不登校の子どもは学校に行けなくなる前に、感情や表情、行動、身体症状などで、自分のつらさやストレスを発信していることを紹介しました。具体的には、腹痛、頭痛、嘔吐、下痢、朝起きられない、といった身体の不調として現れることが多く、小児科や内科を受診しても「異常なし」と言われるケースがほとんどです。
また、学校に行かなくなって家でゲーム三昧の日々を送っているように見えても、決して心穏やかではありません。一見楽しそうにしていても、子どもたちの心のなかには将来に対する漠然とした不安が24時間湧き続けており、ゲームでは解消できない焦燥感に苦しんでいます。彼らは「学校は休んでいても心は休ませられていない」状態にあるのです。
基本的な考え方としては、「停滞させないこと」が何より重要です。不登校の子どもの状態は一気にはよくなりませんし、右肩上がりによくなり続けることもありません。ちょっとよくなったと思ったらその状態が続き、しばらくしてまたちょっとよくなってはまたその状態が続くというように、「らせん階段」状に改善していきます。もちろん時には低下・悪化してしまうこともありますが、多くの子どもたちはゆっくりと、ですが着実に、階段を上がっていきます。
学校に通っている状態であれば、授業が新しい単元に入る、行事があるなどの外的で強制的な働きかけがあるため、自然と次の段階に上がっていくものです。しかし、不登校の子どもたちの場合はそのような働きかけがありません。現代ではインターネット環境が整い、ゲームで時間を楽に潰せるようになったため、子どもたちが自分自身と向き合う機会が失われ、ただ月日だけが過ぎてしまう傾向にあります。 「本人の自主性を尊重して見守る」という従来のアプローチは、心身の回復期においてはかえって子どもをゲームの「沼」に留め、回復のチャンスを逃すことになりかねません。私はこれを「停滞」と呼んでいます。
このように同じ状態が続くことは子どもの健康や成長にとってよくありませんし、決して状態が上向くことはありません。周りの大人もイライラしてしまいます。そのため、周囲の大人は、子どもの状態を上向かせるための働きかけを行う必要があります。 それは無理に学校に連れていくことではなく、行動範囲、行動パターン、人間関係を広げることです。
例えば、ある家庭では思い切ってWi-Fiを解約したことで、子どもがWi-Fiのあるコンビニやファミレスに通い始め、結果として「家の外に出る」という大きな一歩を踏み出しました。コンビニに通うために身なりを気にしてお風呂に入るようになった事例もあります。また、子どもが「ゲーミングパソコンが欲しい」と言った際に、単に買い与えるのではなく、「教室に通って一緒に組み立てること」を条件にし、外出と他者との関わりのきっかけを作ったケースもあります。
子どもの階段の一段一段は大人が思っているよりも小さいものです。コンビニに行く、家族と決まった時間に食事をとる、適職診断を受けて将来のイメージを持つといった、子どもの立場に立った小さな一段一段をゆっくりでも上がっていく働きかけこそが、「停滞させない」ということにつながるのです。
不登校支援の目的は学校復帰ではない
これまでの章では不登校の現状や子どもの気持ち、家族の心理について論じてきました。この章からは、家庭における具体的な関わり方について話していきます。
さて、不登校支援の目的やゴールは何でしょうか。かつては学校に戻ることが唯一の目的とされていましたが、2019年の文部科学省の通知では、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があると明示されました。
しかし、ここで注意が必要なのは、「無理して学校に行かなくてよい」という言葉が、単なる「責任回避」や「現状の肯定」になってしまっていないかという点です。社会的自立とは、将来、精神的にも経済的にも自立し、豊かな人生を送れるようになることです。そのためには、やはり集団の中での摩擦や葛藤を経験し、社会性を身につける場が必要です。大切なのは、元の学校に戻ることにこだわらなくても、適応指導教室やフリースクールなど「学校の代わりになる場所」を見つけ、そこで他者と関わり、将来の「メシのタネ(職業観)」を見つけるような、子どもの未来にとって意味のある支援ができるかということなのです。
受容・共感は難しい
不登校になる子どもの多くは、学校でさまざまなストレスにさらされています。不登校の初期には、腹痛、頭痛、嘔吐、朝起きられないといった身体症状が現れることが多く、これは心が傷ついたことを言葉で表現できないためのSOSです。
まずはその思いを受け止めることが大切です。「受容と共感」という言葉がよく使われますが、これは単に「学校に行きたくないんだね」とオウム返しにすることではありません。受容し、共感すべきなのは、子どもが「学校に行きたくない」という思いを抱くに至った過程のすべてです。
しかし、思春期の子どもが自分のつらさを素直に話してくれるわけではなく、この受容と共感は容易ではありません。特に、元気になってきてもゲーム三昧で昼夜逆転している姿を見ると、親としては「見守るだけでいいのか?」と不安や怒りが湧いてくるものです。 重要なのは時期を見極めることです。身体症状が出ている初期は休養が必要ですが、子どもが「暇だ」「ゲームがしたい」と言い出したら、それはエネルギーが戻ってきた「回復期」のサインです。この時期になれば、ただ見守るのではなく、不登校の原因を探り、次の一歩を促す関わりが必要になります。
遅くまで起きている理由を知る
不登校の支援において課題となるのが昼夜逆転です。しかし、不登校の子どもが遅くまで起きているのには理由があります。 彼らの多くは「学校に戻りたいけれど戻る方法が分からない」という強烈な焦燥感と不安を抱えています。その辛さを紛らわせるためにゲームに没頭するのです。ゲームの世界は刺激的で、「沼る」といわれるように時間の感覚を失わせます。ある子どもは「休んで3ヶ月経つ」と言われて「まだ1週間くらいの感覚だ」と驚いたというエピソードがあります。 不安を打ち消すために夜通しゲームをしている側面があるため、それをむやみに奪い取ってしまうのは、メンタルヘルスにとっても危険な場合があります。
断ゲームではなく節ゲーム(と活用の工夫)
起きている間ずっとゲームをしていてもよいわけではありませんが、一気にゼロにするのではなく、時間を少しずつ減らしていく、あるいは生活の中での優先順位を変えるアプローチを目指します。 例えば、「ゲームをやめる」のではなく、「やるべきこと(学校や代替機関への通学)をやったら、堂々とゲームをしていい」という権利と義務の順序を教えることです。また、場合によっては「Wi-Fiを切断する」といった荒療治が、結果として子どもを外(Wi-Fiのあるコンビニなど)へ連れ出し、身なりを整えるきっかけになった事例もあります。
ゲームを「共通言語」として対話する
お勧めしているのは、子どもがやっているゲームについて話をすることです。実は、好むゲームの種類によって、その子の性格や特性が見えてきます。 例えば、『マインクラフト』や育成ゲームを好む子は「こだわりが強い農耕民族型」で、コツコツ作業を好み、競争をあまり好みません。一方、『フォートナイト』や『Apex』などのシューティングゲームを好む子は「狩猟民族型」で、競争心が強く、ランキングや勝敗にこだわります。
「どんなゲームやってるの?」「ランクはどれくらい?」と聞くことは、閉ざされた心を開く「共通言語」になります。話し相手が家族しかいない状況において、親が自分の世界(ゲーム)に興味を持って話を聞いてくれることは、子どもにとって大きな喜びとなり、そこから信頼関係を再構築する糸口になるのです。
1. こだわりの強い「農耕民族型」
【好きなゲームの傾向】
• コツコツと作業を行い、アイテムを集めたり育てたりするゲームを好みます。
• 代表例:『マインクラフト』、『あつまれ どうぶつの森』、『大乱闘スマッシュブラザーズ』、『原神』、育成ゲームや推し活系(『第五人格』『#コンパス』など)。
• 競争心が希薄で、他人と競うよりも収集や自己満足を重視します。
【特性】
• 真面目で、同じ作業を長時間続けることを厭いません。
• 明確なルールがあることを好み、物事の細部にこだわります。
• 「過集中」になる傾向があり、周りが見えなくなることがあります。
【具体的な付き合い方・勉強法】
• 知識のコレクションを褒める: 自分が得た知識を「自慢したい」と思っているため、「よくそんなこと知ってるね!」と、知識を収集(コレクト)したこと自体を評価すると喜びます。
• ルーティン化する: 切り替えが苦手なため、スケジュールを決めて壁に貼るなどし、勉強とゲームの時間を明確に区切る訓練を根気よく行います。
• 手取り足取り教えない: 自分で解説を読んで解決することを好むため、「何も教えてないのに解けたのすごいね!」といった褒め方が有効です。
• 得意科目: ルールが明確な数学が得意な傾向があります。逆に、「なぜそうなるのか」が曖昧な英語や、答えのない文章問題などを嫌がることがあります。
2. 興味が移り変わる「狩猟民族型」
【好きなゲームの傾向】
• 銃で敵を倒し、順位を競うバトルロイヤル系のゲームを好みます。
• 代表例:『フォートナイト』、『エーペックスレジェンズ』、『ヴァロラント』、『PUBG』など。
• 「野良」と呼ばれる、その場で出会った見知らぬ人とチームを組む緊張感のある遊び方を好む子もいます。
【特性】
• プライドが高く、競争心が強いです。「自分は特別な人間だ(今の不登校の姿は仮の姿だ)」と思っていることがあります。
• 単純明快な刺激を求めますが、持続力がなく、飽きっぽい傾向があります。
• プレイ中に暴言を吐くことがありますが、これは勝負にこだわるあまり興奮しているためです。
【具体的な付き合い方・勉強法】
• プライドをくすぐる: 「惜しい! ここさえ合っていれば全問正解だったのに」といったように、本人の能力を認めつつ修正を促すと乗ってきます。
• 短時間集中法(ポモドーロ・テクニック): 長時間の作業が苦手なため、25分勉強して5分休むというセットを繰り返す方法が効果的です。
• ワンクッション置く: 「疲れた」「分からない」と甘えてきたときは、少し雑談を挟むなどして気分転換させると、切り替えが早いためすぐに戻れます。
• 常に新しい目標を: 同じことの繰り返しを嫌うため、次々と新しい課題や目標を与える必要があります。
3. 納得しないと進めない「問題解決型」
【好きなゲームの傾向】
• 農耕民族型と似ていますが、ゴールすることよりも「謎を解く」「裏側の仕組みを理解する」ことに没頭します。
• 代表例:『ゼルダの伝説』(謎解き)、『ポケットモンスター』(図鑑完成より繁殖や個体値厳選など)、『カーバル・スペース・プログラム』(宇宙開発シミュレーション)。
【特性】
• クリエイターの意図を読み取ることや、自分が納得するまで追求することを好みます。
• 周囲の流行や友人の意見に流されにくい長所があります。
• 大人の指示に対して「なぜ?」と理屈で納得したがります。
【具体的な付き合い方・勉強法】
• 徹底的に議論する: 頭ごなしに「こうしなさい」「公式を覚えなさい」と言うのは逆効果です。「なぜこのプランが良いのか」「なぜこの公式になるのか」を論理的に話し合い、本人が納得するまで付き合う必要があります。
• 選択肢を与える: 将来の進路なども、大人が勝手に誘導せず、本人に調べさせ、自分で決めさせることが重要です。
• 別解を示す: 一つのやり方で納得しない場合、別の解き方や視点を提示してあげると伸びます。
タイプの見極めにおける注意点
• メインのゲームを見る: いろいろなゲームを並行して遊んでいても、数ヶ月以上続けている「メインのゲーム」で判断してください。狩猟民族型の子が一時的に『マインクラフト』をやっても、すぐに飽きて戦闘ゲームに戻ることがあります。
• 「誰と遊んでいるか」を聞く: 例えば『フォートナイト』(狩猟型ゲーム)をやっていても、ランキングを気にせず「昔からのリアルな友達」と固定メンバーで遊んでいる場合は、役割分担や協力を重視する「農耕民族型」である可能性があります。
親がこれらのゲームについて「共通言語」として会話できるようになると、子どもは心を開きやすくなり、そこから信頼関係を再構築するきっかけになります。
【外出の工夫と決定権:退屈と物欲を行動に変える】
まずは子どもにとって魅力的な場所を提案することが大切です。病院や教育支援センターなどはハードルが高いため、子どもの関心に合わせたイベントなどを選ぶのがスムーズです。 特に重要なタイミングは、子どもが「暇だ」「つまらない」と言い出したときです。これは回復期のサインであり、外出を促す絶好のチャンスです。
この際、単に場所を提案するだけでなく、子どもの「物欲」や「興味」をテコにするのが効果的です。 例えば、ある中学生が「20万円のゲーミングパソコンが欲しい」と言った際、親が単に買い与えるのではなく、「教室(支援センター)に来て、自分でパーツから組み立てるならいいよ」と条件を出しました。その結果、子どもはパソコン欲しさに外出するようになり、組み立ての過程で支援者との人間関係も構築されました。 また、適職診断などを活用し、例えば美容やものづくりなど、本人の性格に向いている職業の現場(デパートの美容部員の講習や職業訓練校など)を見学に行かせることも、「自分の未来を見る」という強い動機づけになり、スムーズな外出につながります。
最も重要なのは、子どもに決定権(選択肢)を与えることです。 親が勝手に決めるのではなく、「スマホもゲームもなしでこのまま家にいるか、学校の代わりになる場所に通って思う存分ゲームをするか、どっちがいい?」といった究極の二択を提示し、本人に選ばせてください。自分で選んだという意識と、外出するための「言い訳(学校の代わりにここに通っているという大義名分)」を持たせることが、同級生や近所の目に怯える子どもの背中を押します。
【居心地よすぎてはいけない:「困り感」が人を動かす】
子どもを外に連れ出そうとするとき、家庭環境が障害となる場合があります。子どもを甘やかしすぎて家庭が居心地よすぎると、外に出る動機が失われてしまいます。「子どもが上、親が下」の状態になり、親が御用聞きになってはいけません。
家庭内には意図的に「困り感(こまりかん)」をつくる必要があります。人は困らなければ現状を変えようとはしません。 究極の方法として「Wi-Fiを解約する」という荒療治もあります。実際にWi-Fiを切断されたある家庭の子どもは、Wi-Fi環境を求めて近所のコンビニやファミレスに通うようになりました。外出するために身なりを気にしてお風呂に入るようになり、外の世界(部活帰りの同級生など)を見ることで「自分はこのままでいいのか」と気づくきっかけになった事例があります。
また、Wi-Fi解約まで踏み切れない場合でも、たった一つの「家訓(ルール)」を徹底させるだけで効果があります。例えば「夕食は19時から1時間、家族全員で食べる。遅れたら片付ける」と決め、それを親が死守します。自分のペースで食事ができないという「不自由さ」を経験させることが、他人に合わせる訓練となり、社会復帰へのリハビリになります。
さらに、ゲームのサブスクリプション費用やお小遣いは、家事手伝いやアルバイト(支援教室でのクッキー焼きなど)で稼がせることも有効です。「働かざる者食うべからず」ならぬ「義務を果たさなければ権利(ゲーム)は主張できない」ことを教え、家の中ではやりたいことが十分にはできないという多少の不自由さを感じることが、子どもを外の世界へ向かわせる原動力となります。
無目的な散歩は子どもにとって面白くありません。近場ではクラスメイトの親などに出くわすリスクもあり、バスや電車などの逃げ場がない移動手段も避けた方がよい場合があります。可能であれば車での移動が安心です。
最も重要なのは、子どもに決定権を与えることです。親が勝手に決めるのではなく、「〇〇と××、どこに行く?」と複数の選択肢を提示し、本人に選ばせてください。自分で選んだという意識が、当日行動できる可能性を高めます。
居心地よすぎてはいけない
子どもを外に連れ出そうとするとき、家庭環境が障害となる場合があります。子どもを甘やかしすぎて家庭が居心地よすぎると、外に出る動機が失われてしまいます。「子どもが上、親が下」の状態になり、親が御用聞きになってはいけません。
子どもができることは本人にやってもらいましょう。食事の支度や片付け、自室の掃除など、発達段階に合わせて役割を持たせることが大切です。家庭が安心できる「安全基地」でありながら、同時に「家の中ではやりたいことが十分にはできない」という多少の不自由さを感じることが、子どもを外の世界へ向かわせる原動力となります。
「諦める力」も必要
不登校の子どもに「諦める力」が必要な理由は、社会に出たときに直面する「理不尽さ」や「思い通りにならない現実」に適応し、精神的・経済的に自立した大人になるためです。
ソースに基づき、具体的な理由は以下の4点に集約されます。
1. 将来の挫折を防ぐため
人生には、どんなに努力しても手の届かない学校、勝てない試合、振り向いてくれない相手などが存在します。子どものうちに「どう諦めるのか」「AがダメならBという選択がある」という思考の切り替えを学ばずに育つと、大人になってから必ず挫折し、立ち直れなくなるリスクがあります。 自分のわがままは通らないのだ、ということを戦略的に教えることは、子どもを守るための大切な教育です。
2. 「無気力」からの脱却と自立心の育成
何不自由なく快適に過ごせる環境(著者はこれを「天国の世界」と表現しています)では、人間は「頑張らなければ手に入らないもの」がないため、無欲・無気力になります。 不登校の子どもが、家でゲーム三昧の生活を送り、親に衣食住を保証されている状態は、まさにこの「快適すぎる環境」です。このままでは、「一生働かないで親の資産で食べていく」という将来(8050問題)につながりかねません。 今の快適な生活(いつまでもぬくぬくとゲームができる環境)を「諦めさせる」ことで、初めて子どもに「自分で稼がないと生きていけない」「家から出て自立しなければならない」という現実的な欲求や危機感が芽生えます。
3. 社会の「理不尽さ」への耐性をつけるため
社会に出れば、自分の思い通りにならないことや理不尽なことばかりです。親が家庭内で「理不尽な存在」となり、子どもにその理不尽さを経験させることは、自立にとって非常に重要です。 例えば、自然界の動物が子離れの時期に子どもを突き放すように、人間の子どもにも「親から離れなければ生きていけない」と悟らせる過程が必要です。親が子どもの要求(ゲームやスマホなど)を無条件に聞き入れる「御用聞き」になってしまうと、子どもはこの耐性を身につけることができません。
4. 「権利と義務」の関係を理解させるため
「諦める力」とは、自分の都合を優先することを諦め、他者の都合やルールに合わせる力でもあります。 例えば、「夕食は家族全員で19時から1時間以内に食べる」という家訓(ルール)を作ったとします。子どもは自分のゲームを中断して他人の時間に合わせなければならず、最初は反発しますが、次第に「仕方がない」と腹に収めるようになります。 また、「義務(やるべきこと)を果たさなければ、権利(ゲームやスマホ)は主張できない」と教えることで、社会の基本的なルールを家庭内で学ぶことができます。
このように、著者の守矢氏は「諦める力」をネガティブなものではなく、**「自分の思い通りにならない現実を受け入れ、次の行動(自立)に向かうための適応力」**として位置づけています。
家庭内で不登校の子どもに「諦める力(自分の思い通りにならない現実を受け入れる力)」を育むための具体的な家訓(ルール)の例を紹介します。
著者の守矢氏は、家庭を「社会の最小単位」と捉え、あえて子どもに「不自由さ」や「困り感」を与えることで、社会への適応力を養うべきだと提唱しています。
1. 「夕食は全員で決まった時間に食べる」
最も導入しやすく、かつ効果的な例として挙げられているのが食事のルールの徹底です。
• 具体的なルール: 「夕食は夜7時から8時の1時間。家族全員で食卓で食べる。時間が過ぎたら片付ける」と決め、それを親が絶対遵守します。
• 狙いと効果: 不登校の子どもは自分の好きな時間に起き、ゲームの合間に食事をとるなど、すべて「自分の都合」で動いています。しかし、このルールを導入すると、ゲームが良いところであっても中断して合わせなければならず、遅れれば食事がなくなります。 最初は反発しますが、空腹には勝てず、次第に「親(他人)の時間に合わせなければならない」という現実を「仕方がない」と受け入れる(諦める)ようになります。これにより、昼夜逆転が改善するケースもあります。
2. 「18歳(または20歳)になったら家賃を払う」
将来への危機感を持たせ、自立を促すためのルールです。
• 具体的なルール: 「成人したら家を出ていくか、家にいるなら家賃を入れること」を宣言します。
• 狙いと効果: 何もしなくても衣食住が保証され、ゲームができる環境は「天国」であり、そこにいる限り子どもは無欲・無気力になります。 「親の家だから親のルールに従う」「タダで住めるわけではない」という理不尽さを突きつけることで、現状の快適な生活を諦めさせ、「働かざるを得ない(外に出ざるを得ない)」状況を作ります。
3. 「ゲーム代・サブスク代は自分で稼ぐ」
権利と義務のバランスを教えるためのルールです。
• 具体的なルール: 「スマホ代やゲームの課金、動画サイトのサブスクリプション費用などは親は払わない。自分でアルバイトなどをして稼いで払うこと」とします。
• 実践例: 外に出られない子に対して、著者は「支援教室でクッキーを焼くアルバイト(時給1200円)」を提案し、稼がせました。これにより「働いてお金を得る」という社会の基本を体験させ、親に依存する生活からの脱却を促します。
4. 「Wi-Fiを解約する」(究極のルール)
ゲーム依存が深刻で、家族の生活に支障が出る場合の荒療治です。
• 具体的なルール: 制限やフィルタリングではなく、物理的に家のインターネット回線を解約します。「あなたのせいで家族もネットが使えず困るが、心配だから解約する」と宣言します。
• 狙いと効果: 家の中を「退屈で不便な場所」にします。Wi-Fiを求めてコンビニやファミレスに行くようになれば、結果として「外出」ができ、身なりを整えるようになり、外の世界(社会)を意識するきっかけになります。
運用時のポイント
これらの家訓を運用する際は、以下の点が重要であると述べられています。
• 親がブレないこと: 親自身も不便になるかもしれませんが(例:Wi-Fi解約や決まった時間の食事)、親がルールを守らなければ子どもも従いません。「うちはうちのルールだ」と毅然とした態度で壁になることが必要です。
• 「困り感」を与える: 人は困らなければ変わりません。家の中を快適にしすぎず、適度なストレス(不自由さ)を与えることが、外の世界へ向かうエネルギーになります
