ブックガイド|不登校は”9割”解決できる:親の不安を断ち切り行動を促す「保証つき」指南本

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不登校の9割は親が解決できる | 小川 涼太郎著 小野 昌彦監修 | 書籍 | PHP研究所 親の行動を少し変えるだけで不登校は解決できる! たった3週間で90%以上の再登校を実現する著者が、驚きの教育ルールを大公開。
  • 書籍タイトル: 不登校の9割は親が解決できる 3週間で再登校に導く5つのルール
    著者:小川 涼太郎
  • 出版社: PHP
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目次

「”9割”解決できる」の心理的効果

不登校に悩む親が抱える「本当に解決できるの?(解決したい!してほしい!)」という根源的な絶望と葛藤に対し、本書は「不登校は必ず解決できる」というタイトルで強い断定を提示します。

さてこの断定に賛否はあると思うのですが…個人的には「賛」です。この強いメッセージが親の絶望に作用する心理的効果は絶大で、単なる保証ではなく「親にできること」で解決できるという希望と、「行動の羅針盤」を与えることにつながります。

  • 内容の普遍性: 本書の内容はごく当たり前で、家庭で行えるシンプルにして基本的なものをまとめた書籍だと思いました。筆者周辺では「炎上」など話題もついてまわるようだったのですが…良い意味でバイアスを解除できました。こと書籍内容では、不登校の「入門書」としてオススメです。
  • 解決の定義: 著者が言う「解決(必ず再登校する)」は、親が不安による衝動的な介入(パニック)を止め、冷静に「本のルール」に従って行動すれば、結果は約束されるというロジックに基づいています。”書籍の通り”に”やりぬけば”確かに、9割は解決できるのかもしれません

「必ず解決できる」という主張は、親が結果を約束されているからこそ、これまでの子どもを過剰にコントロールを反省し手放すきっかけとなります。また動じず安心して「見守る体制」に入り、維持して、子どもの自立を待つことができるという「モード変更」に向けた一歩としても、まずは信じて実践するのみかと。


本書の核心:親が「動じない」ための実践的ステップ

本書が解決に必須とするのは、なにより「保護者が動じない」こと。親の動揺こそが、子どもの不安を増幅させる最大の要因であると捉え、そのための具体的なステップを提示します。

独自の視点:「必ず」という言葉の裏側

この「必ず解決できる」という主張を、単なる保証ではなく、「親がすべき行動と、その後の責任」を明確に定義する言葉として解釈します。

  • 親の責任の限定: 親がパニックを止め、冷静に本のルールに従って行動すれば、結果(解決)は約束される。これは、親が結果を約束されているからこそ、子どもを過剰にコントロールするのではなく、安心して「見守る体制」に入り、子どもの自立を待つことができるという論理に繋がります。
  • 行動のシンプル化: 不登校の「入門」として優れており、内容はごく当たり前で、家庭で行えるシンプルにして基本的なものをまとめた書籍です。親はまず、目の前の小さな行動(基本)に集中するだけでよいという安心感を与えます。

注意点も

ただし、「再登校」により本書の原理原則を手放してしまうことは、「再登校”さえ”すればいいのだ」という短期的な成功に囚われてしまうことにつながる恐れもあります。

また 「◯日以内」という期間目標や、多数紹介される成功事例(他の保護者のケース)を意識しすぎるあまり、比較したり焦ってしまう可能性も。これは親の精神的な消耗につながり、結果「動揺」を誘いやすい。親の身心を中長期的に安定させることが不可欠ならば、特に定性的な情報は要らないのでは?とも思いましたが、一方で「ビジネス」ならばさもありなん。このあたりは、読者が差し引いて読めるリテラシーをもっていることに期待したい。


評価軸の傾向と独自の観点

評価軸の傾向(ポイント形式)

  • 理論(抽象) ⇔ 方法(具体): 方法に強く特化。「具体的な解決手順」の提示が中心です。
  • ドライ(客観) ⇔ ウェット(感情): ウェットに特化。保護者に希望を与え、不安を解消するトーンが中心です。
  • 今すぐ(短期) ⇔ じっくり(長期): 今すぐ(短期)に特化。「解決できる」という即効性と、具体的なステップを重視します。
  • 当事者目線 ⇔ 支援者目線: 支援者目線に特化。親がどう行動し、どう指導するかに焦点が置かれています。
  • ポジティブ(肯定的) ⇔ ニュートラル(客観的): ポジティブに特化。「必ず解決できる」という強い断定と希望を提示します。
  • 発達特性との関連度: ☆☆☆☆☆ なし

独自の観点:親の心理的責任の明確化

そもそもの親の「不安」という感情を、子の行動を妨げる最大の障害とみなし、その感情を「必ず解決する」という保証によって取り除く、極めて心理的に巧妙な構造を持っています。また他の(たとえば「コンプリメント」…あちらは99%?)本が「愛情の言葉」を核とするのと動揺に、本書は「結果の保証」を核とすることで親の不安を解消し、「行動(方法)」へと集中させる”併せ技”があります。


まとめ:親の「動じない心」が自立を導く

この本は、不登校問題の渦中にいる親に対し「必ず解決できる」という揺るぎない希望と、そのためのごく基本的な行動原理を提供します。親が「動じない」という姿勢を保ち、結果を焦らず、この本で説かれる原理原則を愚直に実行すること。これが、子どもの「自ら立ち直る力」を信じ、自立を導くための鍵となります。

「必ず解決できる」という言葉を信じ、ゆえに親が冷静で一貫した「動じない心」を持つことこそが、子どもがその自立への道を歩み始めるための最も確かな土台となる。そう考えれば「9割」はあえてこのまま…がよいのだと思いました。

スガヤのふせん ~個人的ブックマーク

ご存知「スダチ」代表の著作です。ネット上では結構「言い切り」型の言説が目立つところもありますが…本著はニュートラルを保ち、また初歩的な指南本としてストレスなく読めました。

言い切り(「9割が」)というのはデータに基づいており(根拠については様々ですが…)たしかにまあ、仮に占い師でも「必ず当たる!」と言われたほうが「やってみよう!」と思うものです。逆に「本読んでも役に立たない!」という言説について言えば、読後に”書いてあったことを100人に1人しか実行しない”という刹那で一回的な読書体験にあるのかもしれません。

まずは信じてやってみて!後は続きはあなた次第…というところでしょう

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