掲載情報
- 書籍タイトル: 不登校クエスト
- 著者: 内田 拓海
- 出版社: 飛鳥新社
- ご購入はこちらから: https://www.asukashinsha.co.jp/bookinfo/9784868010302.php
「天性」よりも「違和感」
不登校の子どもがある日「音楽家になりたい」と言ってきたら?
子どもの将来を、『才能』という言葉で片付けていませんか?
この本は、小・中学校の9年間、たった1日も通学せずに育った作曲家、内田拓海氏が、その稀有な経験を語る、金字塔的なノンフィクションです。著者は、成功の理由が「天才(天性)」や「特別な才能」で片づけられることを明確に否定します。なぜなら、「天才という言葉自体、ある意味でとても無責任な言葉」であり、負い目を感じる人が「自分とは別世界にいる人間だ」と思い込むための使い勝手の良いラベリングに過ぎないからです。
著者の成功の真の理由は、「与えられたルールや強制への違和感を、そのままにしない姿勢」でした。幼い頃から抱えた「なんで誰かに決められないといけないの?」という疑問こそが、この物語の原動力なのです。
私たちは、この本を「違和感を力に変えて、自らの人生を拓く」ための指南書として読み解きます。著者の生き様から学べる通り、「違和感」とは実は自分の人生を切り開き、社会を改めて問い直す強力な「才能」なのかもしれません。
9年間の自宅学習で育まれた「自立的な選択」
義務教育のレールから一度も乗ったことがない著者が、自宅で育んだ能力。それは、「自ら考えて取捨選択する力」です。
- 無駄な努力の拒否: 著者は、納得できない九九の暗記を拒否し、「掛け算なんて覚えなくても、足し算だけでもできる」と主張しました。また、無味乾燥な教科書や面白くない授業は「硬いパンのようで、面白さを感じることができない」と、能動的に学ぶことを選びました。
- 情熱への集中: 興味のないことにエネルギーを費やさず、RPGのゲーム音楽への情熱に集中しました。そして、坂本龍一の楽曲に感銘を受けた瞬間から、「自分もやってみたい」という内発的動機に従い、東京藝術大学受験を決意します。
なかで、両親は以下の姿勢で著者を支援したとのこと。
- 親の役割: 両親は、周りから厳しい言葉を投げかけられても、「学校へ行け」「勉強しろ」と一度も強制せず、「自分の好きなことをやりなさい」と、子どもの意思を徹底的に尊重しました。この「慌てずに見守る」親の姿勢が、子どもが自らの優先順位に従って成長する土台となりました。
音楽家としての「孤独」と「共同体」の発見
著者は、不登校期間に同世代との「競争」から守られました。「小学校や中学校に通って勉強したり、あるいは部活動などのコミュニティに属していく中で、評価されたり比較されたりするうちに、いつのまにか潰されたり失われていってしまいます」という一般的な競争から守られたのは幸運でした。
- 孤独からの脱却: 中高生の頃、オンラインゲームやフリースペースを通じて、「誰かと話したい」という欲求に気づき、自ら「穴を出る」行動を選択します。この経験は、不登校の子どもが「他人とのコミュニケーションが難しい」という社会のバイアスを、共同体への積極的な参加によって打ち破る一つの方法を示しています。
- 自立への飛躍: 東京藝術大学受験という困難な課題に対し、著者は「正しく諦めずノックし続ければ『最後は必ず勝てる』」と、根拠のない自信と諦めない努力で挑みます。この時、勉強やピアノの技術は「情熱を形にするためのテクニック」に過ぎず、最も大切なのは「自分の『好き』を取り入れる」という内発的な動機でした。さらに、「小・中学校の9年間を不登校で過ごした時。ほかの大人が手に引かれてレールの上を歩いているのを見て、その暗がりに慣れていた」という自身の経験が、人生を支えてくれたと述べています。
本の特徴:当事者の声とポジティブな長期視点
相対評価
- 理論(抽象) ⇔ 方法(具体): 「方法(具体)」に強く特化。自らの人生を切り拓くという具体的な行動が中心です。
- ドライ(客観) ⇔ ウェット(感情): やや「ウェット(感情)」。当事者自身の内省と強い感情が核です。
- 今すぐ(短期) ⇔ じっくり(長期): 「じっくり(長期)」に特化。義務教育期間から大学、社会人を含む長期的な人生観を提示しています。
- 当事者目線 ⇔ 支援者目線: 「当事者目線」に特化。子どもの主体的な選択と内省が主題です。
- ポジティブ(肯定的) ⇔ ニュートラル(客観的): 「ポジティブ(肯定的)」に強く特化。不登校を成功経験として肯定しています。
- 発達特性との関連度: ★★★☆☆ 3(特性による学び方の違いに言及あり)
まとめ
この物語は「人生には、そんな方法以外にもたくさんチャンスがあったのかもしれない」という振り返りで締めくくられます。しかし人生に「正解」はなく、「レールを歩いてこなかった」著者だからこそ得られた、独自にして自立した人生を手です。
著者の生き方に照らせば、不登校は決して悲観するものではありません。親が子どもの「違和感」を肯定し、「慌てずに見守る」ことさえできれば、子どもはその時間を使って自らの内発的動機に従い、人生を切り拓く力を育むことができます。
一方、どうしても見守る保護者は不安になりがちです。また他者からの「才能」などの指摘に心が折れてしまうこともあるでしょう。当サイトでは、子どもの孤独な挑戦を中長期的に支援できるよう、この本から学んだ具体的な方法論の土台の上に「自己否定感からの脱却」「違和感を力に変える哲学」「生きる目的の探索」といった、より本質的な支援を今後も提供していきます。
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