不登校といじめの関係を調査。「いじり」やネットいじめの実態と対応方法

不登校といじめの構造:教室の隅で孤立する子供と、外の世界へ続く「逃げ道」を示す光のイラスト
[この記事の監修チーム]

スミレ、まる、いと(※文責)、スガヤ
いじめは心に深い傷を残す重大な問題です。元当事者・保護者・専門家の視点から、複雑化する現代のいじめ構造と、子どもを守るための具体的な「逃げ道」を提案します。

目次

定義:不登校といじめの密接な関係

「不登校」の定義は「いじめ」を含んでいる

「不登校」という言葉は、しばしば「いじめを(直接の)原因としないケース」として語られることがありますが、これは誤解です。文部科学省が定める不登校の定義は、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるために、年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」とされています。この定義には、いじめを原因とする不登校が除外される意図はなく、むしろいじめは不登校の重要な原因の一つとして認識されています。

いじめをきっかけに心身の不調をきたし、不登校や心身症、うつ病になるケースは増加傾向にあります。いじめられた体験は、その後の小学校、中学校、高校、大学での不適応の割合を有意に高めるという研究結果も多数存在します。これは、いじめが単なる一時的な問題ではなく、子どもの発達全体に長期的な影響を及ぼすことを示唆しています。

【当事者の視点】いじめの境界線は曖昧

(元当事者スタッフ:まる より)
「これっていじめなのかな?」と迷っているうちに、心は壊れていきます。
殴られたり金銭を要求されたりすることだけがいじめではありません。「空気のように扱われる」「グループの会話に入れてもらえない」。そんな静かな暴力こそが、一番心を蝕むのです。
本人が「つらい」と感じたら、それはもう立派な(?)いじめです。定義に当てはまるかどうかより、まして「そんな些細なことで」など突き放さず、まずはその痛みに寄り添ってあげてください。

いじめにつながる「友人関係」

子どもたちの友人関係は、私たちが想像する以上に複雑で流動的です。国立教育政策研究所の追跡調査によれば、小学校4年生から中学校3年生までの6年間で、いじめ被害経験が全くなかった児童生徒はわずか1割程度、加害経験が全くなかった児童生徒も同様に1割程度しかいません。これは、多くの子どもたちが成長の過程で、いじめの被害者にも加害者にもなる可能性があることを示しています。いじめは加害と被害を移行・変遷していく複雑な傾向があり、子どもたちのパワーバランスの複雑さも反映しているのです。

いじめの6割が「親しい関係の中で生じる」

いじめは、見知らぬ人同士の間で起こるのではなく、その約6割が親しい関係の中で生じると言われています。そこでは、親しい関係性ゆえに、相手の弱みを熟知しており、その濫用が大きな問題となります。いじめは、学級集団内の相互作用過程の中で、腕力や資源動員能力において相対的に優位な者が劣位の者に苦痛を与える攻撃的行為です。この「力のアンバランスの濫用」が、いじめの本質と言えるでしょう。

子どもの社会関係の変容:スクールカーストの闇

島宇宙化とスクールカースト

現代の学級内では、子どもたちの人間関係が閉鎖的な仲間集団に限定される「島宇宙化」現象が生じています。多様な子どもたちとの交流が少なくなり、特定の「いつメン(いつも一緒にいるメンバー)」の中だけで世界が完結してしまうのです。

この背景にあるのが、学級内に見られる階層的な人間関係、いわゆる「スクールカースト」の存在です。子どもたちは、友人関係を「一軍」「二軍」「三軍」などのカテゴリに分類することがあり、自分の立ち位置を常に意識しています。

【当事者の視点】教室の空気は「窒息」しそう

(元当事者スタッフ:スミレ より)
教員を目指して実習に行くと、ときどき教室の空気が「張り詰めている」ことに気づきます。
同調圧力のなかで、ある子が笑えば、周りも面白くなくても笑わなきゃいけない。でもそうじゃない子が場違いな発言すると、空気が凍る。
こういう「見えない圧力」の中で毎日生き抜くことは、結構ハードで、大人社会の人間関係よりもきっと、ずっと過酷です。教室は「逃げ場のない密室」です。せめて家では、ゆっくり深呼吸できますように…

「いい子症候群」とキャラ変の疲弊

現代の子どもたちは、周囲の期待や状況に合わせて意識的に自分を使い分ける「キャラ変」を行うことが増えています。様々な「キャラ」を演じ分けることで、本当の自分を隠し、誰にも心を開けない状態に陥ることがあるのです。

この傾向は、子どもたちが学校での人間関係や抱えている問題を、親にありのままに話さないことにもつながります。「親に心配をかけたくない」「本当のことを話したら『もっと頑張りなさい』と言われるんじゃないか」。そんな思いから、ギリギリまで「いい子」を演じてしまうのです。

デジタル機器とコンテンツの影響:24時間の監視社会

スマートフォンやSNSの普及は、子どもたちのコミュニケーションをオンライン中心へと変化させました。ネットいじめが持つ「匿名性」「文字だけの対面性」「同時性と偏在性」といった特徴は、いじめ問題の複雑化に拍車をかけています。

【専門家の視点】家に帰っても逃げられない

(編集長:スガヤより)
昔のいじめは、学校を出れば一旦終わりでした。しかし今は、SNSを通じて24時間、布団の中まで”悪意”が追いかけてきます。
「LINEグループ外し」や「裏垢での悪口」は、大人の目には見えにくいですが、子どもにとっては「世界の全てから拒絶された」ほどの絶望感を与えます。該当しなくても、「そうなんじゃないか?」と勘ぐりはじめれば、もう終わりはありません。
だからこそ、家庭でのスマホルール作りは「禁止」ではなく「安全確保」の視点で行う必要があります(ただしもちろん、一方的にでなく、子どもと話し合って決めましょう)。

対策と支援:被害者になってしまったら

多様な学びの場・学び方で守る

不登校の児童生徒が安心して学べる場所を提供することは、彼らの未来を守る上で非常に重要です。学校内での「別室登校」や、学校外での「フリースクール」「教育支援センター」など、多様な選択肢が用意されています。

医療機関との連携

いじめは、心身症、抑うつ気分、精神疾患、睡眠障害など、子どもの心身の健康に深刻な影響を及ぼします。深刻なケースでは、医療機関の受診が必要です。「心の傷」は自然治癒を待つだけでは治らないこともあります。専門家の力を借りて、適切なケアを受けることが回復への近道です。

「心の問題」から「進路形成の問題」への転換

不登校支援の目標は、単に「学校に再登校すること」ではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することを目指すべきです。

【保護者の視点】「逃げる」は「生きる」こと

(保護者:いと より)
娘がいじめにあった時、私は「転校」という選択肢を提案しました。
「逃げ癖がつくのでは?」と悩む親御さんもいますが、火事の現場から逃げるのを「逃げ癖」とは言いませんよね。それは「避難」です。
学校という狭い世界で戦い続けるよりも、環境を変えて笑顔を取り戻すことの方が、ずっと価値のある「勝利」だと私は思います。

まとめ:チームとして子どもを守る

いじめ及び不登校対策には学校、専門家、医療機関、地域全体そして保護者が連携し、チームとして情報共有を行うことが不可欠です。保護者はこのチームの一員として、積極的に関わる必要があります。

  • 学校との情報共有: 子どもの家庭での様子や変化を学校に伝え、学校での状況を定期的に確認しましょう。
  • いじめ予防策への参加: 学校のいじめ防止策に関するアンケートや話し合いに積極的に参加しましょう。

いじめ問題を解決するには、ただ学校側に解決を託して待つのみでなく、生徒や保護者自らも積極的に関与し、気づきや意見を学校側にフィードバックしていく姿勢が大切です。
一人で抱え込まず、私たちや外部機関を頼ってください。必ず味方はいます。


参考文献

  1. 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
  2. 国立教育政策研究所「いじめ追跡調査」
  3. いじめ防止対策推進法(e-Gov法令検索)
  4. 畑中高子『小学校における「ことばの暴力」に関する調査~問題点と解決策について~』,学校保健研究, 45: 145-155, 2003.
  5. 宇田剛, 上山敏『いじめ防止に向けた新たな視点』,人間生活文化研究, 30: 1-13, 2020.
  6. 橘雅弥『不登校 小児科医の立場から』,子どものこころと脳の発達, 1: 59-64, 2021.
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