【取材レポート】Gakken WILL学園:「勉強」の前に「関係性」を。大手教育企業が実践する『V字型コミュニケーション』

取材先データ:学研WILL学園


運営

株式会社学研エル・スタッフィング(Gakkenグループ)

対象

小学6年生~高校3年生(※訪問支援室は幼児から対応)

拠点

首都圏・関西圏を中心に全国展開(高田馬場、横浜、大阪梅田など)

特長

「在宅(訪問)」から「通学」への段階的なサポート

URL

公式サイトへ


Gakkenグループが運営する通信制高校サポート校・フリースクール「学研WILL学園」。大手教育企業としての学習ノウハウを持ちながら、不登校支援の現場では「学習」以前の「生活・メンタル」の立て直しに重きを置いたサポートを行っています。

統括責任者・佐藤佑一郎氏へのインタビューから、その支援方針と具体的な手法についてレポートします。

この記事でわかること:

  • なぜ「勉強」よりも「関係性」を最優先するのか?
  • 不登校の心を解く「V字型コミュニケーション」の正体
  • 「在宅」から無理なく社会へ戻るための3段階ステップ
目次

最大の強みは「元当事者」のスタッフたち

なぜ、大手である学研が、ここまで「個人の心」に寄り添えるのか。
その答えは、現場を支えるスタッフたちの原体験にありました。

実は、統括責任者である佐藤氏自身も、過去に約5年間の不登校経験を持っています。「当時、一番しんどかったのは、フリースクールなどで『来てくれたらサポートできるよ』と言われることでした。『行けたら行ってるよ』と。その苦しさを知っているからこそ、家から出られない子にどうアプローチするかが原点になっています」

同校ではスタッフの採用において、「不登校を経験し、そこから立ち直った人」を積極的に登用しています。教科書的な指導法ではなく、「自分の痛みとして共感できる先輩」がいること。これが他校にはない独自の安心感を生んでいます。

「学校の先生は『なんで来れないの?』と理由を聞きますが、我々は『行きたくないよな、分かるよ』という共感から入ります。第一声が違うんです」

ルーツは「学校」ではなく「家庭教師」にあった

この「共感」を届ける手段として機能しているのが、1985年発足の「早稲田個別指導会(現・学研の家庭教師)」を母体とする「訪問(アウトリーチ)」のノウハウです。

「勉強を教える」だけじゃない家庭教師

訪問の際、必ずしも最初から学習指導を行うわけではありません。まずはスタッフが自宅へ赴き、趣味の話やゲームを通じて信頼関係を築くことから始めます。

例えば、お母さんに『一日中ゴロゴロして!』と怒られている子を、『ポチ(愛犬)の散歩に行こうぜ』と連れ出す。あるいは、女子生徒なら女性講師がキッチンでお菓子作りを一緒にする。そうやって、半年ぶりにスーパーへ買い物に行けた、というケースもあります

佐藤 佑一郎 氏

もちろん、関係性ができ、本人のペースが乗ってきたら、学習指導もしっかりと行います。勉強を教えるだけの存在ではなく、生活の楽しみを共有する「メンタルフレンド」として、子供が安心して外の世界へ一歩を踏み出すサポートを行います。

「I字型」の限界と「V字型」の可能性

子供との関わり方において、佐藤氏は「位置関係」の重要性を説きます。

学校や親は、子供と正面から向き合う「I字型(対面)」になりがちです。しかし、心理的に追い詰められている子供にとって、それは「説得」や「尋問」のような圧迫感を与えてしまいます。

I字型(対面)とV字型(並走)のコミュニケーション図解
佐藤氏が提唱するコミュニケーションの配置図

対して同校が実践するのは「V字型(横並び)」のアプローチです。

「横に並んで、同じ方向を見るんです。例えば一緒にテレビゲームをしたり、散歩で同じ景色を見たりする。対象物を間に挟んで視線を共有することで、対立構造が消え、子供は『この人は敵じゃない』と安心して本音を話し始めます」

無理なく社会へ。「3段階ステップ」の仕組み

この「V字型」の関係性を土台に、同校では以下のステップで社会復帰をサポートしています。

Step1在宅、Step2個別、Step3通学の3段階ステップ図解
無理なく社会へ戻るための3段階ステップ

「もちろん、ずっと個別のままでいたいという子もいます。でも、社会に出れば理不尽な他者とも関わらなければなりません。同世代の輪の中で揉まれる経験は、自立のために必要不可欠。最終的にはそこを目指しますが、決して焦らせず、その子のペースで進めます」

親に「今は勉強よりも」と伝えることも

取材の終盤、佐藤氏が保護者に向けて強調したのは、「学習に対する価値観の転換」でした。

「親御さんはどうしても勉強の遅れを気にされます。でも、エネルギーが枯渇している時に無理やり勉強させても逆効果です。私たちは保護者の方に『今は勉強の話はしないでください、我々に任せてください』とお伝えします」

第三者であるスタッフが間に入り、学習支援の役割を引き受けることで、親子関係の悪化を防ぐ。それと同時に、学習を単なる「進学の手段」としてではなく、人生を豊かに生きるための「目的」や「意味」として捉え直すきっかけを作る。これが同校の目指す教育スタンスです。

当サイト基準軸からみる「Gakken WILL学園」

「人としての寄り添い」を重視。

特別な療育プログラム(SST等)や専門医の配置があるわけではありませんが、佐藤氏をはじめ「不登校や挫折の経験があるスタッフ」が多く在籍しています。合理的配慮だけでなく、「苦手なことは苦手と言える力」や「人を頼る力」を育む、実践的なコミュニケーション支援が中心です。

「メタバース」や「趣味」の範囲で導入。

プログラミングやeスポーツなどの講座がありますが、プロクリエイター育成を主眼とした専門学校的なカリキュラムではありません。あくまで「学習への入り口」や「他者とつながるツール」として活用されています。

「自己決定」に基づく多様な進路。

大学進学(約40〜60%)だけでなく、専門学校(約10〜30%)や就職も尊重されます。また、発達特性のある生徒のために、就労移行支援事業所への紹介なども行っており(約10%)、個々の特性に合わせた現実的なキャリア支援が可能です。

「段階的」な選択肢が豊富。

「在宅コース(訪問)」「個別指導(別室)」「少人数クラス(通学)」と、状態に合わせてスモールステップで移行できる仕組みが整っています。無理なく集団へ慣れていける点が最大の特徴です。

公立中学校の認定率は約97.5%。

特に中等部においては、在籍校との連携を密に行い、高い出席認定率を誇ります。これにより「学校に行けない罪悪感」を軽減し、高校進学への道筋を確保しています。

「メタバースキャンパス」を展開。

顔出しなし・アバターでの登校が可能です。最初はカメラOFF・マイクOFFで文字チャットから始め、少しずつ自分の言葉で表現できるようにサポートする「スモールステップ」を大切にしています。

「Gakken」のノウハウをフル活用。

Gakkenグループの豊富な教材に加え、他社のICT教材「すらら」や、非認知能力養成プログラム「エナジード」などを導入。基礎学力の定着から大学受験対策まで、さらには生きる力の育成まで、幅広いカリキュラムを提供しています。

サポート校としては標準的。

コースによりますが、月額授業料は約4.4万〜6.6万円程度(別途入学金・活動費等あり)。個別指導や訪問支援の手厚さを考慮すると、コストパフォーマンスは高いと言えます。

「まずは資料請求」から始めてみませんか?

学研WILL学園では、随時「無料教育相談」や「学校見学」を行っています。
無理な勧誘はありません。お子様の現状を相談するだけでも、解決の糸口が見つかるはずです。

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