【Vol.1】「教室に入るのが怖い」あなたへ。 五月雨登校だった私が見つけた、先生や保健室と「ゆるくつながる」方法

短期連載:学校との距離感
Author: スミレ(教育学部4年)

これまで「不登校の予兆/サイン」「回復」「原因」などでは、子どもの心と体に現れる小さなサインについてご紹介してきました。

今回からは少し視点を変えて、「学校に戻りたい気持ちはあるけれど、身体が動かない」「学校ともう少しだけ、うまく付き合いたい」と願う方へ向けて、私自身の経験と、現在学んでいる教育学の視点を交えた全3回の短期連載をお届けします。

連載テーマ:学校と戦わず、心地よい距離感で味方にする方法

  • Vol.1:本人へ。「教室が怖い」あなたのための、先生や保健室との付き合い方
  • Vol.2:保護者へ。先生が動いてくれる「伝え方」と、学校連携のコツ
  • Vol.3:実践編。学校を賢く利用するための「スモールステップ」戦略

かつて「保健室の天井」を見つめていた元当事者として。
そして今、教壇に立ち「先生側の事情」も学んでいる教育実習生として。
その両方を知る私だからこそお伝えできる、「教室の論理」と「保健室の気持ち」をつなぐヒントを綴っていきたいと思います。

第1回となる今回は、「行ったり行かなかったり(五月雨登校)」で苦しんでいるあなたへ。
無理をして教室に戻るのではなく、自分を守りながら学校とつながるための「心の持ち方」についてお話しします。

筆者:スミレ(教育学部 4年生 / 五月雨登校期あり)

「教室の論理」と「保健室の孤独」。その両方を知る“通訳”として。
未来の「先生」を目指す私ですが、中高時代は「教室に入るのが怖い」という当事者でした。現在は教育大で学びつつ、教育実習で現場の大変さも痛感。教科書的な正解だけでなく、痛みがわかる経験を交え、少しでも「自分らしい居場所」を見つけるヒントを発信します。

目次

はじめに:「行けない」のではなく「選んでいる」

「学校に行かなきゃ」と思えば思うほど、玄関で足がすくんでしまう。
そんな経験はありませんか?

私自身、完全な不登校というより、行けたり行けなかったりを繰り返す「五月雨(さみだれ)登校」の時期が長くありました。
周囲からは「サボり」に見えてしまうかもしれません。でも本人の中では、「教室という異界」と「安全な家」の間で揺れ動きながら、実はもっともエネルギーを使っている状態なのです。

そこで私が提案したいのは、「頑張って教室に戻る」のを、一度手放してみることです。
その代わりに、「自分にとって心地よい距離感で学校と付き合う」方法を考えてみませんか? これは決して逃げではなく、自分を守るための大切な選択です。

1. 保健室は「休憩所」と考えてみる

罪悪感を持たなくて大丈夫

教室に入れず、保健室や図書室にいるとき、一番つらいのは「みんなは勉強しているのに」という罪悪感です。
でも、実習生として学校の現場を見て気づきました。「学校という場所にいること」それ自体が、すでに十分すごいことなのです。

教室の担任の先生は忙しすぎて、一人ひとりとゆっくり話す時間がとれないこともあります。でも、保健室や図書室の先生は違います。
私は当時、そこを「私のための休憩所」「静かな読書スペース」と捉え直すことにしました。そう思うだけで、「サボっている」という苦しい感覚が、「自分のために時間を使っている」という穏やかな感覚に変わっていきました。

SNSは「外の世界との窓」

保健室での一人の時間を埋めてくれたのはスマホでした。
大人たちは「スマホばかり見て」と心配するかもしれませんが、私にとってSNSは「社会とつながる大切な窓」でした。

ただ、キラキラした投稿を見て落ち込んでしまうこともありますよね。もし今、一人の時間を持て余しているなら、見るだけでなく、趣味のことを少しだけ「発信」してみるのもおすすめです。それだけで、スマホの向こうの世界が少しだけ温かく感じられるかもしれません。

2. 先生に「頼る」ことは、迷惑じゃない

先生たちの「本当の気持ち」

「教室に入れないと、先生に迷惑がかかる」。そう思って遠慮していませんか?
教育実習に行って痛感しましたが、先生たちが困っているのは「生徒が来ないこと」そのものではなく、「どう関わってあげたらいいか分からないこと」なんです。
「そっとしておいてほしいのかな、声をかけてほしいのかな」と、先生の方も迷っています。

「15分だけ」のお願い

だからこそ、こちらから「こうしてもらえると嬉しいです」と伝えてあげるのは、先生にとっても助かることなんです。

  • 「教室には入れないけれど、放課後15分だけ質問に行ってもいいですか?」
  • 「オンラインで課題の添削だけお願いできませんか?」

こんなふうに頼られて、嫌な顔をする先生はいません。むしろ「やる気はあるんだな、力になりたいな」と安心してくれます。
教室に戻ることだけがゴールではありません。 「勉強を教えてくれる身近な大人」として、先生の力を少しだけ借りてみる。そんな頼り方も、立派な学校との付き合い方です。

3. 学校を「アラカルト」で楽しむ

全部食べなくてもいい

「学校に行く」=「朝から夕方まで教室にいなきゃいけない」と思い込んでいませんか?
学校は、フルコースの料理のように全て平らげなくても大丈夫です。自分の好きなものだけ選ぶ「アラカルト」のように、柔軟に使ってみましょう。

  • 給食(お弁当)だけ登校: 好きなメニューの日だけ行ってみる。
  • 部活だけ登校: 勉強は家でするけど、部活の仲間には会いに行く。
  • 「好きな先生」限定登校: あの先生の雑談だけ聞きにいく。

これらは「わがまま」ではありません。教育的な視点で見ても、「スモールステップ(小さな目標の積み重ね)」という大切な考え方です。
先生に相談するときも、「まずは図書室で本を読むところから始めたいです」と具体的な希望を伝えてみてください。できることがはっきりしていると、学校側も「それならいいね」と応援しやすくなります。

まとめ:自分だけの「歩き方」でいい

私が教員を目指しているのは、かつての私のような子が「息ができる学校」を作りたいからです。
でも、学校が変わるのを待つ必要はありません。今のままでも、見方を少し変えるだけで、学校は「苦しい場所」から「使える場所」に変わります。

静かな居場所(図書室・保健室)、勉強のサポーター(先生)、同世代のつながり(部活・クラス)。
これらを全部セットで受け取る必要はありません。今の自分が受け取れるものだけ、無理のない範囲で受け取ればいいのです。

「全部行かなくていい。行けるところだけ行けばいい」
そう思えたとき、学校への恐怖心が、少しだけ「安心」に変わるかもしれません。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、こうしたお子さんの気持ちを、保護者の方がどう先生に伝えていけばいいか? 「学校が動いてくれる」伝え方のヒントについて、私の経験も交えてお話しできればと思います。

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