不登校ブックガイド|学校に行けない/行かない/行きたくない:「不登校拳銃説」で読み解く、子どものSOSと親の覚悟

・書籍タイトル: 学校に行けない/行かない/行きたくない 不登校は恥ではないが名誉でもない
・著者: 富田 和巳
・出版社: へるす出版
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・目次:
I 不登校の本質を考える II 不登校拳銃説―身体症状/引き金/弾丸/火薬とは III 不登校に向き合う―診断・治療・予後 IV 薬物療法の進め方 V はっきりした原因で学校に行けない子どもたち VI 不登校後に行く学校 単位制・通信制・バイパス校など VII 不登校に付随する問題 家庭内暴力・引きこもり・ニート・フリーター VIII 不登校における究極の予防――強い心を育てる

目次

不登校は「恥」ではないが、「名誉」でもない

「義務教育期間に学校に行かない行動を肯定してはならない」…のか?

不登校の書籍や支援論の多くは、「子どもの気持ちに寄り添おう」「学校に行かなくてもいい」という受容的なメッセージで溢れています。しかし、本書はそれらとは一線を画す、ある種の「厳しさ」を持った一冊です。著者は30年以上にわたり不登校児を診療してきた小児科医であり、こども心身医療研究所の所長。 「学校に行かない選択」や「不登校の権利」といった言葉が市民権を得つつある現代において、著者は「義務教育期間に学校に行かない行動を肯定してはならない」と警鐘を鳴らします。それは決して古い価値観の押し付けではなく、「将来、社会集団の中で生きていく力を失わせてはならない」という、医師としての強い危機感と愛情に基づくものです。

ポイント: 4つの要素で不登校の全体像を捉える

本書の核心は、著者が提唱する「不登校拳銃説」にあります。これは、不登校という現象を拳銃の発射に例えて、複雑に絡み合う要因を整理する思考フレームワークです。

・身体症状(発射された弾による傷): 腹痛、頭痛、発熱など。これらは不登校の初期サインであり、子どもなりの「表現」です。
・引き金(出来事): 先生に叱られた、友人関係のトラブルなど、直接のきっかけ。
・弾丸(本人の素因): 子どもの気質、性格、感受性の強さなど。
・火薬(環境): 家庭環境、学校の雰囲気、そして日本という社会そのもの。

多くの親や教師は、「引き金(誰がいじめたか、何があったか)」や「身体症状(お腹が痛い)」ばかりに目を向けがちです。しかし、拳銃(環境)に火薬(家庭や社会の歪み)と弾丸(本人の特性)が装填されていなければ、引き金を引いても弾は出ません。この4つの視点を冷静に分析することで、「なぜ我が子が?」という問いへの答えが見えてきます。

この本について

・独自の視点
本書は、世に溢れる「不登校肯定論」に対する「異見」として書かれています。「学校に行かないことは、将来の社会的自立を阻害するリスクがある」という現実的な視点に立ち、安易な「待ちの姿勢」や「登校刺激の全否定」に疑問を呈しています。特に、不登校が長期化することで、ニートや引きこもりに繋がるリスクを直視している点は、長期的な自立(=社会参加)をゴールとする保護者にとって無視できない視点です。

・相対評価
・評価軸の傾向(ポイント形式) 理論(抽象) ⇔ 方法(具体): 理論と実践のバランス型。「拳銃説」という理論をベースに、医療機関との付き合い方や薬物療法など具体的な対応策が示されています。
・ドライ(客観) ⇔ ウェット(感情): ドライ(客観)。医師の視点から、あくまで冷静に、時には厳しく現状を分析します。
・今すぐ(短期) ⇔ じっくり(長期): 長期視点。目先の安心感よりも、数十年後の子どもの人生を見据えた提言がなされています。 当事者目線 ⇔ 支援者目線: 専門家(医師)目線。親が陥りやすい思考の罠や、医療機関の選び方などがプロの視点で語られます。
・ポジティブ(肯定的) ⇔ ニュートラル(客観的): ニュートラル〜クリティカル。現状を楽観視せず、問題点を鋭く指摘するスタイルです。
・ 発達特性との関連度: 3。発達障害が背景にあるケースや、起立性調節障害などの身体疾患との鑑別についても章を割いて解説されています。

まとめ: 親としての「軸」を取り戻すための処方箋

サブタイトルの「不登校は恥ではないが、名誉でもない」には、子どもが苦しんでいる事実を受容しつつも、それを「特別な権利」や「素晴らしい選択」として美化してはならないという戒めが込められています。 本書は、子どもに迎合しすぎず、親として、人生の先輩として、毅然と導くことの大切さを思い出させてくれます。「見守る」という言葉の下で思考停止になりがちな私たちに、「本当にそれで子どもの将来は守れるのか?」と問いかけてくる一冊です。

スガヤのふせん ~個人的ブックマーク

本書は、いわゆる「受容と共感」を中心としたカウンセリングマインドとは一線を画す、かなり「辛口」な本です。「甘い言葉」だけでは解決しない現実に対する、ストレートなアンチテーゼです。

読んでいると、耳が痛くなる保護者の方も多いかもしれません(ボクもその一人でしたが)。しかしその厳しさは、著者が長年現場で見てきた「不登校のその後の現実(引きこもりやニート化)」への憂慮から来ていることが伝わってきます。

特に印象的なのは、やはり「不登校拳銃説」です。 ボクたちはつい、「引き金(学校で何があったか)」という犯人探しに躍起になったり、「身体症状(お腹が痛い)」にオロオロしたりしてしまいます。しかし著者は 「弾丸・火薬・引き金のいずれが欠けていても弾丸は発射されない」 「大切なことは拳銃に弾丸と火薬が装填されていた事実である」と指摘します。

つまり学校でのトラブルはあくまで「引き金」に過ぎず、そこに至るまでの本人の感受性(弾丸)や、家庭・社会の環境(火薬)に目を向けなければ、根本的な解決にはならないという指摘です。これは、「学校さえ変われば」「あの子さえいなければ」という他責思考から、「親として家庭で何ができるか」「子どもの特性をどう支えるか」という自責(主体的)思考へと切り替えるきっかけをくれます。

また、著者のスタンスは「学校復帰」を強く推すものですが、それは単に「皆と同じにさせるため」ではありません。 「将来、この社会で生活していくには、義務教育の学校にも行けないようでは困る」 「暦年齢に求められる社会集団に参加できない者が増加した結果」 という言葉にあるように、あくまでゴールは「社会的な自立」にあります。

「不登校は恥ではないが名誉でもない」 このタイトル通り、過度に悲観せず、かといって開き直って美化もせず、淡々と事実を見つめ、我が子の「弾丸」と「火薬」に向き合う。そんな冷静さを取り戻したい時に、読み返したい一冊です。

ただし「劇薬」につき、読む状況にはご注意を(心境に余裕のあるとき、ぜひ)

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