不登校ブックガイド|学校 行きたくない 不登校とどう向き合うか:支援制度も使い方次第、まずは子の気持ちに寄り添い専門家に相談を

・書籍タイトル: 学校 行きたくない 不登校とどう向き合うか
・著者: 榎本博明
・出版社: 平凡社
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目次

学校に行きたくない!という心の叫び

不登校の子どもが増え続けている現代において、そもそも「学校行きたくない」という子どもの心の裏側には、一体どのような心理が隠されているのでしょうか 。かつて不登校が「問題行動」として捉えられていた時代から、文部科学省が「不登校は問題行動ではない」と方針転換したように、保護者の意識も変化しています

本書は、心理学者の視点から、増加する不登校の原因や、学校に行きたくない子どもたちの心の様相を深く掘り下げ、親がどう向き合うべきかという心構えを提示しています 。単なる原因探しではなく、不登校の心理的な背景と時代的な流れを理解するための基礎的な一冊です。


ポイント: 現実との折り合いと社会適応力

著者は、不登校が多様化している現代において、その根底にある心理的な課題を分析し、「無理に学校に行くことがすべてなのか」という根本的な問いを投げかけます 。

  • 「学校行きたくない」の心理: 不登校の背景には、学校に居場所がないこと、思い通りにならない現実と折り合いをつけられないこと、対人不安が強いこと、そして環境の変化に非常に弱いといった要因があります. 特に、社会に出ていくための非認知能力(非認知能力の大切さ)が育ちにくい生育環境も指摘されています.
  • 不登校の要因の変遷: 不登校問題の時代的な流れの中で、原因は生徒の性格や家庭環境といった個人に起因するものから、学校内の問題や社会的な要因へと多様化しています. この要因の変化が、親が不登校に対応する際の困難さの一因となっています.
  • 学校の必要性: 学校とは、社会に出る前の準備期間を過ごす場であり、最低限必要な知識や社会性を身につける場であると同時に、頭を鍛え、人間関係のスキルを体得し、心を鍛え、自分を知るための場であると定義されています.
  • 向き合い方: 著者は、学校に復帰しなくても勉強する場はあり、不登校経験者の多くが高校に進学していることから、無理して学校に行かなくてもよいとする風潮を肯定的に捉え、子どもの心理的な負荷を軽減することの重要性を説きます.

この本について

・独自の観点

書籍の強みは、心理学者の視点から、不登校という現象の裏側にある子どもの心の葛藤を掘り下げ、親が取るべき冷静な心構えを基礎から学べる点にあります。

・相対評価

  • 理論(抽象) ⇔ 方法(具体): やや理論に特化。学校に行きたくないという子どもの心理的な背景の分析に重点を置いています.
  • ドライ(客観) ⇔ ウェット(感情): ニュートラル。子どもの心理に寄り添いつつも、データや社会的な傾向を客観的に分析する姿勢です.
  • 今すぐ(短期) ⇔ じっくり(長期): じっくりに特化。社会に出る前の準備期間として不登校期間を捉え、長期的な視点を推奨します.
  • 当事者目線 ⇔ 支援者目線: 支援者目線に特化。心理学的な知識を基に、保護者や教師が子どもの内面を理解するためのヒントを提供します.
  • ポジティブ(肯定的) ⇔ ニュートラル(客観的): ニュートラル。不登校が増加する時代的な背景を分析し、それが一概に悪いことではないという客観的な視点を提示します.
  • 発達特性との関連度: 2。個別の発達特性については言及が少ないですが、社会適応力の困難や非認知能力といった広い視点から問題を捉えています.

まとめ: 学校だけがすべてではない、自立への心の準備

本書は、親が抱える「学校に行かないといけない」という社会的常識の呪縛から解放されるための心の準備を促します。不登校は、子どもが現実との折り合いをつけられずに生じている心理的な葛藤の現れであり、その葛藤に寄り添い、理解することこそが親の最も大切な役割です。

学校以外にも、最低限必要な知識や社会性を身につける場はあり、社会で自立していく力を育むことに焦点を当てること。これが、不登校という困難な時期を乗り越えるための鍵となります。

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スガヤのふせん ~個人的ブックマーク

基本的に「学校に行けるなら、行ったほうがよい」という前提で、「登校刺激」も「避けるということが、不登校への対応として広まっているが、そうした”風潮”に染まり、子どもが家に引きこもっていてもよいといった考えを安易に持たないように心がけたい」と警句を発しています。某レビューサイトではここを捉えてか「とにかく行けということか!」と反応されている方もいるようですが…決してそんなこともなく、「学校に生きにくいのであれば別の形で教育を受けることができる」と明記されています)バランスの良い書籍かと思いました。

こと強調されているのは、タイトルにおける「どう向き合うか?」について、まず”親が独りで悩まない”ようアドバイスされています。

わが子が不登校状態になると、どんな親でも慌てるものである。そして、一刻も早く学校に行かせなければと焦った対応をしがちである。だが、そのようなときは、まずはそうした事例を多く経験している学校の先生やスクールカウンセラー、教育支援センターなどの専門家に相談すべきだろう (「周囲はどのように対応すべきか」より)

なかで警戒すべきは、「不登校からひきこもりの移行」と、以下の「良くないビジネス」に引き寄せられてしまうこと

藁をもつかむ思いで不登校支援機関や施設を頼るが、そこが支援という名のもとにビジネス重視の運営を行っている場合は、自立支援どころかずっと依存し続けるお客にさせられてしまう恐れもあるというわけだ。そして、難しいのは、こうした利益重視の不登校ビジネスと、真に不登校の子の支援を行うことを目指している心ある不登校ビジネスとが、見た目にはなかなか判別がつかない、ということである(同上)

様々な子ども(のタイプ)と、それに対して「様々な支援」がある現代だからこそ、広く平たく偏らず、子どもを中心にアンテナを張りつつ、バランスよく頼っていきましょう、という主旨かと思いましたし、ボクも概ね同意です(学校は”コスパよい”という指摘も、さもありなんかと)

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