・書籍タイトル: 友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える
・著者: 菅野 仁
・出版社: 筑摩書房 (ちくまプリマー新書)
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・目次
はじめに 「友人重視指向」の日本の高校生 第1章 人は一人では生きられない? 第2章 幸せも苦しみも他者がもたらす 第3章 共同性の幻想 ――なぜ「友だち」のことで悩みは尽きないのか 第4章 「ルール関係」と「フィーリング共有関係」 第5章 熱心さゆえの教育幻想 第6章 家族との関係と、大人になること 第7章 「傷つきやすい私」と友だち幻想 第8章 言葉によって自分を作り変える おわりに 「友だち幻想」を超えて
「みんな仲良く」の呪縛から、親子を解き放つ一冊
「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき、その背景には人間関係の疲れがあることが少なくありません。親としてはつい「友達と何かあったの?」「仲直りすれば?」と解決を急いでしまいがちですが、本書はそもそも私たちが信じ込んでいる「みんな仲良くすべき」という前提そのものに疑問を投げかけます。 著者は社会学者の菅野仁氏。本書は、日本の学校空間に特有の「同調圧力」や「友だち幻想」が、いかに子どもたちを息苦しくさせているかを論理的に解き明かしたロングセラーです。 「気の合わない人と無理に仲良くする必要はない」。このシンプルな真実は、人間関係に悩み、学校という閉鎖的な空間で傷ついた子どもの心を守るための強力な盾となります。そして、子どもを心配するあまり「友だち百人できるかな」のような理想を押し付けてしまいがちだった私たち保護者の肩の荷をも、そっと下ろしてくれる一冊です。
ポイント: 「仲良し」ではなく「並存」を目指すという処方箋
本書の核心は、人間関係を「感情」ではなく「作法」として捉え直すことにあります。
・「並存性」というキーワード: すべての人と親しくなることは不可能です。気が合わない相手とも、お互いに傷つけ合わず、ただ同じ空間に存在すること(並存)ができれば十分だと説きます。これは「冷たさ」ではなく、自分と相手を守るための「知恵」です。
・2つの関係性の使い分け: 人間関係を、情緒的なつながりを求める「フィーリング共有関係」と、役割やマナーに基づく「ルール関係」の2つに分けて考えます。学校や社会の多くの場面では後者の「ルール関係」で十分であり、すべてに情緒的な一体感を求めることが苦しみを生んでいると指摘します。
・「やりすごす」力: 真正面からすべての他者と向き合うのではなく、時には適度な距離を取り、やりすごすこと。それが自分という個を守り、長く生きていくための重要な技術であると教えてくれます。
この本について
・独自の視点
多くの教育書が「コミュニケーション能力の向上」や「思いやり」を説く中で、本書はあえて「距離を取る能力」「鈍感になる強さ」の重要性を説いています。熱血教師的な精神論ではなく、社会学の知見に基づいたクールで実用的な「人付き合いの技術」は、不登校や対人不安に悩む親子にとって、情緒的な慰め以上に具体的な救いとなるはずです。
・相対評価
・評価軸の傾向(ポイント形式) 理論(抽象) ⇔ 方法(具体): 理論(抽象)寄りだが実践的。なぜ苦しいのかという構造の理解が、具体的な解決(気持ちの整理)につながります。
・ドライ(客観) ⇔ ウェット(感情): ドライ(客観)。感情論になりがちな人間関係の問題を、論理的に整理します。
・今すぐ(短期) ⇔ じっくり(長期): 長期。大人になっても使い続けられる、一生モノの対人スキルです。
・当事者目線 ⇔ 支援者目線: 双方。悩みの中にいる子ども(当事者)にも、それを見守る親(支援者)にも響く内容です。
・ポジティブ(肯定的) ⇔ ニュートラル(客観的): ニュートラル。「友だちは素晴らしい」というポジティブな幻想を一度解体し、フラットな視点を提供します。
・ 発達特性との関連度: 3。空気を読むことや同調が苦手な特性を持つ子にとって、本書の「ルールベース」の考え方は非常に親和性が高いです。
まとめ: 「孤独」を恐れず、「孤立」を防ぐ
本書は、友だちがいないことや、集団になじめないことを「悪」だと捉えてしまいがちな私たちの価値観を根底から覆してくれます。 不登校は、子どもが「同調圧力」の強い学校空間から、一時的に「避難」している状態とも言えます。その選択を否定せず、「気の合わない人とは距離を置いてもいいんだよ」「一人でいることは悪いことではないんだよ」と親が心から言えるようになること。それが、子どもの自立への第一歩となるはずです。 無理に学校に戻そうとする前に、まずは親子でこの本を読み、人間関係の「ハードル」を下げてみてはいかがでしょうか。
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スガヤのふせん ~個人的ブックマーク
保護者からよく聞く悩みに、「うちの子、コミュニケーションが苦手で…」というものがあります。でも、この本を読むと、「そもそも学校という場所が、高度すぎるコミュニケーション(同調)を強いているだけではないか?」と思えてきます。 著者は言います。
気の合わない人間、あまり自分が好ましいと思わない人間とも出会います。そんな時に、そういう人たちとも『並存』『共在』できることが大切なのです(P.70より)
これ、大人でも難しいですよね。職場に苦手な上司がいたら、最低限の挨拶と業務連絡だけして、あとは「やりすごす」。それが大人の知恵です。でも子どもたちは、苦手な子とも「仲良く」することを求められ、逃げ場を失ってしまっている。 ボクたちが子どもに教えるべきは、誰とでも仲良くなる魔法ではなく、嫌いな人とでもトラブルにならずに同じ空間にいるための「作法(マナー)」なのかもしれません。
「愛せない場合は通り過ぎよ」(ニーチェの言葉として引用) 「あえて近づいてこじれるリスクを避けるという発想も必要だということです」
不登校という期間は、この「通り過ぎる」練習をしている時間なのかもしれません。親が焦って「みんなの輪に入りなさい」と言うことは、戦場に丸腰で戻すようなもの。まずは家で、「逃げてもいいし、かわしてもいい」と教えてあげたいですね。 「友だち幻想」という呪いが解けたとき、子どもは初めて、本当の意味での「他者」とのつながりを、自分のペースで築き始めるのだと思います。

