【第5回】まとめ:SELは「一生モノ」の力。自律への歩みを支えるために

不登校支援の「ゴール」を再定義する

スガヤ: 改めてスミレさんの論文をレビューするなかで、ボクの中で不登校支援のイメージがガラリと変わりました。これまでは「”学校”に戻すか」あるいは「”別の居場所”を探すか」という、いわば「環境選び(外側)」のことばかり考えていました。 でも、スミレさんの論文を読み解いていくと、本当に大切なのは「子ども自身の”内側”にある力をどう育むか」つまり、自分自身の感情を扱い、他者と緩やかにつながるためのSEL(社会性と情動の学習)という感覚が大事だったのだと学びました。

スミレ: そう言っていただけて、本当に嬉しいです。私の論文の結びでも述べましたが、SELは単に学校生活を円滑にするための道具ではありません。 環境が変化したり、担任の先生が変わったり、あるいは学校を卒業して社会に出たりしたとき、そこには必ずしも自分に最適化された場が用意されているとは限りません 。そんなとき、「自分の置かれた環境で、自ら他者と関係を築き、居場所を構築していく力」こそが、その子の自立を支える一生モノの財産になるのだと考えています 。


振り返り:私たちが学んだ「安心と自律」のプロセス

スガヤ: この連載で僕らが旅してきたステップを、改めて整理してみましょう。

  • 第1回:居場所は単なる「場所」ではなく「関係」である。
  • 第2回:目指すべきは「親友(ナイショの関係)」ではなく、緩やかな「シェアのつながり」である。
  • 第3回:家庭を「安全な基地」にするため、親は「パスの権利」を認め、「小さな自己決定」を支える。
  • 第4回:集団の場では、大人が「失敗」をさらけ出し、「真似(協働)」を推奨して、努力のプロセスを褒める。

こうして見ると、SELというのは特別な教育プログラムというより、子どもの「ありのまま」を認めつつ、主体性を少しずつ引き出していく「関わりの作法」そのものですね。

スミレ: そうとも言えるかもしれません。なによりSELの土台には、大人が子どものニーズに確実に応えることで生まれる「安全な基地」があります 。 この基地があるからこそ、子どもは失敗を恐れずに新しいことに挑戦したり、他者の工夫に目を向けたり(他者への気づき)できるようになります 。そして、試行錯誤の結果を「自分の責任ある意思決定」として積み重ねることで、自分自身の人生を運転していく自信を育んでいくのです 。


大人自身も「学び、ケアする」ことの大切さ

スガヤ: ただ、これを実践する親や支援者の側も、実はかなりパワーが必要ですよね。子どもの沈黙を「パス」として認めたり、あえて失敗して見せたり。正直、親自身の心の余裕がないと難しいときもあります。というか親自身も、リアルタイムで人間関係に悩んでいたりして……(「すべての悩みは人間関係」とも)

スミレ: その通りですよね。基本資料の中でも、教育者がSELを実践する際、自分自身の感情的な経験に注意を払い、サポートを求めることの重要性が強調されています 。 不穏な話を聞いたり、思い通りにいかない状況に直面したりすることは、誰にとってもストレスです 。私たち大人が「完璧な指導者」になろうとして疲れ果ててしまっては、子どもにとっての「安全な基地」であり続けることはできません。まずは大人自身が、信頼できる仲間と不安を共有したり、自分のケアを大切にしたりすることが、巡り巡って子どもへの良質なサポートにつながるのだと思います 。


スガヤのふせん:まずは「小さな一歩」から

スミレ氏との対談を終えて、今、ボクが感じているのは「人間関係、焦らなくて良い」という安堵感です(ほら、やっぱり笑♪)。 不登校という状況に直面すると、ボクら親はどうしても「早く正解(学校復帰など)に辿り着かなければ」と最短距離を探してしまいます。しかし、スミレさんが教えてくれたのは、「今日、子どもが自分で選んだおやつを食べられたこと」や「友達の真似をしてゲームを攻略できたこと」といった、目立たない小さな変化の中にこそ、将来の自立に向けた根源的な芽吹きがあるということです。

NO-MARKでは、こうしたSELの視点を取り入れた「居場所選び」や、ご家庭での具体的な関わり方のご相談を受け付けています。

  • 「うちの子、まだ誰とも関われないけれど、どう進めばいい?」
  • 「シェアのつながりから始められる場所って、どこにあるの?」
  • 「親として、これ以上どう待てばいいのか苦しい」

そんなときは、どうぞ一人で抱え込まずに、気軽に声をかけてください。スミレさんの理論を実践に落とし込むお手伝いを、ボクらも共にさせていただきます。

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■ 最後に:スミレさんからのメッセージ

スミレ: 関係づくりの力は、一つの単元や短い期間で身につくものではありません 。日々の生活や遊び、学びの中で、ゆっくりと、螺旋を描くように育まれていくものです 。 不登校という期間を、「止まっている時間」ではなく、「自分と他者を理解し、自分の居場所を自分の手で作るための、贅沢な練習時間だと捉え直してみてください。そのため本を読んだり、映画を観るのも良いと思います。 お子さんが自らのペースで、自分なりの「ストロー飛行機」を飛ばせる日が来ることを、私もこれから始まる「実践」の現場から応援し続けています(きっとどこかで、お会いしましょう)。

スガヤ: スミレさん、本当にありがとうございました。 「不登校の心を科学する」。この旅は、ここからまた新しく始まります。


※本連載は、スミレさん卒業論文『社会性と情動の学習 (SEL)の理論と実践を応用した学級の中での関係づくり』を基に、NO-MARK編集部が再構成・編集したものです。

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