【フリースクールの選び方】

フリースクールとは何か?

不登校の子どもたちが通う場所として注目を集めているのが、フリースクールです。不登校の子どもの増加に伴って全国各地につくられるようになり、現在ではその数は数百にのぼるといわれ(文部科学省、2015年)、その後も増加傾向にあります。

不登校の子どもの居場所として認知されているフリースクールですが、実は法律などで「学校(一条校)」として定められている機関ではないため、何をもってフリースクールと呼ぶのかは明確ではありません。一般的には、「民間において自主的に設置・運営されており、不登校児童生徒に対し、個別の学習や相談・カウンセリング、社会体験や自然体験などの体験活動、授業形式(講義形式)による学習などを行う」施設であるとされています。

法的根拠が曖昧である一方、実質的な連携は進んでいます。例えば、多くのフリースクールでは、在籍している小中学校の校長が認めれば、フリースクールへの通所が「学校への出席扱い」となる措置がとられており、通学定期券の適用も認められるようになっています。

行政が設置する「教育支援センター(適応指導教室)」が「学校復帰」を前提としがちであるのに対し、多くのフリースクールでは必ずしも学校復帰を目指していません。むしろ、「学校に行かない、行けない子どもたちの居場所」を提供し、自己肯定感を回復させ、「社会的な自立」を支援することを目的とする場所が多いようです。(スガヤ)

経営:フリースクールは”誰”が運営している?

フリースクールと学校の違いは多々ありますが、そのなかでも最も大きな違いは、設置・運営主体であると思っています。学校は公立学校であれば教育委員会、私立学校であれば学校法人が設置・運営しています。これらは法律に規定されており、設立には厳しい認可基準があります。

一方、フリースクールは法律に規定されていないため、誰でもつくることができ、設置・運営主体が「不登校の子どもの母親(保護者)」の場合もあります。例えば、日本におけるフリースクールの草分け的存在である「東京シューレ」も、元々は自分の子どもが登校拒否(当時の呼称)になり、行き場を失った経験を持つ母親(奥地圭子氏)が、「自分たちで居場所をつくればよい」という思いで1985年にマンションの一室からスタートさせたものです。 このように、我が子の苦しみを目の当たりにした親たちが、「学校外の成長の場が必要だ」と切実に感じて立ち上げるケース(「親立」の学校)が多く見られます。

他にも、元学校・塾の先生、NPO法人、学生、医師(カウンセラー)、福祉や心理の専門職、篤志家、お寺、不登校経験者など、多種多様な人がフリースクールをつくっています。なかでその教育方針まで見極めて”子どもにぴったり”のところを選出するのは意外に難しく、実際に訪れて様子を見たり、説明会などで代表の話を聞くなど、しっかり見極めることが大切です。

要は現状では、運営している人が「フリースクールです」と言って、不登校の子どもたちを集めて何かをやっていれば、事実上「フリースクール」ということになっています。このため事前にトライアルを重ね、専門と再現性に裏打ちされた教育理念や方針もあれば、元塾の先生の”独自のメソッド”などもあり、実に玉石混交のようでもあります……(スガヤ)

活動:フリースクールでは何をするの?

これだけさまざまな人たちがフリースクールをつくっているので、活動内容は施設ごとに千差万別です。ここが「選ぶ側のリスク(難しさ)」でもあり、同時に「学校にはない魅力」でもあります。

多くのフリースクールでは、一斉授業のようなカリキュラムではなく、**「子どもが自分で決める」**ことを重視しています。 具体的な活動例としては以下のようなものがあります。

多様な体験活動: 料理、スポーツ、芸術活動(絵画、陶芸など)、演劇、バンド活動など。

大規模なプロジェクト: 子どもたちの「やりたい」という声から、アラスカへオーロラを見に行く計画を立てたり、本物の1/10サイズの電気機関車を一から製作したりといった、学校では実現困難なプロジェクトに取り組む例もあります。

「何もしない」時間: ゲームやマンガ、あるいはおしゃべりをして過ごすだけの時間も肯定されます。不登校の初期段階でエネルギーが枯渇している子どもにとっては、安心して休息し、ゲームなどに没頭することで心を「充電」する時間が必要だと考えられているためです。

どのような活動をするのかは、フリースクールを運営している人たちが自由に決めることができますし、多くの場合、子どもたち自身の話し合い(ミーティング)によってルールや行事が決められています。一切、学習活動をしないところも珍しくありませんが、逆に、子どもが「学びたい」と思ったタイミングで、韓国語やプログラミングなどの専門家を招いて講座を開くなど、柔軟な学習支援が行われることもあります。

したがって、フリースクール選びにおいては、「その施設が何を大切にしているか(学習か、居場所か、体験か)」と「子どもの現在の状態(休息が必要か、活動したいか)」がマッチしているかを見極めることが非常に重要になります。

通い方もさまざま

通い方もさまざま:自らのペースを取り戻す場所

学校は毎日(平日は)開いていますが、フリースクールは必ずしも毎日開いているわけではありません。週に一、二日しか開いていないところもありますし、朝から夕方まで開いているところもあれば、三、四時間しか開いていないところもあります。そのため、フリースクールに行く日と休む日、学校に行く日などを組み合わせることもできます。

また、学校は登校時間が決まっていて、それに間に合わないと「遅刻」として扱われますが、ほとんどのフリースクールには「遅刻」という考え方はありません。 例えば、フリースクールの草分けである「東京シューレ」の場合、開室時間は10時30分頃から夕方までと設定されていますが、これはあくまで「目安」に過ぎません。朝が苦手で昼頃にゆっくり来る子もいれば、体力が続かないために早めに帰る子、あるいは夕方からのアルバイトのために早退する高等部生など、過ごし方は一人ひとり異なります。

なぜこれほど柔軟なのかといえば、不登校の子どもにとって「朝」は最もつらい時間帯だからです。「学校に行かなければ」というプレッシャーと、「でも行けない」という現実の狭間で葛藤し、エネルギーを消耗していることが多いため、無理に朝起きるよりも、十分に睡眠をとって心が落ち着いてから活動する方が理にかなっているのです。そのため、家から出てフリースクールに来てくれること自体が歓迎され、子どもは自分の心身の状態やその日の活動内容などを踏まえて、何時に行くのか、また何時までいるのかを自分で決めることができます。

さらに、実際に通うフリースクールだけでなく、オンライン上(バーチャル空間上)でのつながりも重要視されています。 東京シューレでは、1990年代から在宅の子どもたちをつなぐ「ホームシューレ」という活動を行っており、SNSなどを通じて交流したり、会報誌にイラストや文章を投稿したりしています。不登校の子どものなかには、外に出ること自体に困難を感じている子や、集団への恐怖心を持っている子もいます。そうした子どもにとって、自宅にいながらつながれる場は、社会的な孤立を防ぐ命綱となります。オンライン上のフリースクールやコミュニティであれば、自分の顔を見られる心配もなく、自宅からの距離も気にしなくてよいため、近年さらに需要が高まっています。

フリースクールと学校との関係:対立から連携へ

フリースクールに通うといっても、フリースクールは法律で規定されている学校(一条校)ではありませんので、現在在籍している学校から転校するわけではありません。現在在籍している学校に籍を置いたまま、学校を休んで、日中にフリースクールに通うことになります。 これを**「二重籍(にじゅうせき)」**の状態と呼びます。籍は学校にあるため、教科書は学校から受け取りますし、卒業証書も在籍校の校長名で発行されます。

もちろん、フリースクールを利用しながら時々は学校の授業に出席したり、行事に参加したりすることも可能です。しかし、かつてはこの「二重籍」が親子にとって大きな負担となることもありました。例えば、普段は全く通っていないのに「卒業式の練習だけは出なさい」と学校から求められるなど、子どもの実態に合わない対応に悩まされるケースがあったのです。 そのため、多くのフリースクールでは、学校と何らかの形で情報共有や連携を密にしています。毎月の活動報告書を送付したり、スタッフが学校を訪問して子どもの様子を伝えたりすることで、学校側の理解を促します。

近年、この連携はより公的なものへと進化しています。2016年に成立した「普通教育機会確保法」を背景に、フリースクールと行政が手を組む**「公民連携(こうみんれんけい)」**が進んでいます。例えば、東京都世田谷区や北区では、自治体の教育支援センター(適応指導教室)の運営や事業を民間のフリースクール(東京シューレ)が受託するといった事例も生まれています。これにより、学校に戻ることだけをゴールとせず、学校外での多様な育ちを公的に支える仕組みが整いつつあります。

出席扱いの認定と自信の回復

また最近は、フリースクールでの学びや活動を学校が成績として評価し、指導要録上の出席扱いになることが一般的になりました。 この流れは、1992年に文部省(当時)が「フリースクール等への出席を指導要録上の出席扱いとして認める」という通知を出したことが大きな転換点でした。さらに2005年には、自宅においてIT等を活用して学習活動を行った場合も、一定の要件を満たせば出席扱いにするという通知も出されています。

学校には行っていないけれども、学校に代わる場所で、あるいは自宅で主体的に学んだので出席としてカウントする。これは単に内申点や進路の選択肢を広げるだけでなく、子どもの心に大きな影響を与えます。「自分は学校に行っていないダメな子だ」という罪悪感や自己否定感を抱えがちな子どもにとって、自分の居場所での活動が社会的に「出席」として認められることは、「そのままでいい」「学んでいると認められた」という自信(自己肯定感)につながるからです。

かつてはフリースクールに通うための通学定期券さえ学割が適用されませんでしたが、当事者たちの粘り強い働きかけにより、現在では小中学生だけでなく高校生年代も実習用通学定期券などが利用できるようになりました。 このように、学校とフリースクール、そして社会が連携し、学校外での学びを正当に評価・サポートすることは、子どもの自立にとって極めて重要な意味を持つのです。

基本姿勢として重要なのは、**「親が主権者として、子どもの気持ちを代弁し、毅然と意見を伝えてよい」**ということです。

1. 「子どもの意思」を盾に、無理な提案はきっぱり断る

学校側(担任や校長)は、善意から「行事だけでも参加させよう」「同伴登校はどうか」といった提案をしてくることがあります。しかし、子どもがそれを嫌がっている場合、親は防波堤になる必要があります。

コツ: 学校からの提案に対して、子どもが嫌がっているなら「親として、今はそれを望みません」とはっきり伝えて構いません。

「あきらめるな」と言われたら: 教師から「親があきらめてはダメだ」と説得されることがありますが、その場で納得させる必要はありません。「今日はその返事は保留させてください」「また話し合いをお願いします」と冷静に一旦持ち帰り、その場をしのぐのも有効な手段です。

2. 「出席扱い」の制度を活用し、学校側のメリットも示唆する

多くのフリースクールでは、在籍校の校長が認めれば、フリースクールへの通所を指導要録上の「出席」として扱うことができます(1992年の文部省通知以降),。

連携のメリット: これを学校と連携して認めてもらうことは、子どもの「自分は学校に行っていないダメな子だ」という罪悪感を減らし、自信(自己肯定感)につながります。また、通学定期券の割引適用にもつながる重要な手続きです。

交渉のコツ: まだ理解のない学校の場合、「出席扱い」にしないことは学校側にとっても「欠席数が増える」だけであり、連携したほうが双方(そして子ども)にメリットがあることを、制度の存在とともに伝えていく姿勢が大切です。ただし、校長によってはまだ理解不足で認めないケースもあるため、粘り強い対話が必要な場合もあります。

3. 「公民連携の時代」という言葉を使う

かつては、公立学校の教師が民間のフリースクールを紹介したり連携したりすることをためらう風潮がありました。しかし、2016年の「普通教育機会確保法」成立以降、国の方針も変わりつつあります。

コツ: 先生にお願いや情報提供をする際、「今は公民連携(こうみんれんけい)の時代になりましたので」という言葉を添えてみてください。この一言で、「情報提供はお互いに必要ですよね」と快く応じてくれるケースが増えています。

背景: 文部科学省も「不登校は問題行動ではない」という通知を出しており、学校復帰だけをゴールにしない支援が公的に認められ始めています,。この変化を親側が知っておくことが強みになります。

4. スクールカウンセラーを「別の窓口」として試す

担任や校長との話し合いが辛い場合、スクールカウンセラー(SC)を利用するよう勧められることがあります。

コツ: SCは管理職や担任とは異なる立場で話を聞いてくれる可能性があるため、一度会ってみる価値はあります。学校外での成長の場(フリースクールなど)について理解があるSCであれば、学校側との調整役になってくれることもあります。

注意点: 相性が合わなかったり、学校側の意向を押し付けてくるだけであったりする場合は、無理に継続せず「辛いので延期・キャンセルしたい」と伝えて中断しても問題ありません。

5. 「二重籍」の負担を減らすための割り切り

フリースクールに通っていても、籍は元の学校にある「二重籍」の状態です。この状態は、学校にとっても家庭にとっても連絡調整などの負担がかかります。

コツ: 「卒業式の練習だけ来なさい」といった、子どもの実態に合わない要求をされた場合は、無理に応じる必要はありません。かつては、こうした負担を避けるためにフリースクール側が独自の学校(東京シューレ葛飾中学校など)を作らざるを得なかったほどの問題でした。現在は法の後押しもあるため、子どもの現状(フリースクールで元気にやっていることなど)を伝え、「二重籍」による過度な干渉を避けるよう調整することが可能です。

総じて、連携のコツは**「学校に行かせるための連携」ではなく、「子どもが安心して育つための環境調整としての連携」**というスタンスを崩さないことです。

質が担保されていないフリースクール

質が担保されていないフリースクール

このようにフリースクールは、不登校の子どもが通いやすい居場所や学習の場として広く認知されています。ですが、すべてのフリースクールが不登校の子どもにとってよい場所になっているかと言われるとそうではありません。

学校では、教員免許をもった教職員が学習指導要領に沿った学習内容を教えてくれます。日本であれば、北海道でも沖縄でもおおむね同じ内容を学び、同じような活動をすることができます。これは、学校が法律(学校教育法第一条)に規定されている施設であるためです。

一方、フリースクールは法律に規定されていないため、誰でもつくることができ、独自の活動を展開できます。学習指導要領に縛られず、子どもの興味・関心に基づいたプログラム(例えば、アラスカへのオーロラ旅行や鉄道模型の製作など)を柔軟に組める自由さは、フリースクール最大の特徴でありメリットです。しかし、これは同時にデメリットにもなり得ます。言い換えると、公的な基準が存在しないため、フリースクールはスタッフや活動内容の質が担保されていないといえるのです。

運営者の「思い」と「スキル」のギャップ

先ほど、不登校の子どもの母親がフリースクールを設置・運営しているケースがみられるとお伝えしました。実際、日本のフリースクールの草分けである「東京シューレ」も、我が子の不登校に直面した親たちが集まった「親の会」が母体となって生まれた「親立(おやりつ)」の場です。 その母親のなかには、子どものためという熱い思いはもっているものの、不登校や子どもの発達に関する専門的な知識もなければ、適切な支援方法がわからない人もいます。

ソースによれば、かつては「親の愛情不足」や「甘え」が不登校の原因だとされ、親自身も「内なる学校信仰(学校に行くのが当たり前という価値観)」に囚われているケースが多くありました。運営者がこの価値観から脱却できていない場合、口では「自由」と言いながら、実際には子どもに登校や学習を強要し、家庭と同様に子どもを追い詰めてしまうリスクがあります。 また、自分の子どもが学校に戻ったり、高校に進学したりすると、もうフリースクールを開設する意味がなくなってしまうため、あっさり閉めてしまうケースもあります。

私が知っている例でも、運営者である地域の篤志家(高齢者)が毎日一時間ほど、その方の持論を子どもたちに一方的に語るフリースクールがありました。また、ある福祉だけで運営されていてその専門家は全然姿をみせないため、結局ただ遊ぶだけになっているところもありました。 さらに深刻な歴史的背景として、かつては「不登校を治す・鍛え直す」と称して、暴力的なトレーニングや監禁に近い指導を行う「矯正施設」のような場所も存在し、死亡事故に至ったケースさえあります(戸塚ヨットスクール事件や風の子学園事件など)。これらは極端な例ですが、「何をもって良しとするか」の基準がない世界では、運営者の独善的な理念がそのままルールになってしまう危うさがあるのです。

日本には、フリースクールで何をすべきかという共通理解がなく、専門的な知識を有する人も多くはありません。それぞれのフリースクールでのノウハウは蓄積されていますが、それが共有されることはあまり多くありません。

数十人に対して数人のスタッフという場所も

フリースクールが必ずしも専門的な知識をもった人によって運営されているわけではないことを説明してきましたが、もうひとつの問題として、スタッフの人数があります。学校の場合、一クラスは三五人や四〇人で構成されています。

しかし、フリースクールには、子ども何人あたりにスタッフ一人のような決まりはありません。文部科学省の2015年の調査によれば、フリースクール一団体あたりの平均在籍者数は約13人と小規模なところが多いのが実情ですが、なかには通っている子どもとスタッフが同じくらいの人数のところもあれば、数十人の子どもに対して、スタッフが一人や二人というところも珍しくありません。

不登校の子どもは、学校での傷つき体験から「人が怖い」「集団に入れない」といった不安を抱えていることが多く、初期段階ではスタッフがマンツーマンに近い形で何時間も話を聞いたり、寄り添ったりするケアが必要になることがあります。スタッフが極端に少ない場所では、こうした丁寧な対応ができず、子どもをただ集めているだけで、放置(ネグレクト)に近い状態になってしまうこともあります。

もちろん、多くのフリースクールは、設置・運営している人たちが不登校の子どものことを考え、不登校支援について勉強しています。例えば「東京シューレ」のように、スタッフが元教員であっても「上から教える」という学校的な態度を捨て(垢を落とし)、子どもと対等な関係を築くための研修や経験を積んでいる場所もあります。また、キャパオーバーにならないように、受け入れを制限することもあります。 ただ、選ぶ側としては、「看板を掲げれば誰でもできる」という現状を理解し、その場所が本当に子どもの心に寄り添う質を持っているか、慎重に見極める必要があります。

入会金は平均五万円を超える:公的助成なき運営の実態

フリースクールは民間が運営していますので、どこかで収益を得て、家賃や光熱費、人件費、活動の費用を捻出しなければならず、そのため、フリースクールの多くは、入会金や利用料、月謝、授業料などの形で、通っている子どもの親からお金を得ています。

文部科学省が二〇一五年に行ったフリースクールなど民間団体・施設に関する調査では、対象となった団体・施設の約六〇%が入会金を徴収しており、その平均は約五万三〇〇〇円でした。また、同調査では、約八五%が会費(授業料)を徴収しており、その平均は約三万三〇〇〇円となっています。月の会費(授業料)が五万円を超えている施設・団体も約一〇%ありました。

このようにフリースクールを利用するのにも、お金がかかります。なぜこれほど費用がかかるのでしょうか。その背景には、公立学校はもちろん、私立学校とも異なる厳しい財政事情があります。 例えば、著者が運営するフリースクール「東京シューレ」が母体となって設立した「東京シューレ葛飾中学校」は、学校法人の認可を受けた「私立学校」です。私立学校には国や自治体から「私学助成金」という補助金が出ます。そのため、施設設備が整い、教員も揃っているにもかかわらず、授業料は助成金のないフリースクールの会費よりも月額にして一万円ほど安く設定できるという逆転現象が起きています。 フリースクールにはこうした公的な運営費補助がほとんどないため、運営費用のすべてを通っている子どもの家庭からの会費や寄付で賄う必要があり、どうしても割高になってしまうのです。フリースクールといっても、無料(フリー)ではないのです。

保護者からすると、お金を払っている以上、何かの対価を期待するのは当然のことです。フリースクールの場合、学校復帰を目指さないところが多いので、対価となるのはそのフリースクールの活動内容になります。 例えば、子どもたちの「やりたい」という声から、アラスカへオーロラを見に行く計画が持ち上がった際、その費用を親任せにせず、子どもたちが「アラスカ食堂」を開いて昼食を販売したり、コーヒーを売ったりして資金作りをしたエピソードがあります。 それだけの費用を払ってまで通わせる価値のある活動をしているのか、いくらよい活動をしていても、その費用を継続的に支払っていけるのかなど、フリースクールを選ぶ際には、費用の面についても考えておく必要があります。なお、文科省の調査によれば、約四〇%の団体が会費の減免制度を設けているというデータもあり、家庭の事情に応じようとする努力も見られます。

フリースクールは地方ほど少ない傾向:通えない子のための選択肢

フリースクールをビジネス的に考えれば、顧客である不登校の子どもやその親に対して何らかのサービスを提供し、その対価として親からお金を得るというビジネスになります。このように考えると、顧客がいるところにはフリースクールがたくさんできる一方、顧客が少ないところにはフリースクールはなかなかできないということになります。

現在、全国的に不登校の子どもは増えていますが、都市部はもともと人口も多いので、不登校の子どもの人数も多くなります。そのため、フリースクールが次々にできていきます。一方、都市部を離れると、人口が少なくなるので、不登校の子どもの人数も減ります。そのようなところだと、フリースクールが一カ所しかなかったり、そもそもフリースクールがなかったりするところもあります。

実際、都市部にあるフリースクールであっても、遠方から通う子どもは少なくありません。そのため、朝の開始時間を9時40分や10時半といった遅めの時間に設定し、遠方からの通学や、朝が苦手な子どもの体調に配慮しているところも多くあります。しかし、フリースクールに行くのに一時間以上かかったり、親がいつも送り迎えをしなければならなかったりすると、保護者の負担は大きなものになるでしょう。

また、都市部であれば、スタッフの質や人数、費用、施設設備、活動内容などを比較して、子どもにあった場所を選ぶことができますが、都市部ではないところはそのような選択をすることもできず、とりあえず近くにあるフリースクールを選ばざるを得ないのです。

その点、オンライン上のフリースクールや在宅支援のネットワークは利便性が高いかもしれません。 例えば「東京シューレ」では、1993年から「ホームシューレ」という在宅の子どもたちをつなぐ活動を行っています。全国どこに住んでいても、SNSや会報誌を通じて交流したり、時には合宿で実際に顔を合わせたりすることで、家にいながら「仲間」とつながることができます。 さらに近年では、自治体と民間のフリースクールが連携する「公民連携」の事業も始まっており、公的な施設内でフリースクールのノウハウを生かした居場所作り(東京都北区や世田谷区の例など)が進められています。こうした動きが広がれば、地域による格差も少しずつ解消に向かうかもしれません。

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