・書籍タイトル:不登校ってダメなこと? 不登校だった子どもを持つカウンセラーが伝える再登校をゴールにしない子育て
・著者: 石橋典子
・出版社: 現代書林
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助産師の言葉と「大丈夫」の心構え
「これからいろんなことが起きてもね、お母さんが『大丈夫』って思っていれば、大抵の場合大丈夫なのよ」
著者は、自身の息子が不登校になった際、この助産師の言葉を思い出し、冷静さを取り戻しました。息子が小2のときに離婚し、シングルマザーになったという背景も重なりながら、著者は「マイナスばかりではない、人と違う状況でも、この世で幸せをたくさん感じられる子に育てよう」と決意します。
本書は、不登校を経験した子どもの親であり、かつカウンセラーである著者が、自身の体験と臨床的な視点から、「再登校をゴールにしない」という新しい子育ての哲学と具体的な道筋を示すものです。親が持つべき「大丈夫」の心構えが、子どもを真の自立へと導く鍵であると説きます。
ポイント: 「体調最優先」と「自分の頭で考える」
著者が息子さんの不登校に直面したとき、OD(起立性調節障害)というはっきりとした理由があったため、「勉強より体調最優先で暮らしても良いのでは?」「不登校ってダメなことなのか?」と思い巡らせました。この経験から、本書は親が「学校」という既成概念から解放され、子どもの「体調」と「意思」を尊重することの重要性を強調します。
- ゴールを「再登校」から「自立」へ: 「学校に行かせること」をゴールにすると、親は焦り、子どもは自己肯定感を失います。ゴールを**「自分で考えて、社会で生きていく力(自立)」**に設定し直すことで、親は子どもへの接し方を根本から変えることができます。
- 物理的距離と自由: 著者は、息子が18歳で「自分の頭で考える」こと、そして「釣り人として生きていく」道を選んだとき、物理的な距離(地方での生活)を尊重しました。親の私が気づかされたのは、「自分の頭で考えることの大切さ」であり、常に一緒にいなくても、お互いがやりたいことを思いきりできる環境に身を置くことが、最も信頼できる親子関係を築くと示します。
- 親の自己肯定感: 子どもが不登校になったとき、親は「私が悪い」と罪悪感を抱きがちです。しかし、親自身が「自分は一生懸命やった」と自己肯定感を持ち続けることが、子どもの自己肯定感を育む土台となります。
この本について
・独自の観点
書籍の強みは、著者自身が不登校経験者の親であるカウンセラーという立場から、保護者の罪悪感や孤立感に強く寄り添い、新しい価値観を提示している点です。
・相対評価
- 理論(抽象) ⇔ 方法(具体): 両立。子どもの「体調優先」という具体的な方法論を示しつつ、子育てのゴールを「自立」に置くという哲学を提供します。
- ドライ(客観) ⇔ ウェット(感情): ウェット(感情)。著者自身の体験談や心情が多く語られ、保護者の不安に深く共感します。
- 今すぐ(短期) ⇔ じっくり(長期): 長期。再登校という短期的な目標を否定し、子どもの人生全体を見据える長期的な視点を推奨します。
- 当事者目線 ⇔ 支援者目線: 両者の融合。不登校経験者の親という「当事者目線」と、カウンセラーという「支援者目線」を融合させています。
- ポジティブ(肯定的) ⇔ ニュートラル(客観的): ポジティブ(肯定的)。不登校という状況を「子どもの成長の機会」として肯定的に捉え直します。
- 発達特性との関連度: 4。OD(起立性調節障害)という身体的特性が不登校の明確な理由であった事例に基づき、体調最優先の考え方を強く推奨しています。
まとめ: 「再登校」をゴールにしない子育ての決意
本書は、不登校という状況がもたらす最大のメリットは、親子がお互いの「自由」を尊重し、本当の「自立」とは何かを学び直す機会であると教えてくれます。
親が「学校に行かなくても大丈夫」「あなたは幸せになれる」と信じ、「再登校」という社会的常識の呪縛から解放されたとき、子どもは初めて自分の頭で人生を考え、歩み始めるエネルギーを得ることができます。
この本は、すべての保護者に対し、「不登校ってダメなこと?」という問いを投げかけ、最終的に「大丈夫。あなたのせいじゃない」という強い肯定感と、親自身の新しい人生へのチャレンジを応援する力強い指針となるでしょう。
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スガヤのふせん ~個人的ブックマーク
本著は「再登校をゴールにしない」という強いメッセージのもと、親子双方が世間や社会の「普通」という既成概念に対して「ノー」を突きつけ、「自分の頭で考える」ことを選択した決断力と行動力が描かれます。常識を打ち破る「自己決定」の力…つまり「哲学」に近い次元での体験談だと思いました。
作中に登場するカウンセラー「のり子」による、割と相談者に厳しい(!)向き合い方も、そんな力強さの象徴です。たとえば「それはお母さんが安心したいからなのではないですか?」「ただ『学校へ行ってほしい』と思うのは親のエゴではないでしょうか?」など、かなりど真ん中ストレートで核心を突いていきます。
この哲学的な生き方の決断が導いた結果こそが、最も力強い”証明”となっていて、巻末で語られる息子さんの”その後”の話が、「学歴がなくても、自分の得意を突き詰めれば、社会で自立し成功できる」という従来の教育観を覆す力強い体験談であり、メッセージとなっています。
作者は以下のように心中を語っているのですが…
実は、自分の子育ての経験を本にして世にに出すことはすごく悩み、原稿を進めているときにも、やはり本にするのはやめようかと心の中で葛藤することが頻繁にありました。
なぜかというと、いわゆる「普通」ではない子育てをしてきたので、内容を読んだ方の反応が怖かったからです。
ただ、純粋に「こういう人がいる」という例を物語にして、それを読んだ人が「世の中には色んな人がいて、みんながそれぞれ生きているんだ」と、そして各人物の前に進む「力」を感じていただけたら嬉しいです(「はじめに」より)
少なくともボクは、この本にものすごく励まされ、またボクや子どもたちの生き方を肯定する勇気をいただけました(ありがとうございます!)
これからも子育てに迷ったら「それは親が安心したいからなのではないですか?」というのり子の言葉を思い出して”うっ…”となりながら…それでも進んでいきたいと思います。


