。
最後に
![](https://no-mark.jp/wp-content/uploads/2017/12/first-impressions2.jpg)
注意すべきは、あなたを騙そうとする詐欺師が、これらを熟知しているということです。
「会ってみれば分かる」というのは、第一印象に騙される可能性もあります。
人間は「外見」や「言葉」から、相手の性格を判断しようとします。
その情報は「意識できない領域」に入り、気づかないうちに相手を評価します。
やはり、第一印象は重要です。
しっかりと計画を立てれば、相手に間違ったイメージを与えないようにできます。
参考文献
この記事は以下の文献を参考にして、独自の解釈でまとめています。
- Making Up Your Mind After a 100-Ms Exposure to a Face
- Impressions Based on a Portrait Predict, 1-Month Later, Impressions Following a Live Interaction
- Knowing versus liking: Separating normative knowledge from social desirability in first impressions of personality.
- Cognitive processes underlying human mate choice: The relationship between self-perception and mate preference in Western society
- The Secret to Making a Good First Impression
- Monica Moore | Webster University
- In the Eye of the Beholder
- Smiling men less attractive to women: study
- Developing Latent Semantic Similarity in Initial, Unstructured Interactions
- When does responsiveness pique sexual interest? Attachment and sexual desire in initial acquaintanceships.
- 頷きと首振りが顔の主観的印象に及ぼす影響
- Cosmetics as a Feature of the Extended Human Phenotype: Modulation of the Perception of Biologically Important Facial Signals
- Capuchin monkeys display affiliation towards humans who imitate them
- Appearing smart: the impression management of intelligence, person perception accuracy, and behavior in social interaction.
- Social benefits of luxury brands as costly signals of wealth and status
- The Vividness of the Happy Face
- First Impressions From Faces.
- Self-disclosure and liking: a meta-analytic review.
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- New paper provides evidence-backed insights on how not to come across as a jerk
- Experiencing Physical Warmth Promotes Interpersonal Warmth
- First impressions count