ブックガイド|明るい不登校:創造性は「学校」外でひらく

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目次

掲載情報

・書籍タイトル: 明るい不登校:創造性は「学校」外でひらく
・著者: 奥地 圭子
・出版社: NHK出版
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https://amzn.asia/d/cCIqvvc


不登校は「創造」への機会である

不登校を「挫折」や「失敗」と無意識に決めつけていませんか?もし子どもがより「自分らしく生きるため」の創造的なエネルギーを蓄える期間であり、よりよい生き方を模索する機会だったとしたら、あなたは「不登校」を選びますか?

本書は、フリースクール「東京シューレ」創設者である奥地圭子氏が、従来の学校信仰を180度転換させる価値観を提示します。

この本が説く最も重要な一歩は、親自身が「学校でないと子どもは成長しない」「学校が唯一無二の教育手段である」という思い込み(常識)を手放すことです。この思い込みを手放すことこそが、子どもの創造的な自立を支援するための決定的な一歩となります。


ポイント:「学校」システムからの脱却と創造性の開花

学校信仰からの脱却と価値観の転換

この書籍が説く「180度違う価値観」とは、学校というひとつのシステムに依存しないことです。

均質性からの脱却: 学校は時に、競争的で画一的な価値観を押し付け、子どもの持つ多様な個性や創造性を抑圧する空間となりがちです。
創造的な機会の尊重: 不登校とは、その均質な規範が子どもに合わない場合の「必然的な反応」であり、子ども自身が「自分らしく生きる」ための「創造的なエネルギーを蓄える期間」であると、本書は全面的に肯定します。

創造性と自立の結びつき

本書は、子どもの創造性や才能は、管理的な学校の枠組みの中ではなく、学校外の自由な環境でこそ最大限に開花すると主張します。

創造性の開花: 不登校を経験した子どもたちは、フリースクールなど学校外の多様な学びの場で、自らの興味や特性を深く探求し、社会的に自立している事例が多く報告されています。
不登校は”ポジティブ”な転機: 不登校は、親が抱くネガティブなイメージ(「挫折」「失敗」)ではなく、子どもの自立という未来を拓くためのむしろポジティブな転機であると位置づけます。


この本について

相対評価

・ 理論(抽象) ⇔ 方法(具体): やや具体寄り。フリースクールの理念や活動事例など実践的な側面も豊富です。
・ ドライ(客観) ⇔ ウェット(感情): ウェットに極めて傾倒。著者自身の体験と、子どもたちの成功事例から得られた強い感情的メッセージが核です。
・ 今すぐ(短期) ⇔ じっくり(長期): じっくり(長期)に極めて特化。「社会的自立」や「創造性の開花」という長期的な人生のプロセスを重視します。
・ 当事者目線 ⇔ 支援者目線: 当事者目線と支援者目線の融合。当事者の声と、支援者としての「180度違う価値観」の習得を促します。
・ ポジティブ(肯定的) ⇔ ニュートラル(客観的): ポジティブに極めて特化。不登校を「明るい」もの、社会への「問題提起」と捉え、全面的に肯定しています。
・ 発達特性との関連度: ★★☆☆☆ 2(学校制度と子どもの個性のミスマッチを構造的に論じるが、個別の特性への深い言及は少ないです)。

独自の観点:親が手放すべき「学校信仰」という常識

  • 構造的な強み: この本は、従来の支援が依拠する「学校復帰が絶対」という価値観そのものが、親の「内なる呪縛」となっていると指摘します。そうではなく、親が持つ「学校でないと子どもは成長しない」という思い込みを手放すことで初めて、支援が始まると主張します。
  • 学校以外での教育・成長 登校刺激や行動療法が子どもを「システムに戻す」ことに集中するのに対し、本書は「システムから脱する(外で育てる)」という対極の成功モデルを複数提示し、新たな教育の可能性を提示します。

まとめ:親の心構えと「違和感」の尊重

親の役割の転換

不登校の経験は、親が自分の子育てや社会に対する価値観を見つめ直すための、かけがえのない機会です。親がすべきことは、子どもを「まっとうな大人」の規格に無理に合わせようとせず、子どもの「違和感」を自らの人生を問い直すための創造的なエネルギーとして尊重することです。

親が「学校信仰」という重荷を手放し、子どもの「自立と創造性」を静かに信じる姿勢こそが、子どもが力を取り戻し、新しい生き方へと進むための土台となるでしょう。


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スガヤのふせん ~個人的ブックマーク

こと不登校にならなければ「フリースクール」の存在や内情を、詳しく知る機会はないのではないでしょうか?そのときフリースクールが先入観なく、”学校と同じくらい”魅力的な選択肢として提示されたら…ボクたちはどちらを選択するでしょうか?

ことフリースクールの代表格「東京シューレ」は、これまで奥地氏が自身の人生をかけて作り上げてきた、創造の産物でありその「独創性」は比類なき存在だと思います。なかで子どもたちが同じく独創的になりやすいのは、あまり想像に難くない。

法律の基本指針が出され、施行され2017年2月からいま2年数カ月が経ちました(※出版当時)。法律があることによる変化をさまざまな場面で感じています。フリースクールや教育支援センターには小学生が増えています。若いお父さん、お母さんが、うちの子は学校に合わない、と感じた時、昔だったら「低学年から学校へ行かないなんてとんでもない」と無理な登校強制をする場合が多かったのですが、現在「学校以外もありかな」と、教育に対する価値観を拡げている人が増えていると感じます。また、公民連携がやりやすくなってきています。以前は、学校の先生のところに、親の会の情報や「フリースクールがありますよ」という情報のチラシなどを持ちこんで「不登校のお子さんの親に渡して下さい」なんて頼みにいくと、「公的な立場の人間が民間のそんなところを紹介していいんでしょうか」と渋い顔をされるものでした。最近は、「公民連携の時代になりました」と話してお願いすると、快く、「情報提供は必要ですよね」といって下さるところが増えてきました。学校の担任やスクールカウンセラーから紹介された、といって、親の会やフリースクールに来られる方も珍しくなくなりました(P.209)

奥地氏およびその関係者のおかげで、社会と教育は大きく変わりつつあります。こと社会が変わるまでに30年なのだとすれば、東京シューレの設立は1985年。上記のような認識がもはや”当たり前”になりつつあり、あと10年もすれば「フリースクールに通っていた」など言うと「それはラッキーだったね!」など受け止められるような社会になるのかもしれません。

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